ペットを愛せないのに、飼う人がいるのはなぜか
“愛し続ける覚悟”が必要
2023年3月18日(土)
家族であるはずのペットを「飼えなくなったから」と言って動物保護施設に預ける人は少なからずいます。
犬、猫に限らず、小動物や鳥などの施設もあり、多くの動物たちが捨てられ、保護されています。
その後、里子が見つかるケースもあれば、殺処分されてしまうことも……。
なぜ、愛せないのに、動物を飼ってしまう人がいるのでしょうか。
◆飼う前のシミュレーション不足
私たちはペットを飼うときには、「この子を一生、守り続けるぞ」と誓う必要があります。
ただし、単に誓ったところで、守れない人も少なからずいます。
なぜなら、「飼うときには想像もしなかったような出来事」が起こることもあるからです。
動物を家族として迎え入れる前に、きちんとその動物について勉強し、「飼ったらどうなるのか」、また「5年後、10年後、それ以降も飼い続けられるのか」まできちんと考える必要があります。
そのシミュレーションが甘いと、ペットに悲しい思いをさせてしまうのです。
では、具体的に、どんな原因で手放してしまうことがあるのでしょうか。
mi-mollet(ミモレ)
◆世話がかかることが理解できていなかったから
ペットはかわいいだけではありません。
ご飯を与え、排せつの処理をし、犬であれば、朝晩の散歩も必要となることが多いです。
また、鳴き声がうるさい子もいれば、トイレを覚えないで家の中でしてしまう子もいるでしょう。
さらに、子供の頃はかわいくても、大人になれば、見た目も性格も変わってきます。
ロボットではないので、動物には動物の感情や欲望があります。
それは、飼い主がコントロールできない部分もあるでしょう。
たとえ思い通りにいかない存在でも、「家族として守り続ける覚悟」が必要となってくるのです。
◆お金がかかることを理解していなかったから
ペットを飼うのは、想像以上にお金がかかります。
アニコム「家庭どうぶつ白書」によると、2021年の「1年間にかけた費用(犬、猫)」の平均は、犬345,572円、猫169,247円とのこと。
生涯飼育費用は、犬、猫共に250万円以上はかかると言われています。
私は以前、うさぎを11年ほど飼っていましたが、そのうさぎが2回も足を骨折し、手術&入院、通院をしたので、その治療だけでも1回につき30万円以上の費用がかかりました。
生涯飼育費用は少なくとも150万円以上です。
他の動物であっても、結構費用がかかることが多いので、飼う前に調べておいたほうがいいし、ペットのためにそれなりに貯金はしておいたほうがいいでしょう。
特に最近は、ペットが長生きして、飼い主が介護するケースも増えています。
認知症治療が必要なケースもあり、飼い主でも手に負えないような状況になってしまうことも。
さらに、ペットが歳をとればとるほど、医療費もかかってきます。
この現実を理解した上で、自分は飼えるのか、飼い続ける覚悟はあるのかは考えたほうがいいです。
次に紹介するのも、「ペットを飼う前に見落としがちなこと」です。
◆「ペットと共に生きる」のに最適な環境を分かっていなかったから
共同住宅に住んでいる場合は、「ペット可」なのかは確認しておくことは大事です。
なかには、住んでいる家がペット可だと思って保護犬を家族に迎え入れたのに、あとからペット不可であることが発覚し、ペットのために急いで引っ越した、なんてケースも。
また、動物によって快適な室温が違います。
私は今、セキセイインコを飼っているのですが、セキセイインコは特に寒いのが苦手。
寒い日でも室温が20~30度である必要があるので、私が外出しているときでもエアコンはつけっぱなしにしています(※もちろんその分、電気代はかかります)。
さらに、「旅行好きの人」「泊りの出張が多い人」は注意が必要です。
ペットホテルに預ける場合は、毎回、「自分の旅費+ペットホテル代」がかかるということです。
しかも、ペットホテルに預ければ安心か、というとそういうわけでもなく、ペットは「自分が捨てられた」と勘違いして、食事拒否や下痢をしたりして、大きなストレスを感じてしまうこともあるのだとか。
大事な家族がそんな状態では、気軽に旅行を楽しもうという気分にはなれなくなるでしょう。
◆「自分の未来」を想像していなかったから
「ペットの未来」は考えていても、「自分の未来」はシミュレーションしていないケースが少なくありません。
もし今後、「新たにパートナーができたり、結婚、出産、子育てをしたりすることになっても飼い続けられるのか」は考えておいたほうがいいです。
ペットは、ある意味、“連れ子”のような存在です。
パートナーに「動物と暮らすこと」の理解をしてもらわないといけないですし、もし相手に動物アレルギーがあった場合は一緒に住めないでしょう。
その他にも、たとえば、自分が鳥を飼っていて、相手が猫を飼っていたら、愛鳥が危険な目にあう可能性が高いです。
もちろん、はじめから「別居婚にする」というのもアリですが、一時期はそれでよくても、若い夫婦の場合は、その後、子供が生まれても別居婚のままでいくのか、さらに、子供が動物アレルギーだった場合はどうするのか、という問題も出てきます。
それだけでなく、ペットのほうに「メンタルの支障」が出てくることもあります。
たとえば、我が家のように、インコが私を“つがい”だと思っている場合は、ハートブレイク状態になってしまうでしょう。
あんな20センチくらいの小さなインコでも、ちゃんとハートがあるのです。
鳥はストレスをためると、自らの羽をむしり取ったり、噛んだりしてしまうことがあり、それが致命傷になってしまうことも。
どんなに小さな動物であっても、「分からないだろう」なんて甘く考えないで、相手のメンタルを考えてあげることは大切なことなのです。
◆「自分よりも長生きする動物」を飼ってしまったから
飼い主が自分の年齢を考えずに、長生きする動物を飼ってしまうと、ペットよりも先に自分が他界してしまうこともあり得ます。
“平均寿命”を考えて大丈夫だと思っていても、“健康寿命”では微妙なこともあります。
自分が介護施設に入ることになり、飼えなくなってしまうこともあるでしょう。
動物の平均寿命は、犬は14年くらい、猫は15年くらいと言われています。
セキセイインコは7年くらいですが、同じインコでも、コンゴウインコやヨウムは50年ほど!(驚)。
しかも、平均に過ぎないので、もっと長生きすることもあるのです。
とはいえ、自分の寿命がいつまでかは誰にも分かりません。
また、病気をして入院することもあり得るでしょう。
元気なうちに、「自分がなにかあったときに、ペットの世話を頼める相手」を見つけておくことは大切なのかもしれません。
個人的には、ペットを飼ったのに、捨ててしまう人は、「ペットから愛をもらえる」と期待をしてしまっていることが多いのでは? と感じています。
単に「寂しいから」「自分の心を癒してほしいから」という理由で飼ってしまう人ほど、手放しやすくなることもあるのかもしれません。
それについては、次のページでしょうかいします。
◆ペットに対しては、「無償の愛」が大切!
「ペットから愛をもらえる」と期待をしてしまう人は、「なつかれる」ことを求めがち。
でも、個人的には、ペットは「なつかれる」ことを目的に飼うのではなく、「自分が愛情を注ぐ」ことを目的に飼ったほうがいい、と考えています。
つまり、“自分の中の愛を増やす対象”として扱うのです。
愛は、もらえば増えるのではなく、自分が愛することで、自己の内側から増えていきます。
ペットを愛して、愛して、愛情を注ぎ続けることで、自分の愛が増え、幸福感が得られるのです。
ペットに対しては、まず「無償の愛」が大切です。
芸をしなくても、言うことを聞かなくても、ただただその存在を受け止め、守り続けるのです。
今回は分かりやすくするために「ペット」という言葉を使っていますが、「ペット」というと、どこか“自分よりも下の立場の存在”のような意味合いが出てきます。
でも、実際は動物のほうが人間よりも優れているところもあり、一緒に暮らしていると人間にとって学ぶことも多いのです。
だから、本来は「ペット」というよりは、「家族」であり、「仲間」なのですよね。
生活の世話はするけど、大切なことも教えてくれる家族(仲間)だと思うことができたら、動物への態度も変わってくるでしょう。
たとえば、ペットになついてほしがる人ほど、「可愛いから」「寂しいから」といって自分本位に構いすぎる傾向が。
そうすると、嫌われるんですよね……(苦笑)。
愛情があるからこそ、ペットの気持ちを尊重し、できる範囲ではありますが、「自由にさせてあげる」ことも大切なこと。
その結果、ペットからも好かれ、なつかれる(慣れ親しまれる)可能性は高まるでしょう。
とはいえ、ペットを飼うと幸せを感じるのは、「ペットになつかれるから」だけではありません。
そんな風に「“愛する存在”が自分の傍にいること」によって幸福感を得るのです。
それは、「自分がどれだけその存在を愛しているのか」に比例すること(=自分次第)でもあるのです。
◆ペットは飼い主をよく見ている
ペットは、飼い主をよく見ています。
「自分を愛してくれる存在なのか」「自分を守ってくれる存在なのか」を。
単に“かわいいだけの都合のいい存在”として飼っていたら、ペットは安心して自分の身をゆだねられるでしょうか?
心からなつきたいと思うでしょうか?
意外とペットは飼い主の愛情を試す行動をすることもあります。
セキセイインコですら、そういった行為をしてくることがあります。
そんなときにこそ大らかな気持ちで、ただただ“相手の存在を受け止め、愛し続ける強さ”が飼い主には求められます。
その結果、ペットとの信頼関係が生まれていくのです。
ペットに限らず、人のことも愛し続けることは、容易なことではありません。
だから、関係を始めるときには、覚悟が必要となります。
「この存在をずっと愛し続けるぞ」と、腹をくくることが。 動物を飼うときには、お金や環境など、現実的な部分もきちんと考慮し、“愛する覚悟”をもって、家族として迎え入れたいものですね。
コラムニスト・ひかり
【関連記事】
ペットの愛情も性も受け止める!インコと独身女性の暮らしは、まるで同棲生活
「治療費40万円!?」最愛のペットの闘病&死で私が学んだこと
「アイシテイルヨ」と言われて癒される...インコを飼うと、ハマる人が多い理由
コラムニスト・ひかりColumnist Hikari
2009年に夕刊フジでのコラム連載をきっかけにコラムニストに。
近著に書籍『“子供おばさん”にならない、幸せな生き方』(ステップモア)、書籍『愛される人の境界線 -「子供おばさん」から「大人女子」に変わる方法』(KADOKAWA)など。
ブログ「ホンネの “子供おばさん”日記」と4コマ漫画「子供おばさん」で、アメブロ公式トップブロガーとして活動。
コラム執筆の他に、数々の有名俳優のインタビュー取材を行っている。
ホンネの “子供おばさん”日記:https://ameblo.jp/olhonne/
4コマ漫画「子供おばさん」:https://ameblo.jp/kodomoobasan/