勘違いした人が拡散し混乱。
ペット“同行避難”は避難所に一緒に入れる訳ではない
2016年4月25日(月) Spotlight
筆者もそうですが、環境庁から「同行避難推奨」というガイドラインが出たと聞いた時、ホッと胸をなでおろしたという人は多いのではないでしょうか。
動物が苦手な方やアレルギーのある方に配慮しなければいけないけれど、ペットは家族同然の存在。
ペットだけを置いて避難することなんて考えられないという飼い主さんも多くいることでしょう。
しかし、この同行避難というのは、あくまでも一緒に避難するというもの。
避難所内に同伴できるというものではないのです。
今回、この2つを混同している方が多くいた為、避難所などでトラブルがおきるという事態が少なくありませんでした。
同行避難と同伴避難を混同しているかも?
環境省が「ペット同行避難」を推奨しているのだから、災害時にはきっと避難所でもペットと一緒に受け入れてくれる、そう思っている方も多いのではないでしょうか。
しかし残念ながら、それは間違った認識なのです。
「ペット同行避難」では、「ペット同伴可」の避難所以外では、同行したペットたちは、基本人間と同じ避難スペース(居住スペース)に入る事はできません。
ペットは基本、屋外もしくは人間の居住スペースとは別の場所で留置され、人間の避難スペースとは異なる場所での待機となります。
この方針は、飼い主としては受け入れがたいと感じる人も多いとは思いますが、このガイドラインの内容は、これが作成された理由に関係します。
東日本大震災で多くのペットが取り残され、放浪したり繁殖したりして大きな問題になったという経緯があり、その様な事態を避ける為に作られたものなのです。
個人も自治体も理解していない場合が多い
しかし「同行避難」と「同伴避難」、多くの人が混同しているのではないでしょうか。
今回も、環境庁のこのツイートを読んで紛らわしいと感じる人が多かった様です。
「同行避難を受け入れてくれる避難所」「避難所での室内飼育」などの記述から、「同伴避難」と「同行避難」を混同してしまい、現場でトラブルになっている場合も多いと聞きます。
『同行避難ができると聞いてきたのに、一緒に避難所の中に入れなかった』などの声も多く聞きました。
勘違いしている人がSNSなどで拡散、更に混乱も
SNSなどで『ペットがいるから避難所に入れなかった』という記述を見て、勘違いされてしまう方も多い様です。
しかし、避難所がペットを連れてきた人を追い返しているわけではなく「同伴避難」を希望した方が「同行避難」と聞き、とても受け入れがたいとして自分も避難所に入る事を諦めているという場合がほとんどだと思われます。
そして被災していない地域の方々が、「何とかしてあげたい」という思いからペット受け入れ施設をSNSなどで拡散し、多くのペット連れの家族がその情報に助けられました。
しかしその中にも正しい情報だけでなく、「同伴避難」と「同行避難」を混同していたり紛らわしい書き方になっている情報もあり、それが現場で混乱してしまう原因となってしまうという事も起きています。
これは、ペットに関する情報だけでなく、SNSなどで拡散される多くの情報においても同じです。
気持ちが急いていると思わず「急いで知らせてあげなくては!」と思ってしまいがちですが、拡散する前に事実関係を確認しないと、かえって現場を混乱させる事になってしまいます。
避難所の中で一緒に過ごせるのは「同伴避難」
同行避難とは、災害発生時に飼い主が飼育しているペットを同行し、避難所まで安全に避難することです。避難所において人とペットが同一の空間で居住できることを意味するものではありません。
それぞれの避難所のルールに従ってください。
環境庁の「同行避難」推奨を知っている人は多くいると思いますが、自分の住んで居る自治体のルールを知っている人は、ペットを飼っている人でどの位いるのでしょうか。
正直、筆者は今回の事があるまで知りませんでした。
避難所におけるペット同行避難への対応について
現在開設している避難所のうち、ホルトホール大分とコンパルホールを除く、11地区公民館(大分西部公民館、南大分公民館、大分南部公民館、大分東部公民館、明治明野公民館、鶴崎公民館、稙田公民館、大在公民館、坂ノ市公民館、佐賀関公民館、野津原公民館)および大南支所の屋外に、犬用ケージと猫用ケージを各1台ずつ配置します。ケージが足りない場合は、避難所の担当職員から連絡を受け、大分市保健所から補充します。なお、ケージやクレートなどをお持ちの人は、避難所(屋外)でご使用いただけます。ペットを同行する人は、11地区公民館または大南支所への避難をお願いします。
出典 http://www.city.oita.oita.jp
熊本市は26年6月に作成した「避難場所開設・避難所運営マニュアル」で「居住スペース部分」にペットは持ち込めないとハッキリ書かれています。
避難所の居住スペース部分には、原則としてペットの持ち込みは禁止します。
ペットは、避難場所敷地内の屋外部分に指定スペースを設け、リードで繋いだり、柵等で囲って飼育します。また、校庭等での放し飼いを禁止します。
ペットの飼育及び飼育場所の清掃は、飼い主が全責任を負って管理します。
また、散歩時の排泄物の管理も同様とします。
大型動物・危険動物・蛇などの爬虫類の同伴を原則禁止します。
ただし、「同行避難および同伴避難を認めるかどうかは、各避難所の判断による」としている場合も多く、避難所によっては同伴避難ができる場所もあるようです。
この事で現場にいない人たちが勘違いして情報を受け取り、拡散してしまったという部分もあるのかもしれません。
筆者も犬と暮らしている為、飼い主にとってペットは家族という思いは多くの飼い主さんと同じです。
災害時だからこそ、家族であるペットと離れて過ごす事は考えられませんし、離れて過ごすつもりもありません。
しかし動物が苦手な人も多くいます。
その方達にとっては、飼い主には気にならない動物の鳴き声や、匂い、排泄、飛散する体毛などは大きなストレスになるのも事実です。
また、アレルギーがある人が、薬を持ち出す事もできない着のみ着のままで避難所に辿り着いている場合もあります。
命にかかわる方もいるでしょう。
離れて暮らす事で、体調を崩してしまうペットや飼い主さんがいるのと同じ様に、動物が同じ空間にいる事で体調を崩してしまう方もいるという事を、私たち飼い主は忘れてはいけないと思います。
ペットは家族、だからこそ事前の準備を!
飼い主である私たちに何ができるのか。現在被災していない地域の方で日常生活が変わりなくできている人は、自分が住んでいる地域の役所で、自治体と自分が利用する指定避難所が「同伴避難」OKなのかを確認しておく事をおすすめします。
地域によっては「同行避難」さえも認めていない場合や、ペットに関する災害対策を何ひとつとっていない場合もある為、事前の確認はとても重要だと思います。
そして確認した上で、災害にあった場合に自分たちはどの様にするのかを、今のうちにシュミレーションしておく事が大切です。
もし「同行避難」のみ受け入れている避難所だとしても、学校の様な施設の場合、ペット同伴可の部屋と、ペットのいない方の部屋を分けるなどの住み分けで可能な場合もあります。
しかし災害が起きてからでは、優先すべき他の事が多くあり、対応してもらえるとしてもずっと後になってしまう可能性があります。
もし、同伴避難したいというのであれば、災害の起こる前に働きかけるのが一番の近道なのです。
また、同伴可の避難所であったとしても、人が溢れ入れない人がいる様な状況の場合は、ペットよりも人が優先され、断られる事もあるでしょう。
もしかすると、避難生活の中で問題が起こり、ルールが変更になる可能性もあります。
ペットは家族だと思っている飼い主の立場から考えると難しい問題ですが、多くの人が避難する非常事態の中では、様々な可能性が考えられます。
自分のペットを守る為には、飼い主が事前にできるだけ様々な状況を想定して、準備しておく事が大切です。
動物好きな人も、そうでない人も共存できる様に
その様な状況になった時にお互いが安心して過ごす事ができる為には、よく言われるクレートトレーニングやマイクロチップ、迷子札の装着などの他にも、犬を飼っている人ならば、狂犬病の予防接種などを普段からしっかりと行う事、自分の住んで居る地域への畜犬登録を怠らない事などが重要です。
また、動物が苦手な人達が更に動物嫌いにならない様に、私たちの普段の動物との暮らしでできる事を再確認してみましょう。
犬の散歩などで、糞を放置していたり、リードを外して好きに歩かせたりしていませんか?
無責任な形で、野良猫や野鳥への餌やりをしていませんか?
何か起きた時にだけ共存を訴えるのではなく、日ごろから共存してゆける様な努力をする事も、日常の中で出来る災害対策の大切な1つだと思います。