ペット墓地にハチ公像登場 米・ニュージャージー州
2016年10月10日(月) TBS系(JNN)
忠犬ハチ公とその飼い主の像が、アメリカ・ニュージャージー州のペットの墓地に建てられ、除幕式が行われました。
「渋谷駅から1万キロ以上も離れたアメリカ・ニュージャージー州のペットの墓地です。
こちらに、飼い主と会って喜ぶハチ公の姿が登場しました」
(記者)
これは、ハチ公の死後80年にあたる去年3月、東京大学農学部のキャンパス内に建てられた像と全く同じものです。
ハチ公は、飼い主だった東大農学部の上野英三郎教授が、突然亡くなったあとも、毎日、渋谷駅前で上野教授の帰りを待ったと言われます。
渋谷のシンボル、ハチ公像とは異なり、ハチ公と飼い主が会ってお互いに喜ぶ姿を表現していますが、この像、ニュージャージー州のペットの墓地のオーナーが強く希望して、建設が実現したものです。
「こんなにいい話(ハチ公の物語)を今まで聞いたことがなかった。まさに、この墓地で大切にしている人間と動物の関係を表している」(墓地のオーナーデリック・クックさん)
「(アメリカ人はハチ公について)本当の事実を知らない方が多いんですよね。だから、これをきっかけに本当のハチ公と上野博士の話が知られるといいと思います」(像建設のプロデューサーマクドナルド由美さん)
人と動物との絆を描いたこの像が、ここを訪れるアメリカの人たちの心を癒すことになりそうです。
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20161010-00000012-jnn-int
米ペット霊園にハチ公像登場 不思議な〝縁″が紡ぐ物語
2016年10月11日(火) Japan In-depth
ハチ公像 (C)井上麻衣子
ニュージャージー州のペット霊園に、忠犬ハチ公の銅像がお目見えした。
渋谷に鎮座する、ハチ公が独り静かに座っているあの銅像ではなく、飼い主の上野教授とハチ公がお互いの目を見つめ合い再会を喜ぶ瞬間を捉えた愛犬家なら誰でも、思わず微笑んでしまうような銅像である。
実はこの銅像、ハチ公の没後80周年を記念し、去年3月に東京大学に作られた銅像の複製だという。
集まった愛犬家たちからの拍手が鳴り響く中、誇らしげに銅像を見つめていたのは、この霊園のオーナー、デレク・クックさんと、日本人の文筆家、由美・マクドナルドさん。
この二人をつないだ不思議な縁が、日本が誇る忠犬ハチ公の物語をさらに紡いでいくことになる。
アメリカでハチ公は、割と知られている。
2009年にハリウッドが日本映画「ハチ公物語」をリメイク。
リチャード・ギア主演の映画「HACHI約束の犬」を制作し話題になったからである。
去年3月、東京大学の本郷キャンパスに、上野教授とハチ公が再会するシーンを再現した銅像が設置された際には、アメリカでもいくつかの新聞社が記事を掲載。
これがニュージャージー州のペット霊園のオーナーの目にとまったのだ。
「私がこの霊園を作ったのは、人間と動物の絆を記念として残すためでした。東京大学の銅像についての記事を読んだとき、これほどまでに人間と動物の絆を象徴した銅像はないと思い、なんとかして、うちの霊園にもまったく同じものを置かせてほしいと願ったんです」
マクドナルド由美さん (C)井上麻衣子
すぐさま東京大学の銅像を作る会に連絡したクック氏だが、当初大学側からよき返事は得られなかった。
しかし大学側の教授の一人が、去年アメリカで渋谷のハチ公についての小説を上梓した日本女性がいたことを思い出す。
「Reminiscence of Shibuya(追憶の渋谷)」を書いた文筆家、由美・マクドナルドさんだ。
1930年代、渋谷駅で上野教授を待つハチ公を毎日目撃していたという母の思い出話をまとめ、 去年、英語で本を出版した由美さん。
彼女にはハチ公物語という素晴らしい実話をもっと海外に広めたいという願いがあった。
東大の教授から、このニュージャージー州の霊園はハチ公銅像建設にふさわしい場所なのか調査を依頼された由美さんは、すぐさまこの霊園に魅了される。
82年の建設以来、5000匹のペットたちが眠るこの霊園は、東京ドームの7倍の敷地面積を誇る。
南北戦争以来戦没者を慰霊してきたアーリントン国立墓地をデザインした建築家ラルフ・ダマート氏がデザインしただけあって、それは美しい公園のような霊園である。
アビー・グレン・ペットメモリアルパーク (C)井上麻衣子
「心が穏やかになる綺麗な場所に誰もがニコッとできる彫刻はぴったり 」と感じたという由美さん。
当初、東京大学は、ハチ公と上野教授の銅像は、教授が教えていたキャンパスだけに設置する、東大唯一のものにしたいと考えていたというが、由美さんは夢中になって間を取り持つため奔走。
およそ1年かけて実現させた。
銅像は東京大学とまったく同じ複製だが、設置にあたっては建築家が30年代の渋谷をイメージして台座を設計。
竹と電灯、線路に囲まれた、まさに駅前で再会を喜び合う上野教授とハチ公が目に浮かぶような風景が演出された。
除幕式には、在ニューヨーク総領事・大使、高橋礼一郎夫妻も駆けつけた。
大の愛犬家という夫妻。
大使は、 フィリピンで飼い始め、ワシントン、そして最後はインドのデリーで17歳で亡くなった愛犬について思いを馳せた。
「柴犬の入った雑種犬で、丈夫な犬でいろんなところに連れて行きました。そしていろんな土地での暮らしの中で、我々の生活に潤いを与えてくれたんです。(犬と人間の絆は)国を超えるものがありますから日米交流が促進されると思います」
集まった秋田県愛犬家 (C)井上麻衣子
国を超える犬と人間の絆。
それは除幕式に集まった秋田犬愛好家たちのスピーチからも感じられた。
銅像を見ながら涙ぐんでいたのが、秋田犬を専門としたレスキュー団体、Big East Akita Rescueのジョアン・ディモン代表。
去年は95匹をレスキューし新しい飼い主を見つけたという、秋田犬の守り神のような女性だ。
アメリカで秋田犬のレスキュー団体があること自体驚きだと思ったのだが、現在全米に6つも専門団体があるという。
きっかけは、あのハリウッド映画だった。
「あの映画で、秋田犬は新種として人気に火がついて、飼い始める人が続出したの。賢くて、忠実で清潔な犬だけれど、体も大きいし、正しい飼い方ができず手放す人が増えてしまった。飼い主以外の人にはなかなかなつかないから普通のシェルターでは、飼育が難しい。そんな秋田犬がたくさん集まってきて毎日本当に忙しいんだけれど、きょうは本当に感無量です」
会場には彼女がレスキューして、新しい飼い主を見つけた秋田犬たちが多数集まっていた。
秋田犬独特のふさふさしたしっぽや、忠実で優しい目が大好きで、今とても幸せだという飼い主たち。
中には、自分の飼っている秋田犬を警察に同行する介護犬として、活躍させているという飼い主もいた。
秋田犬スパルタカスと飼い主のブラッド・コールさん。
幼い子どもたちを含む26人の命が奪われたサンディーフック銃乱射事件やボストン爆破テロ事件では、事件直後、人と話すことができないほど精神的ショックを受けた被害者や関係者たちの元にスパルタカスとともに通った。
彼らは、スパルタカスが傍にいるだけで、いやされたと語ったという。
「秋田犬というのは、その場にいるだけで、人の心を慰めることができる希有な存在です」
様々な犬種があふれるアメリカにおいて、特別な地位を得ている秋田犬。
そこには、ハチ公の物語も大きく影響しているだろう。
今後も世界にハチ公について伝えていきたいという由美さん。
小説にも書いたという、あるエピソードを話してくれた。
「ヘレン・ケラーもハチ公のファンで、渋谷の銅像を訪ねて触って、自分でも飼いたいと言ったそうなんです。そして秋田犬をプレゼントされてアメリカに連れて帰って飼っていたことが分かったんですけど、それがたまたま今私が住んでいるコネチカット州のウェストポートという町だったんです。不思議な縁でしょう。今イベントの話も進んでいるんですよ」
“かみかぜ”、“けんざん”と名付けられた秋田犬2匹は、他のどの犬よりもヘレン・ケラーの気持ちをわかってくれる犬だったという。
多くのアメリカ人たちの心を虜にした「ハチ公」。
没後80年を過ぎた今、さらにその存在が大きくなっているのは間違いない。