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ペット業界の闇「下請け保護団体」

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【保護犬・保護猫】がブームに
ペット業界の闇「下請け保護団体」を知っていますか?

2022年6月7日(火) 石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師

最近は、飼い主の意識も高くなり犬や猫を迎えるのなら「保護犬・保護猫」と考えている人も増えています。
Hint-Potによりますと「保護犬譲渡会のはずが…違和感を描いた実体験漫画に6万人驚愕 「猫でも似た話が」」のなかで、漫画家の安達さとさん(@Sato_adachi)が、譲渡会での違和感を描いた漫画がツイッター上で6万件超の“いいね”を集めているそうです。
筆者の動物病院でも、いままでの保護犬と違うシステムが出てきて、いろいろな面でお金がいるなどで引っかかったことがありました。
その子の命を救えいたいと思ってもそこに「下請け保護団体」なるものがあることを紹介します。


イメージ写真(写真:アフロ)

◆違和感のある譲渡会
行政の動物愛護センターでは、保護犬は飼い主から遺棄されているので、少なからず精神的にダメージを受けています。
そのため、里親には終身飼育をしてもらいたくて、「注意点」「ダメージ」を説明します。
たとえば、「活発なので運動が必要」「人見知りするので、他の人に会うときは注意してほしい」などです。
そんな体験がある人が、引き取り保護団体がやっている可能性がある譲渡会に行くと、あまり説明はないし、支払額の提示はあるけれど、スムーズに里親になれたりするのです。
・トライアル期間がない
・多額の寄付金を請求される(8万円以上だったりする)
・ペット保険に加入させられる
・不妊去勢手術がされていない
・血統書の犬しかいない
・高額なマイクロチップの装着代がかかる(一般的には数千円から1万円までですが、それ以上の代金)
このようなことがある譲渡会であれば、よく考えた方がいいかもしれないのです。

◆下請け保護団体

イメージ写真(写真:イメージマート)

下請け保護団体とは、第二種動物取扱業※の中にあります。
ペット業界から資金などの援助で助けを得るなどの持ちつ持たれつの関係で成り立っている団体のことです。
※第二種動物取扱業とは 具体的な業種としては、譲渡活動などを行う動物愛護団体の動物シェルターや、非営利の動物公園などでの展示、補助犬の訓練施設などが想定されています。
朝日新聞、2022.01.23 (フォーラム)動物の幸せって?:2 ペット に「下請け保護団体」のことが以下に載っています。
「里親探しに困ってませんか?」。
神奈川県内の犬の繁殖業者のもとには、そんな電話やメールが毎月のように寄せられている。
相手は動物愛護団体。
繁殖から引退させる犬を求め、連絡してくるという。
「ほかのブリーダーさんのところに『犬が足らない』と言って連絡してきた団体もある。
団体間で、業者の犬の取りっこが始まっているようです」
動物愛護団体の多くはこれまで、もともと野良だったり、捨てられたりして地方自治体に収容された犬を保護し、それらを「保護犬」として新たな飼い主に譲渡する活動に力を注いできた。
だが2020年度に全国の自治体が引き取った犬は2万7635匹。
00年度には28万匹余りが引き取られていたから、この20年で10分の1まで減ったことになる。
こうしたなか、業者の犬を引き取ることに軸足を移す団体が増え始めているのだ。
先の業者も数年前から、動物愛護団体に引き取ってもらうようになった。
「自分でもらい手を探すより楽。助かってます。繁殖を続けていくのに、いまは団体さんがいないと困るというのが現実」と歓迎する。
つまりまだまだ少ないとはいえませんが、2020年度に自治体が引き取った犬は2万7635匹(2010年の10分の1になっています)なので、保護する犬が減り動物愛護団体が引き取るところが出てきたのです。
ほかには、ペットオークション会場で売れなかった犬猫を、買い付けに来る保護団体もあるそうです。
こういう団体は、ペット関連会社から資金提供を受け、施設やその傘下で活動している団体もあります。
一般の人には、なかなか見えづらい「ペット業界の闇」なのです。

◆下請け保護団体の何が問題なの?
下請け保護団体は、保護動物を引き取らないと、多くの繫殖業者が「なら捨てに行く」「穴を掘って埋める」などと脅かされてきたので、「助けられる命が助けられなくなるほうが問題。私たちが引き取らなくなっても、業者は繁殖をやめない。捨てたり、殺したりするだけ」なので、この活動をしていると説明しています。
もちろん、下請け保護団体も、実際に保護動物を抱え、里親に譲渡し、命を繋いでいます。
しかし、この下請け保護団体を俯瞰的に見れば、ペット業界から資金をもらっているので、悪徳繁殖業者に意見を言うことができないということです。
そのうえ、上述の違和感のある譲渡会では、資金集めをしているので、それが悪徳繫殖業者に流れる問題もあります。
こういう下請け保護団体や違和感のある譲渡会などがある限り、悪徳繫殖業者が存在し続けます。

◆飼い主のできること  保護犬や保護猫が少なくなる社会へ

イメージ写真(写真:アフロ)

長野県松本市での、悪徳繁殖業者による犬の虐待やネグレクトの事件については、記憶に新しいと思います。
こういう業者を一掃させるためには、保護犬や保護猫の活動をして、悪徳繫殖業者に資金が流れ込まないようにするべきです。
下請け保護団体などが存在して、そこから犬の里親になれば、その子の命を救えるけれど、一部のお金が悪徳繫殖業者に流れているかもしれないことを知ってもらうことが必要です。
みなさんの温かい善意を健全な保護団体だけに届けていただけるよう、心から願っています。
まずは「下請け保護団体」の存在を知ることは大切だと考えています。

石井万寿美

まねき猫ホスピタル院長 獣医師
大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は栄養療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医師さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らす。
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