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動物保護の先に見据える日本の課題

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坂上忍「ペットショップで買うしかない?」動物保護の先に見据える日本の課題

2022年6月10日(金)  

動物愛護管理法改正により、6月1日、ペットショップなどで販売される犬や猫へのマイクロチップ装着の義務化が始まった。
背景にあるのは飼育放棄や遺棄などの社会問題だ。
「以前は、ダメな飼い主でした」と告白するタレントで俳優の坂上忍さんは、自身の体験や失敗をきっかけに、こうした動物に関する問題を身近に感じていたという。
その後、人生を賭けて立ち上げたのが動物保護ハウス「さかがみ家」。
そこにはペットを取り巻く現状を少しでも改善したいという強い思いが根底にある。
(ジャーナリスト・中村竜太郎/Yahoo!ニュース Voice編集部)

◆ボランティアではなく自力運営を目指す動物保護ハウス

2022年4月に開業した動物保護ハウス「さかがみ家」

――動物保護ハウス「さかがみ家」は開業してからどうですか。
坂上忍: 開業して大変だったことは、動物じゃなくてむしろ人のほうですね。保護犬、保護猫との向き合い方を伝えながら、スタッフさんに慣れていただくこと、そしてどんなルーティンを作っていくかということに苦心しました。おかげさまで現在は、いい感じで回っています。ただ、「さかがみ家」が目指しているのが自力運営。利益を上げて、スタッフさんたちにはボランティアではなく、仕事に見合った対価を支給して、なおかつこの施設自体が、自分たちが得た利益で回していけるっていうことにならないと意味がない。しかし今のところ収益はゼロです。 動物の保護にお金を使っていると、立派ですねって言われますけど、きれい事じゃない言い方をすると、とんでもないギャンブルですからね。本当に、人生最後の挑戦だと思っていますし、失敗ができない。それはなぜかというと、動物の大切な命を預かっているから。ギャンブルと言いながら、絶対に失敗ができないんですよ。だからこそお金を稼ぐためだったら、自分の名前を利用するという反則技でも、何でもやろうという覚悟です。ぶっちゃけ、びびってはいますけど。びびりを楽しまないとやっていけないなっていうのが現実ですね。


さかがみ家で保護されている犬たち

――坂上さんがペットを飼い始めたのはいつですか。
坂上忍: 動物好きなのは子どもの頃からですが、以前は正直、ダメな飼い主でした。幼少期兄貴と交代で動物を拾ってきちゃって、最終的に母親が面倒を見るというありがちなパターン。で、25歳の頃ひとり暮らししていたとき、ペットショップで売れ残っていたウェルシュコーギーを迎え入れたんですが、当時は遊びたい盛りで、途中から遊びや仕事にかまけて面倒を見るのがおろそかになって。あるとき帰宅したら、玄関脇の壁に引っ掻いた傷と、血がついていた。その子の足を見たら、爪が剥がれていて、血が出ていて…。それを見たときに、「やっぱ俺、動物飼う資格ないな」と思い、友人に引き取ってもらったんです。 それで40歳過ぎぐらいのときに、若いときの過ちを軽減できないのかって思い始めて、チワワを飼うように。それもペットショップの売れ残りでした。それからいろんな出会いがあり、現在に至るんですけど、動物好きの彼女の影響も大きかったですね。


ペットショップについて語る坂上忍さん

――2匹とも売れ残りというのは、何か思いがあるのですか。
坂上忍: 実は2匹目のチワワを飼ったときに、ペットショップの犬って値段が下がるんだと初めて知ったんです。値段が下がるということは、モノなんですよね。最初20万円だったのがどんどん下がって「もしもお客さんが買ってくれるなら10万円にします」って言うから、それで買ったわけです。2匹目も売れ残りの子を引き取って保護したみたいな感覚でした。 でも、ペットのことをどんどん調べていくうちに、ペットショップで犬や猫を買うって違うよな、買っちゃう人がいるから売るんだよ、需要と供給だもんな、じゃあ、そこから残された子たちってどうなるんだろう、と考えるようになった。で、ダメダメ飼い主だったのが、罪滅ぼしの気持ちを抱えつつ動物を飼うようになって、遅ればせながら動物保護の現状を勉強しました。だいぶ遠回りしましたね。

――そこから学んで、気づいたことってありますか。
坂上忍: やはり「動物はペットショップで買うしかないのですか?」と大声で言いたいです。要は、生体販売ってどうなのかというところへ必ず行き着く。仕事で米・カリフォルニア州の動物保護施設の仕組みや取り組みを見学して驚愕したんですけど、日本が諸外国のようにペットショップのない国になりえるかというと、時間はかかる。自分が生きている間に成し遂げられなくても、次につなげられるような何かをしなきゃならないと思うと、もしかしたら僕がやろうとしていることは、“対ペットショップ”になるのかもしれない。

――動物保護の問題は山積みですよね。
坂上忍: 根っこは全部、人間の不始末や身勝手さです。人間がする後始末は、結局は、殺処分になるのか。そんなことを無くしたいから、善意や寄付でいろんな団体が保護活動をやっていますが、じゃあすべてが優良企業かというと、これもまた微妙。動物を守ってくれる人を守るため、彼らの生活を保障するために、ちゃんとお金を払えるようになろうよ、収益化しないと活動が続かないじゃん、というのが「さかがみ家」の発想。だから僕がやろうとしていることはけしてきれい事ではない。「起業したんだ」「新しい商売を始めたんだ」と自分に言い聞かせています。

◆きつかった情報番組。次のきついことは……

動物保護について語る坂上忍さん

――ひるがえって動物を保護する優しい坂上さんと、バッシングを気にせず言いたいことを言う強い坂上さんと、世間的にはギャップがあるような印象です。自分をどう見ていますか。
坂上忍: 僕は本当に、卑屈の塊。普通に話していて、景気のいい話なんて出てこないですよ。たとえば動物好きのいい人にされそうになると、急に本能的に身構える。なんてったって、自虐の塊ですから。何かを始めるときもどれだけマイナス材料を集められるかから始まって、それを一つ一つ潰せるものは潰して、これは目がありそうだなっていうのを精査してやるタイプ。ギャンブルで勝ちにいくのもそうですし、ビジネスに対してもそうかもしれません。 顰蹙(ひんしゅく)を買うかもしれませんが、子役から長い年月、人前に出る仕事をしてきて実感するのは、世間の目ってどれだけ甘く不確かなものかということ。プラスとマイナスいろんな評価があるなか、意識的にバランスを取ってコントロールしないと、自分が壊れてしまいます。そこは気を配っていますね。たとえば僕は単純に毒舌キャラで括られることがありますが、僕はおそらく誰よりも怖がりで、びびりなんです。『バイキング』なんて瞬間瞬間で判断していかなきゃいけないわけですから、もう泣きそうなくらいびびってました。自分の発言で多くの人に迷惑がかかるかもしれないという状況のなか、振り切ってものを言うのは精神的にきつかったですね。あやふやにすることは簡単ですけど、あやふやは面白くないし。ごくたまに『バイキング』終わって残念ですという意見も聞くけど、あの役目を終えてから、ホッとしています。

――俳優業は再開されますか。
坂上忍: 僕はもう、今後はお芝居をやるかどうかもわからないし、もし出会いがあってやれたとしても、限られた本数だと思います。やるならとことん本気じゃないと、お芝居に失礼なので、現状を考えると可能性は低いかな。一方で、バラエティに出演するようになって丸10年。その間はアドリブでやってきたものですから、いきなり台本もらって役者としてセリフを言うのも、なんか忘れちゃいましたよ(笑)。ただ、極悪非道な犯人とかだったら、興味ひかれるかもしれないですね。 若いときは、演技でダメ出しされて、追い込まれて虐げられて、この野郎、見返してやると反発心を持ちながら演じて。で、仕上がりを見ると、なんてすてきな映画になっているんだと感動して、後追いで感謝するっていう。また、苦しい現場を克服したときの達成感を知ってしまい、それが楽しくなって、結局きついとこ行きたがる癖を持ってしまったのかな。だから僕、誰も信じてくれないけど、本当に“ドM”だと思います。慣れないバラエティも情報番組もきつかったけど楽しかった。じゃあ次のきついことは何なんだというと、もしかしたらそれが、「さかがみ家」かもしれませんね。

----- 坂上 忍
1967年生まれ、東京都出身。2歳で劇団若草に所属し、子役デビュー。その後も多くのテレビドラマ、映画に出演する傍ら、2009年には子どもを対象とした芸能スクールを開校。2012年頃からバラエティ番組にも出演するようになり、2014年に情報番組『バイキング』の司会を務める。2022年4月に動物保護ハウス「さかがみ家」をオープンし、精力的に動物保護活動を行っている。

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