ペット業界「悪徳ブリーダー」の残酷すぎる実態
…売れない子犬はこうして処分する
2022年3月2日(水)
空前のワンちゃん、ニャンちゃんブームである。
しかし、ペットの販売が巨大な産業になるほど、その闇はますます深さを増している。
思わず目をそむけたくなる、おぞましい業界の「矛盾」とは?
イメージ写真です(Photo by iStock)
◆麻酔なしで帝王切開
神奈川県の街道沿いにある大型ペットショップ。
「可愛いね。まだ赤ちゃんなんだね」 「どういう名前がいいかなあ」 幼い子どもを連れた若い夫婦がショーウィンドーをのぞき込んでいる。
ケースの中では、昨年末に生まれたばかりだという茶色いトイプードルがやんちゃに遊びまわっていた。
日本全国のペットショップで見られるような、平和な光景だ。
だが、この犬はどこで生まれ、どのように運ばれ、これからどこへ行くのか。
その現実を子細に知れば、安穏とはしていられなくなるはずだ。
昨年、史上最悪とも言われる、ペット業界における虐待事件が明るみに出た。
11月4日、長野県警が松本市のペット繁殖場「アニマル桃太郎」の社長と社員1人を動物愛護法違反の疑いで逮捕した。
同繁殖場は劣悪な環境で、計1000頭もの犬を飼育していた。
公益財団法人動物環境・福祉協会Eva事務局長の松井久美子氏が語る。
「アニマル桃太郎に勤めていた従業員からの告発が我々の耳に届き、すぐに動きました。獣医師の資格がないにもかかわらず、刃物を使って無麻酔で帝王切開をしていたなどの情報があり、警察に連絡して捜査・逮捕につながりました」
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犬たちは何段も積み重ねられた狭いケージで飼育されており、糞尿は垂れ流し状態。
ひどい衛生環境で素人が行っている手術のため、縫合がうまく行かず化膿したり、傷口が開いたままの犬もいたという。
「衝撃的だったのは、これほど悪質な環境で生まれた子犬たちが、クーアンドリク、ペッツファーストといった大手ペット販売店に売られていたということです。これが子犬や子猫の流通の現実。一部の悪質な業者がこっそりと行っているのではなく、むしろ今回明るみに出たのは氷山の一角と言えるでしょう」(松井氏)
犬や猫などを売るペット産業の最も川上にあるのがブリーダー業界だ。
岡山県で動物の保護活動をしている人物が匿名で語る。
「もちろん、繁殖業者のすべてが悪質なわけではありません。一つの犬種や猫種にひたすら情熱を注いで育て、飼い主の家まで訪問して環境を確かめてからでないと売らないという優良な業者もいます」
この保護活動家は、ペット業界で働いた経験もあり、流通の闇の部分を知り尽くしている。
「しかし、大多数は金儲けのために子犬、子猫を量産することを目的としている業者です。私の見たひどい繁殖場は、不衛生極まりなく、うんちやおしっこのシートはありますが、交換は最低限。ネズミやカラスがこぼれた餌をつつきにくるようなところで、繁殖時期になれば次々と無理な繁殖をさせていました」
◆売れない子は水に沈めて
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このような繁殖場はパピーミル(子犬工場)、キトンミル(子猫工場)と呼ばれ、最近では動物愛護法で管理基準が定められるようになったものの、現実にはまだまだひどい環境のところが多いという。
デザインドッグ、デザインキャットなど、違う犬種、猫種をかけ合わせた「商品」も高く売れることが多く、次々作られている。
「犬ならチワワ、プードルをかけ合わせたもの、猫ではスコティッシュフォールドやマンチカンなどの人気種をかけ合わせたものに高値が付きます。希少性が高い、自分だけの唯一無二のペットであるというイメージが、飼い主に喜ばれるのでしょう。一方で、業者にしてみれば、血統証交付のためのコストがかからないので、利益率が高い。 一時期、チワワとダックスのミックスがメディアで取り上げられて、こぞって生産されたことがあります。しかし、犬のなかでも身体の小さなチワワと胴の長いダックスをかけ合わせると、身体に大きな負担がかかるのです。奇形や生まれ持った疾患のある子犬が次々と生まれました。 見た目もいい場合と、悪い場合がはっきりしている。ある繁殖業者は生まれてしばらくした子犬を売れるもの、売れないものと判別して、売れなそうな犬はまとめて網に入れ、そのまま水につけて溺死させていました」(岡山の保護活動家)
繁殖場で生まれてきた子犬、子猫は日本各地で開かれるオークションを通じて販売業者の手にわたることが多い。
オークションには8週以上の週齢の犬猫しか出してはいけないと法律で定められている。
だが、そのルールが厳格に守られているとはいえない。
「誕生日は改ざんされることが多いですね。小さければ小さいほど可愛らしく、高値で売れる可能性が高いからです。 誕生日を証明することは非常に難しい。怪しいなと思っても、見て見ぬふりをされるケースがほとんどです。オークションの会場には獣医も来ていて、歯のチェックや関節の確認をしており、本来であれば週齢を把握できると思うのですが、皆、知らん顔をしています」(岡山の保護活動家)
熱心な保護活動家や優良なブリーダーがいる一方で、なぜ悪徳業者がいなくならないのか?
じつは、過去に問題を起こした業者がオークションで門前払となることはほとんどなく、動物愛護法違反の疑いで逮捕されたアニマル桃太郎のような悪徳業者が入り込む隙はいくらでもあるという。
そんな彼らの実態を後編の『ペットショップで「売れ残った犬と猫」はこうして処分される…その「残酷すぎる実態」を暴露する』で明かす。
『週刊現代』2022年3月5日号より
【後編】ペットショップで「売れ残った犬と猫」はこうして処分される…その「残酷すぎる実態」を暴露する
週刊現代(講談社)
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