熊本地震半年 倒壊した自宅に愛犬残し・・・
続く避難「元の場所に戻りたい」
2016年10月14日(金) 産経新聞
全壊した自宅に残していた愛犬をなでる尾方勝子さん(右)=熊本県益城町寺迫(写真:産経新聞)
前震の発生から14日で半年を迎えた熊本地震。
16日の本震と合わせ、2度にわたり最大震度7を記録した揺れで甚大な被害を受けた熊本県益城町(ましきまち)や同県南阿蘇村などでは、倒壊した家屋が今も無残な姿をさらし、多くの住民が避難生活を余儀なくされている。
地震の後も、阿蘇山の噴火などの自然災害に見舞われ、復興に向けた試練が続く被災地を歩いた。
(原川真太郎)
◆「まず解体撤去」
「この子を散歩させるのが、毎日の日課なんです」
益城町中心部の寺迫地区。尾方勝(かつ)子さん(72)は、本震で全壊した自宅に残してきた雑種の愛犬・チャコ(14歳)のリードを握り顔をほころばせた。
現在は夫の総一さん(75)とともに、熊本市内にアパートを借りて生活している。
子供は3人いるが、それぞれ熊本県内や福岡県で家族と暮らしており、「迷惑はかけられない」と、同居は考えていないという。
アパートで犬は飼えず、毎日朝晩、散歩と餌やりに自宅を訪れるのが唯一の息抜き。
「できれば元の場所に家を建て直したいけど、地震の影響で近くを走る国道のルートを変更するという話もある。正直、どうなるか分からないね」。
総一さんはため息をついた。
益城町は、町内の約1万戸のうち半数以上が全半壊した。
崩れた建物が当時のままの姿で無数に残り、傾いた電柱や崩れた石垣なども目につく。
一部で倒壊家屋の解体作業は始まっているが、尾方さん夫妻のように、生活再建のめどが立たない住民も多い。
同町議会の稲田忠則議長(67)は、「アンケートなどで8割以上の町民が『益城に残りたい』と言ってくれている。まずは被災家屋の解体撤去を一刻も早く進めたい。これからが本番だ」と打ち明けた。
◆友達と離れて・・・
山あいの集落に、付近の道路を行き来するトラックのエンジン音と、道路工事の音だけが響いていた。
土砂崩れや家屋の倒壊で多数の死者を出した南阿蘇村では今も山間部で通行止めの箇所が残る。
中でも立野地区は、国道の阿蘇大橋が崩落した影響で村中心部と寸断、今も断水が続く。
加えて6月には、大雨による土砂崩れが複数発生。
村は避難勧告を継続し、住んでいた約340世帯のほとんどが、村外での生活を余儀なくされている。
復旧のめどは立っていない。
自宅前の畑の草刈りで戻ってきていた女性(81)は、「地震で家は潰れずに済んだけど、近所の友達とも離ればなれになった。生まれてからずっと、ここで生きてきた。なんでこんなことになってしまったのか」と涙ぐんだ。
◆火山灰の片付け
車が通るたびに、白い粉塵(ふんじん)が舞う。
今月8日未明に爆発的な噴火が起きた阿蘇山の北側にある同県阿蘇市では、いまだに白い火山灰が街中に降り積もっていた。
小学生はマスク姿で登下校。
住民も、ほうきを手に片付けに追われていた。
コンビニエンスストアの駐車場で灰を片付けていた店員の井上愛さん(32)によると、噴火翌日の朝、駐車場には大きな噴石がいくつも転がっていたという。
「秋の観光シーズンなのに、地震の次は噴火。次は何が来るのかと不安になります」とこぼした。
一方、地震で天守の瓦が破損し多くの石垣が崩落、櫓(やぐら)も被害を受けた熊本城(熊本市中央区)は、大半の立ち入りは禁止ながら二の丸広場などへは入場でき、観光ボランティアガイドも活動を再開。
観光客や修学旅行の小中学生が数多く訪れていた。
大阪市福島区の主婦、相良智景(ちかげ)さん(51)は「予想以上に崩れていて驚いた。阪神大震災も知っているし、人ごとではない。早く復興してほしい」と、傷ついた「熊本のシンボル」に見入っていた。
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