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犬猫引き取りビジネスが横行

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犬猫引き取りビジネスが横行 殺処分減少、法改正の裏で

2016年10月07日(金) 中日新聞

改正動物愛護法が2013年9月に施行され、自治体がペット店や繁殖業者で不要になった犬や猫の引き取りを拒否できるようになり殺処分は減った。
その一方で、行き場を失った命を引き取るビジネスが横行している。
悪質な引き取り業者が劣悪な環境で飼育したり、遺棄したりする事件が絶えない。
(立石智保)


餓死寸前の犬などが保護された三重県亀山市の犬舎の内部=アニマルサポートわんわんわん提供

環境省が3日、公表した2015年度に全国の自治体が引き取った犬、猫の数は13万6724匹で、同省が統計を取り始めた04年度以降、11年連続の減少となった。



虐待を受けた犬や猫の保護に取り組む日本動物福祉協会(東京)の獣医師調査員、町屋奈(ない)さんは「殺処分がゼロになっても、動物に対する福祉がゼロでは意味がない」と指摘する。
同協会は5月、犬や猫に十分な餌を与えず病気やけがを放置したとして、栃木県の引き取り業者を動物愛護法違反の疑いで県警に告発した。
協会の聞き取りに業者は「13年の法改正後、引き取りの仕事が忙しくなった」と話したという。
協会によると、14年に犬80匹を栃木県の山中などに遺棄したとして罰金の略式命令を受けた元ペット店員らは引き取り業にも関与。
町屋さんは「法改正を機に引き取りのビジネスが活発化した」と指摘する。
犬や猫は、5歳を過ぎると繁殖用としては価値が低くなるほか、飼い主は子犬、子猫を好むため、売れ残ると経営の負担になる。
名古屋市動物愛護センター(千種区)は年に10匹ほど、業者の遺棄が疑われる飼い主不明の犬、猫を保護している。
登録業者の月ごとの飼育数は毎年書面で報告を受ける。
ただ譲渡先などは記載項目に含まれておらず「数字のつじつまがあっていれば虚偽の報告を見抜くのは難しい」(担当者)のが実情だ。
協会の町屋さんは「大量生産、大量消費が大量廃棄を生み出している。殺処分だけでなく、いびつな流通構造の問題に目を向けて」と訴える。

◆飼育環境は劣悪
三重県亀山市の郊外。
生い茂った雑草や無造作に積み上げられた空の段ボール箱に埋もれるように、平屋の旧犬舎が立っている。
愛知、三重の両県のボランティアでつくる動物愛護団体「アニマルサポートわんわんわん」の女性(57)=津市=は「生きものを飼う環境ではない」と憤る。
2015年10月下旬、この犬舎を立ち入り調査した鈴鹿保健所に協力し、同団体はトイプードルやアメリカンショートヘアなど計31匹を保護した。
飼育ケージが三段に積み上げられ、上の犬や猫のふん尿が下のケージに垂れ流しに。保護された動物はあばら骨が浮き出るほど痩せこけ、餓死寸前だった。
31匹は獣医師が治療し、希望する人に引き取ってもらったが、別に9匹の死骸が見つかった。


やせ細った状態で保護されたトイプードル


三重県亀山市で保護されたスコティッシュフォールド

犬舎を運営していた60代の男性が営んでいたのは引き取りビジネスだ。
同団体によると、10年以上前から繁殖所を営んでいたが14年11月にいったん閉鎖。
その後、関西のペット店などで売れ残った犬や猫を一匹5千~1万円ほどで引き取るようになったという。
亀山署は、動物愛護法違反の疑いで男性を書類送検、津簡裁は4月に罰金10万円の略式命令を出した。
保健所によると、男性は販売の動物取扱事業者として登録する一方、引き取りに必要な譲受飼養業の登録をしていなかった。
昨年11月、保健所に廃業届を出した男性は先月下旬、「(引き取りは)もうやめた」と述べ、本紙の取材に応じなかった。
(立石智保)

<動物愛護法>
動物の虐待の防止や適切な管理を目的に1973(昭和48)年に議員立法で制定された。
2013年9月施行の改正で、都道府県などが業者から犬や猫の引き取りを求められた場合、拒否できると明文化されたほか、ペット販売時の対面説明や最期まで飼う義務などが盛り込まれた。


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