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「介助犬、大人になっても受け入れて」26年伝え続ける"当たり前"

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「介助犬、大人になっても受け入れて」26年伝え続ける"当たり前"

2022年10月8日(土)  

「大人になっても介助犬をやさしく受け入れて」――。
兵庫県宝塚市で介助犬と暮らす車椅子の障害者、木村佳友さん(62)は26年前から学校で講演を続け、こう呼びかけてきた。
盲導犬、介助犬、聴導犬を同伴した社会参加を保障する身体障害者補助犬法が施行されて10月で20年。
いまだに同伴拒否は絶えないが、その言葉を守って、駅やレストランで介助犬を快く受け入れてくれた人たちがいる。
木村さんは教育を通じた子どもたちへの啓発を改めて訴えている。


小学生への講演で、介助犬デイジーの役割について説明する木村佳友さん(左)=大阪府寝屋川市で2020年2月、山本真也撮影

◇講演活動が広げた理解 駅員とのやりとり
3代目の介助犬デイジーとパートナーを組む木村さんは、1996年に介助犬となった初代のシンシア(1993~2006年)の時から、講演活動を続けてきた。
新型コロナウイルス禍でもオンラインの講演依頼があり、イベントの実演や学会発表などを含めると9月末時点で約700回、参加者は延べ11万人を超える。
落とした物を拾ってもらうなど介助の様子を見せ、「皆さんが大人になって、働いている場で補助犬に出会ったらやさしく受け入れてください」と毎回呼びかけてきた。
妻の美智子さん(60)は約15年前、その言葉通りの体験をした。
JR宝塚駅の窓口で新幹線の車椅子席の申し込みをした際、若い男性駅員が対応。
02年10月に施行された補助犬法で、鉄道は飲食店などとともに補助犬の受け入れが義務化された。
だが、組織全体には周知が進んでおらず、「介助犬同伴」と書いた申込書を出すと、駅員は「介助犬ですか?」と困惑した様子になり、社内に対応の問い合わせを始め、しばらく待たされるのが常だった。
平然としている駅員に美智子さんは伝わっていないと思い、「介助犬を同伴しますけど……」と改めて口にした。
すると、駅員は笑顔になって「僕は小学校で、木村さんの講演を聞きました」と答え、「シンシアは元気ですか」と尋ねてくれた。
この時のやり取りを美智子さんは「介助犬の同伴が当たり前という対応で、涙が出るほどうれしかった」と振り返る。
駅員は現在、電車の運転士をしている山崎寿浩さん(33)。
木村さんの講演を聞いたのは、小学6年生の時だ。
犬を飼い始めたばかりで、シンシアの落とした物を拾ったりする実演に「犬って、こんなに賢いんや」と感動した。
それから介助犬のニュースに関心を持つようになり、鉄道に同伴できることも知っていた。
だから、「当たり前の対応をしただけです」という。
宝塚駅から異動後は車掌をしていたが、担当した特急列車をよく利用する盲導犬を連れた男性がいた。
木村さんの講演で「ハーネスを着けている時はお仕事中」と聞いていたので、足元で伏せている盲導犬はそっとしておいて「何かあればお手伝いしますので」と男性に声をかけた。
目的の駅で間違いなく降りるのも確認した。
「鉄道はさまざまなお客様に接する仕事で、困った様子の方がいれば声をかけます。子どもの時に介助犬について学べたのは貴重な機会でした」と話す。
木村さんが20年前から通う宝塚市のイタリアンレストラン「フロイライン」で働く加納陽子さん(39)は、中学時代に講演を聞いた。
両親が営む店を20代で手伝い始め、木村さんが来店した時、介助犬が匂いにも反応せず、テーブルの下でおとなしく伏せている姿を見て感動した。
木村さんの予約が入った時は、近くの客に「介助犬が来ますが、お仕事中なのでおとなしいです。苦手なら別の席に移っていただけます」と声をかける。
「介助犬のことを理解しているので、自信を持って他のお客様にも説明できます」と話す。

◇子どもたちが補助犬を学ぶ機会を
法施行後も「犬が苦手なお客さんがいるかもしれない」として、補助犬の受け入れを拒む飲食店や施設は後を絶たない。
しかし、木村さんは「アレルギーなどで犬の近くにいられない人がいても席を離せば問題はないはず。加納さんのような対応をしてもらえれば、安心して利用できる」と感謝している。
木村さんはこうした体験から「子どもたちが補助犬について学べば、社会は変わっていく」と実感。
16年ごろから、厚生労働省の検討会や国会議員らが主催したシンポジウムなどで、学校教育を通じた啓発を訴えてきた。
日本補助犬情報センター(横浜市)によると、社会や道徳、総合学習など一部の教科書で記載はあるが、盲導犬だけを取り上げるなど内容は十分でないという。
「厳しくつらい訓練を受けている」といった誤った表現があり、修正を求めたこともあった。
木村さんは「学習指導要領に盛り込むなど学校教育の中で、補助犬の役割や同伴の受け入れが法律で義務づけられていることを学べるようにしてほしい」と話す。
超党派の国会議員でつくる「補助犬を推進する議員の会」は16年、文部科学省に補助犬教育の充実などを求める要望書を提出した。
事務局長の阿部知子衆院議員は「補助犬の受け入れを当たり前にするためには、根っこの部分で学校教育が重要だ。子どもたちが補助犬を学ぶ機会を増やすように改めて働きかけたい」としている。

【山本真也】

子供たちに動物愛護を学ぶ機会を設け推進することで社会は変わっていく。
(byぬくもり)


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