「滝川クリステルさんと考える動物愛護」チャリティイベント
オリンピック開催決定の興奮冷めやらぬ9月15日。
六本木ヒルズのハリウッドビューティプラザには、意識の高い素敵な女性たちが集まりました。
「滝川クリステルさんと考える動物愛護」チャリティイベント。
このイベントは、滝川クリステルさんはゲストではなく、発案者。
日頃から関心のある動物愛護について、スライドを見ながらの小誌編集長山本由樹とのトークショーで、大切なことを教えてくれました。
オリンピック招致プレゼンの秘話もちょっぴり聞きながら。
■アリスが運んでくれた想像以上の幸せ
私は2年前にラブラドール・レトリーバーのアリスを家族に迎えました。
アリスは福島県浪江町に残されていたのですが、震災の1か月後くらいにレスキューが通りがかり、たまたま吠えたところを気づいてもらえて保護されたんです。
当初はやせ細って怯えていたのですが、今ではすっかり元気になって、やんちゃになって、私にはもう欠かせない存在です。
元々、シェルター(※)の犬を引き取りたいと思っていて、かつ、大型犬は場所も取るので施設の方も大変なので、できれば大型犬を引き取りたいと思っていたところ、震災が起きて気持ちが決まりました。
これ以上不幸になる動物たちを増やしたくなかったのです。
最初の2,3か月は飼い主に権利があるので「預かり」となるのですが、アリスの場合は飼い主さんは見つかったのですが、避難所で大型犬を飼うことができないということもあり、私が責任を持って、里親になることになりました。
アリスという名前も元々の名前、そのままです。
飼い主さんの想いも背負っています。
アリスが来てから私のライフスタイルは随分変わり、多くの人とのコミュニケーションが増え、見えてきたこともたくさんあり、想像以上の幸せをもたらしてくれました。
そして、アリスがいることで、1日たりとも福島のことを忘れないことも、意味があったと思います。
日本は年間約17万5000頭の動物が殺処分されています。
数年前までは30万頭だったことを考えると、多少改善されてきているのかもしれませんが、先進国でこの数字は異常です。
震災で残された動物も相当数に上ります。
ただ、実際、取材をしていく中で、希望も見つけました。
数年前から、熊本にある、熊本動物愛護センター(保健所)は殺処分をするのではなく、真逆の「殺処分ゼロ」を目指し始めたのです。
ここは『殺処分ゼロの理由−熊本方式と呼ばれて』の著者であり元獣医、熊本市動物愛護推進協議会の会長を務められている松田光太郎さんが所長に就いてから変わり始めたのです。
殺処分ゼロを実現するのは、魔法ではありません。
里親が見つかるまで面倒を見続ける、どんな状態の子たちもです。
その苦労も費用も果てしないのですが、動物たちは庭で日向ぼっこをして、皆で飼い主が現れるのを待っていました。
狭いケージに詰め込まれて最終処分を待つ動物たちとは全然違います。
簡単ではありませんが、人間の意識でそれができるんだという、素晴らしい例を見せていただくことができました。
■「パピーミル」という現実
皆さんは、商品を買う時にそれがどのように作られ、どう処分されるかをご存知でしょうか。
トレーサビリティとは、物品の生産段階から廃棄段階まで追跡が可能な流通の形でをいいますが、動物の世界には、トレーサビリティの考えがまだ浸透していません。
「パピーミル」という、販売目的のために動物に無理に繁殖をさせる個人や業者があります。
日本はブリーダーになるのに、免許制ではなく、登録制なので、誰でも簡単に繁殖させることができてしまうのです。
本来ならば、正しいブリーダーがきちんと育て、ブリーダーから直接貰い受けるというのが理想の形ですが、昨今はパピーミルが溢れ、悪しき環境で動物たちを繁殖させて、ペットショップやインターネットで販売しているという現状です。
ペットショップに小さな子犬や子猫が売られているのを見たことがあると思いますが、海外では産後8週以内の赤ちゃんの販売は禁止されています。
生まれてすぐに親から引き離され、精神的にも不安になり、病気の状態もわからない。
そこにトレーサビリティはありません。
命は商品ではないし、ましてや展示されるものでもない。
買う側は命の最後まで看取る覚悟がないとダメなのです。
もうひとつ、ボルネオでの印象的なお話を。
パーム油採取のために原生林を切り倒し、パームヤシのプランテーションが作られています。
本来は動物の棲家だった原生林が伐採され、食べ物を失った動物たちは人間社会に現れ、銃で撃たれて命を落としているのです。
しかもパーム油の1/4は日本が輸入しています。
ペットの殺処分とはまた違う話ですが、これも動物虐待のひとつ。
ボルネオの動物愛護団体は、絶滅危惧種になったオランウータンの種の保存のために、断絶された森と森に橋を架けました。
オランウータンのための橋。
現地のスタッフから「オランウータンが橋を渡りました!」という報告とともに写真が届いたときは、感動して泣いてしまったことも。
私もボルネオに行き、オランウータンに会ってきましたが、思い出深いシーンがあります。
彼は、手に持っていた大好物のお花を、私におすそ分けしてくれたんです。
自分が食べるよりも先に。動物の純粋な思いやりの心ですよね。
人間は彼らから色んなものを奪っているというのに。
我々の生活が、どんな犠牲の上に成り立っているのか、疑問を持つことからでも、社会貢献は始められるのです。
■ファッションと動物愛護
動物愛護に関して、熱心に取り組んでいるモデルでハリウッド女優のマギー・Qさんがいます。
テレビシリーズの「NIKITA」にも出ていたので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
彼女は毛皮はもちろん、革製品も使わず、ベジタリアンという徹底ぶり。
ハリウッドまで会いに行きました。
海外はシェルターが充実していますが、彼女はこの問題を全米に広げようと活動しています。
ファッション界では、ステラ・マッカートニーが動物愛護に尽力しています。
レザーは樹脂で作られ、ファーは一切使用しません。
ファッション業界ではありえないことですし、手間も費用も掛かりますが、彼女はそれが代替できることを証明して見せました。
ファッションは表現の一部です。
生き方の中に、ファッションがあるのは素敵だと思います。
エシカルな活動が求められるこの時代、こんなに洗練されたブランドが生まれているのは、イギリスという国の意識が高いのだと思います。
そして今回、チャリティのために、オリジナルのネックレスを作りました。
売上げはすべて動物愛護団体(シェルター)に寄付します。
今回は、KDP、SORAの2団体に。
KDPは神奈川県で殺処分ゼロを目指しているNPOで、SORAは福島のアニマルシェルターです。
寄付はいろいろな形があると思いますが、ネックレスを販売して動物愛護を支援するという新しい形ができたこともよかったと思います。
7年後の2020年、日本はインフラも整備されていくと思いますが、同時に心身ともに健全である国であることを提示しなければなりません。
日本が自信をもって世界をお迎えできるように、この活動がひとつのきっかけになればと思います。
※シェルター:殺処分前の動物を保護し、里親探しを行う施設
(プロフィール)
滝川クリステル Christel Takigawa
フリーアナウンサー。
WWF顧問。
環境省地球いきもの応援団。
東京2020オリンピック・パラリンピック招致での大活躍は周知のところ。
帰国後の週末は野生動物に会いにボルネオに飛ぶ予定。
Yuki Yamamoto 山本由樹
DRESS編集長。DRESS編集長。
(参加者コメント)
身近な問題のはずなのに、何も知らないことがわかりました。
海外と日本の取り組み方の違いなど、お話を伺う機会が出来てよかったです。
自分でもできることから始めたい。
―主婦(31)
パピーミルの話は衝撃でした。
今後は、買い物をするときもトレーサビリティを意識したいし、寄付すべき団体についてもインターネットなどで勉強したいと思います。
―パソコンインストラクター(42)
自分も動物愛護に興味があり、ドイツのシェルターを見学に行ったこともあります。
何から手を付けていいのか分かりませんが、今回のようなイベントで、よい選択のための情報提供がなされるのは素晴らしいと思います。
―インターネットサービス会社(37)
以前から消費者の意識に興味がありました。
ファッションの話は特に興味深かったです。
ネックレスという形のドネーションもいいですね。
好きなものを身に着けて社会貢献ができるなんて、素敵です。
―サンゴ保護プロジェクト(30)