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「もう飼えない」どうしたら?残されたペットの余生

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「もう飼えない」どうしたら?残されたペットの余生

2022年2月27日(日) 

犬や猫などのペットは、楽しい思い出もつらい記憶も共有してきた家族同然の存在だ。
一生離れたくないと思うのは人情だが、どうしても願いがかなわなくなることもある。
加齢による体力不足や病気で面倒を見られなくなったとき、誰が、愛する「家族」の世話をしてくれるのだろう。
やむを得ない事情で飼い主を失ったペットはどこへ行くのか。
(時事ドットコム編集部 横山晃嗣)


武富力之介さん、尚子さん夫妻からおやつをもらうリキ=2022年1月6日午後、岐阜県羽島市

◇遺産がペットの生活の支えに
2022年1月上旬、岐阜市の住宅街にある二階建て民家の一室で、白と茶のきれいな毛並みをした猫のキュン(雄)が、数匹の仲間に囲まれながら、のびのびと過ごしていた。
そこは、ペットの適正飼育の普及・啓発などを行うNPO法人「人と動物の共生センター」(岐阜市)が一戸建てを改装した猫専用シェルター。
同センター理事長で獣医師でもある奥田順之さんらによると、キュンは岐阜県内で1人暮らししていた高齢女性の「家族」4匹のうちの1匹で、女性が亡くなり、約1年前にキリ(雄)、ノブナガ(雄)、アヴ(雌)と共にシェルターに移った。
キリには新たな飼い主が見つかったが、キュンたち3匹は里親が見つからなければ、センタースタッフに見守られながら一生を過ごすことになる。
だが、飼い猫の平均寿命は約15年で、20年以上生きることもある。
ペット保険を扱うアニコム損害保険のアンケート調査によると、2020年の1年間に飼い主が猫1匹のために使った費用は約16万5000円。
15年分を単純計算すると、総額約250万円に上る。
こうした費用を支えるのが、ペット後見互助会「とものわ」だ。
17年にセンターが始めたサービスで、飼い主が元気なうちに入会金と会費を支払い、世話ができなくなったときには、センターがペットを引き取って飼い主の遺産や生命保険で飼育費を賄う。
終生飼育費は猫、犬とも1匹100万円からで、センターによると、22年2月15日までに8件の契約が成立した。
同県羽島市の武富力之介さん(86)、尚子さん(76)夫妻は17年、愛犬リキ(雄)のため、とものわを契約した。
リキはやんちゃだが素直で、夫妻にとって「ひ孫」のような存在だ。
尚子さんはリキと暮らすようになって「生活の質が上がり、すごく幸せ」と笑顔で話したが、心配なのは、今後も長生きするであろうリキの将来。
「犬をかわいがってくれる人の下で一生を全うしてほしい。年を取って飼ってしまったことの一つの責任の取り方だと思う」と契約の動機を語った。

◇愛護センター収容、殺処分も
このような取り組みはまだ始まったばかりで、飼い主の入院などを機に都道府県や政令市、中核市の動物愛護センターなどに収容される犬や猫は少なくない。
収容された犬や猫たちは、愛護団体が開く譲渡会などを通じて新しい飼い主探しが行われるが、1年以上見つからないこともあり、最悪の場合、殺処分に至る。
環境省によると、捨て犬や迷いネコなど、飼い主不明のケースを含め、2020年度に全国で収容されたのは、犬が計2万7635匹、猫は計4万4798匹に上る。
このうち、飼い主からの引き取り要請があったのは、犬2701匹、猫1万479匹だ。
飼い主の要請で引き取られた猫1万479匹について、さらに調べてみた。
20年度に最も多く引き取っていたのは、760匹の福島県動物愛護センターで、新潟県のセンター・保健所(計660匹)が続いた。
これに対し、1匹もなかったのは、山形、高知両県と12市のセンターなどだ。
最多だった福島県動物愛護センターの大越憲幸所長は「多頭飼いをする高齢者からの引き取りが多かった」と説明。
「体を壊したり施設に入ったりしている状況では受け入れざるを得ない」と語った。
2番目に多かった新潟県動物愛護センターの遠山潤所長も「県内に行政の代わりに引き取ってくれる団体は十分にはない。飼い主の生活の再建ができなかったり、近隣への迷惑があったりすれば引き取らざるを得ない」と話す。
一方、引き取りがなかった山形、高知両県それぞれのセンターの担当者はいずれも「何か特別なことをしているわけではない」と説明した。
地元の愛護団体からは「拒否しているだけだ」との声も出ているが、「飼い主や愛護団体が譲渡先を探すことで対応できている」と強調した。


NPO法人「猫と人を繋ぐツキネコ北海道」から預かった猫を膝に乗せる80代女性(同法人提供)

◇「預かり」も選択肢に
一人暮らしは寂しい。
ペットを飼いたいけれど、年齢を考えると…。
そんな高齢者の思いに応えたのが、札幌市のNPO法人「猫と人を繋(つな)ぐツキネコ北海道」だ。
団体は、保護した猫を高齢者らに預かってもらい、もし何らかの事情で飼育できなくなったら団体で引き取る制度を運用。
2015年ごろに本腰を入れ、22年2月12日までに、165人に猫243匹を預けた。
代表の吉井美穂子さんらによると、利用者は過去に猫を飼ったことがある60~80代の一人暮らしの女性が多く、通常では譲渡先が決まりにくい病気猫などの預かりにもつながっているという。
吉井さんは「高齢者が猫を引き取るのは難しいが、戻る場所があれば預かり手になってもらえる」と制度の利点を説明した。

◇専門家「飼育費、十分考慮を」
「新型コロナウイルス禍で癒やしを求めてペットブームが起きているようだが、自分で最期をみとることができるのか、毎日のエサ代や医療費を負担できるのかなどを考えてほしい」。
そう話すのは、広島大学大学院の谷田創教授(人間動物関係学)だ。
谷田教授は、ペットを望む高齢者に「野良猫に不妊・去勢手術をして見守る地域の活動へ参加」も選択肢に加えるよう助言。
「猫の世話もでき、地域にも貢献できる。猫を通した高齢者同士の付き合いや見守りにもつながる」と強調した。
ペット後見制度などの新たな取り組みについても伺った。
谷田教授は「愛護センターで引き取られなかった猫は愛護団体が預かったり、地域の人が地域猫として世話したりしている。
愛護団体や地域が責任を肩代わりしている状況だ」と指摘した上で、「飼い主から犬や猫を受け取った後で劣悪な環境で飼育する悪徳業者もいる」と注意。
「十分吟味して後見の場所を見極めることが重要。格安で世話をするという話はおかしいと思わないといけない」と警鐘を鳴らした。

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