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ゴミ山の横にいたゴールデン・レトリーバー

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連載/ペットゥモロー通信
保護犬と暮らす
ゴミ山の横にいたゴールデン・レトリーバー

2016.09.24 @DIME



人であっても犬であっても恵まれた環境で生活できるものもいれば、そうでないものもいる。
同じ命であるはずなのに、どうしてそんな“格差”が生まれてしまうのだろう。

3年半前のこと、Dさんは時々車である場所を通る度に、気になるものを目にしていた。
料理店の敷地内一角に積み上げられたゴミの山の横に犬がいる。
フェンスの角に屋根代わりの板を渡してあるだけで犬小屋らしきものもない。
その犬の横にはクーラーの室外機があり、「真夏にはそうとう暑いだろうに・・・熱中症になりはしないか・・・」と心配で、Dさんは車を停めて、「お前、大丈夫?」と犬に話しかけることもあった。
そんなDさんに、犬は目を三角にし、怖そうな形相で吠えついてくる。
それでも営業時間だけ犬を連れてきて、仕事が済めば自宅に連れて帰っているのだろうとDさんは思っていた。
ところが、それからしばらくして、雨が降りしきる夜間に同じ場所を通りかかったDさんは、真っ暗な中、びしょ濡れになってただ立ち尽くしている犬の姿を見つけた。
犬はずっとここに置かれていたのだ。
板を渡したくらいでは、雨を凌ぐこともできない。
地面もびしょ濡れで、寝る場所さえなかったのだろう。
その様子にたまらず、Dさんは帰宅した後、ご主人と息子さんに相談した。
Dさんのご家族は、大の動物好き一家である。
話を知った息子さんは、早速翌日そのお店まで行き、犬のことを尋ねた。
それによると、子犬の頃はオーナーが室内で可愛がっていたということだが、その後に結婚した奥さんは動物が苦手で、結局外に出されることになったと。
食器代わりの洗面器にフードは入れられていたものの、散歩はたまにだったらしい。
Dさんは保護活動をしている知人に連絡をとって改めて相談。
それから10日ほどかけて、犬を保護できないものかと努力を始めた。
犬の様子を見かねて、食事の残りを与える近所の人もいたという。
散歩中の犬が通りかかるとものすごく吠えるそうで、なかなか散歩には行かせてもらえないストレスを吠えることで発散していたのか。
オーナーがお店に顔を出す日は限られていることから、そのタイミングに合わせてDさんは自分の電話番号を教えた。
すると、すぐにオーナーから電話があった。
「誰かもらってくれる人がいませんかね?」
どうやら犬をもてあましていたようだ。
Dさんはすぐに犬を引き取りに行き、作成した誓約書にサインをしてもらい、自宅へと連れ帰った。
オーナーに狂犬病予防注射や各種感染症のワクチンについて尋ねると、「それって飲み薬ですか?」という返事だったとか。
病気の予防もまともにはしてもらえてなかったということだろう。
「車に乗せる時、何の躊躇もせず、迷わず乗り込んだんですよ」というDさんの話を聞くと、その犬にとってこれまでの飼い主には未練がないということなのかと考えたくもなる。


最初の頃はオモチャもどうしていいかわからい様子だった/©DM

「おそらくブラッシングもシャンプーもしてもらったことがなかったのだろうと思うんです。シャンプーしようにも全身の毛がフェルト状になっていてブラシも入らなくて。仕方なく3人がかりでハサミを使い、毛をカットしたんですが、主人が間違って皮膚まで切ってしまって・・・。血がたらたら出ているのに、それでもニコニコ笑っていたんですよ、このコ」
自分がかまってもらえているということが嬉しかったのか、そのまま傷の処置のために向かった動物病院でも「とてもいいコだ」と言われたそうだ。
「ドッグランに連れて行ってもうまく走れなかったんです。ウサギみたいにぴょんぴょん妙な走り方をして。2年半の間、狭い場所でずっと独りぼっちでしたから、たぶん、ちゃんと走ったことがなかったのかもしれませんね。それに、オモチャを与えても遊んだことがなかったのか、どうしたらいいのかわからないようでした」
実は、当時Dさんのお宅にはすでに犬が5頭(男のコ4頭、女のコ1頭)いたため、当初は保護した犬に里親を見つけるつもりでいた。
しかし、去勢手術をしていない成犬のオス犬ながら、先住犬たちに対して粗暴に振る舞うでもなく、「ボクは新米です」というような態度で、一歩引いた位置から初めての犬同士のつきあいをしようとしている。
先住犬たちもすんなりと受け入れ、その様子を見るにつけ、だんだんに情が湧いたDさんは自分のコとして引き取ることを決めたのだった。
その犬の生活はがらりと変わった。
仲間もでき、自分専用の温かいベッドがあり、室内犬となった彼はゆっくりテラスで日光浴を楽しむこともできる。
毎日散歩にも行くことができ、時々犬専用のプールにも連れて行ってもらえる。
散歩友達からは、「走るのが上手になったねぇ」と言ってもらえるようにもなった。
何より、毎日撫でてくれる家族がいる。


ボールをくわえたままスイミング。ゴールデンらしい楽しみを知ることもできたゴン/©DM

ある日の散歩中、偶然、前の飼い主と遭遇したそうだ。
名前を呼び、「オスワリ」と言う前の飼い主に対して、当の犬はそれを完全無視。Dさんのご主人が続いて「オスワリ」と言うと、すぐさま綺麗に座ってみせたという。
「この時に、やっとうちのコになったと実感しました」


「子守だってできるようになったよ」/©DM

Dさんは続けてこうもおっしゃる。
「いつだったか、出先で幼犬を連れたご夫婦が、ドッグトレーナーと思われる人と散歩のトレーニングをしているのを見かけたことがあります。そのコはご夫婦を交互に見上げ、しっぽをふりふりしながら嬉しそうに歩いていました。ほんとうならこのコにもそういう時期があったはずのに・・・と思うと、急いで家に帰ってぎゅっと抱きしめてあげたくなったものです」
ゴールデン・レトリーバー、名前はゴン。
今では幸せな第二の犬生を送っている。
奇しくも、取材をさせていただいた日は、ゴンの6歳の誕生日だった。
ハッピー・バースデー、ゴン!


「ボク、今が一番幸せ!」とでも言っていそうなゴンの笑顔/©DM

文/犬塚 凛(ペットゥモロー編集部


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