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車いすを乗りこなし…天国から今勇気を届ける元保護犬

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車いすを乗りこなし…天国から今も勇気を届ける元保護犬
 教えてくれた大切なこととは

2021年11月14日(日) 

衛生環境や食生活の改善、医療技術の発達などにより、人間だけでなくいぬやねこたちの寿命もここ20年ほどで飛躍的に伸びています。
愛する家族の長生は喜ばしいことである一方で、さまざまな難題も。
シニアのペットと幸せに暮らしていくには、どのような工夫が必要なのでしょうか。
飼い主さんのサポートのもと、さまざまな病気と闘いながら最期まで生き生きと暮らし続けた1匹の元保護犬を通じて、じっくりと学んでみましょう。飼い主さんに話を伺いました。

 ◇ ◇ ◇

◆振り返った瞬間、走り寄ってきたルーさん

車いすを乗りこなし、ニコニコ笑顔を浮かべるルーさんことルディちゃん【写真提供:ルーさんと猫先輩から貰う幸せ(@twenderafiki)さん】

いぬ用車いすを乗りこなし、お散歩を楽しんでいるのは、元保護犬の「ルディ」ちゃん。
家族からは愛情を込め、ルーさんと呼ばれています。
ルーさんが飼い主さんの元へやってきたのは、医師の診断によると推定6~7歳頃のこと。
出会いの場は里親を募集する譲渡会でした。
「先代の子を見送り、そろそろ保護犬をお迎えしようと考えていた時に譲渡会へ足を運びました。そこで駐車場から会場へ向かう際、茶色のいぬを連れた男性とすれ違ったところ、その子が先代の子と見間違うほどそっくり。それがルーさんのファーストインプレッションでした」
その後、飼い主さんとルーさんは運命を感じる再会を果たします。
それはにぎわった会場内でのこと。
「スタッフさんから『どのような子を探していますか?』と声をかけられ、9割方ねこさんだったので『今日はわんちゃんはいないのですか?』とお伺いしました。すると『少ないけど黄色いバンダナを着けている子がそうですよ』との返事があり、『え! じゃ、あの茶色の子もそうなんですか?』と振り返った瞬間、ルーさんが私の元へ走ってきてくれたのです。その後はもう何も悩むことはありませんでした」
実はルーさんの名前「ルディ」には、アフリカのスワヒリ語で「戻る」「返る」という意味があるそう。
ルーさんは近所の人々も気が付かないほど、先代犬と生き写しのようにそっくりだったため、「生まれ変わって帰ってきてくれた」という意味で名付けました。

◆前飼い主による壮絶な虐待 傷を乗り越え始まった幸せな日々

若くて元気な頃のルーさん。狛犬とそっくり?【写真提供:ルーさんと猫先輩から貰う幸せ(@twenderafiki)さん】

ニコニコ笑顔が愛らしく、温厚なルーさんですが、お迎えされるまで壮絶な半生を過ごしてきました。
譲渡会のスタッフの話によると、ルーさんは元の飼い主から虐待を受けて育ったといいます。
「バケツに溜まったお水がごはん代わりで、近所の人からごはんをもらっていたそうです。10センチほどしかないとても短いリードで係留されていたらしく、出会った時には声が出ませんでした。医師からはこの係留が原因で声帯がつぶれ、声が出せなくなったと思われると聞いています。一度は里親会に引き取られましたが、すぐに連れ戻され、また元の日々になったことも。しかし、やまない虐待を近所の方々が見かねて、当時の飼い主さんが留守だった時に現里親会へ連れてきてくれたと聞いてます」
心身ともに深い傷を負ったルーさんをお迎えするにあたり、飼い主さんはしっかりとしたフォローが必要だと覚悟を決めていたそう。
ところが、飼い主さんの優しさに触れたルーさんは、すぐに“安心できる場所”だと理解したのでしょう。
お迎え初日から大の字で寝るという大胆な寝姿を見せてくれました。
「まるで『前からこの子はうちの子だったよね?』という感じで堂々としていました。とはいえ、生活を始めてみると時折、怯える様子を見せることもありました。例えば、レジ袋を広げるため上下に振った時のバサバサとした音や、竹ぼうきのような長い棒を手にした瞬間、散歩中に聞こえてくる工事のトントンという音に対してかなり敏感になることも。しかし、日に日にそうした怯えも薄れていきました」
過去のつらい経験を感じさせないほど、「穏やかで優しい子」。
ルーさんの性格を語るには、その一言に尽きるといいます。
こうして幸せな時間をともに過ごしていた飼い主さんでしたが、ある時にルーさんを病が襲います。

◆ルーさんが教えてくれたこと 多くの人に勇気を与え続けている

「寝たきりでも歩けなくてもね、笑顔でいると良いことがいっぱいあるんだよ」【写真提供:ルーさんと猫先輩から貰う幸せ(@twenderafiki)さん】

ルーさんは10歳で重度の多発性変形性脊椎症(ヘルニア)を発症。
さらに11歳で平行感覚を失ってしまう前庭疾患、12歳以降は重度の慢性高脂血症や胆嚢内胆泥貯蓄症、左右腎盂の石灰沈着、神経伝達障害など、高齢になるにつれ数え切れないほどさまざまな病に見舞われました。
そうしてある時、転びながらも懸命に歩くルーさんのため、飼い主さんはいぬ用の車いす購入を決意。
用意されたルーさん専用の車いすには、たくさんの愛情と工夫が詰まっていました。
「業者さんには定期的なメンテナンスに加え、バンパーの取り付けやフレームを強化して貰うなど、プロ目線でのカスタマイズをお願いしていました。一方、自宅でも日々変化していく体の症状に応じてカスタマイズが必要でした。徐々に自力で首を支えることができなくなってきたので、突っ張り棒を使って頭を置くためのクッションを置く台を作ったりも。その後、さらに首の力が落ちて突っ張り棒が湾曲してしまい、頑丈な人間用の杖を両脇に取り付け、以前よりしっかりしたクッションを固定したりもしました」
他にも股ずれをしないよう緩衝材やタオルを巻いたり、体や足を傷付けてしまわないよう服を着せたりブーツを履かせたり……。
ルーさんの状態に合わせ多くの工夫が必要でしたが、「車いすでお散歩、お食事、排泄(圧迫排尿含む)をしていたので、車いすなしで体の大きいルーさんを支えるのはかなり厳しかったと思います」と、その重要性を語ります。
いつしか歩くこともままならず、ルーさんは寝たきりに。
それでもルーさんは、飼い主さんの愛が詰まったこの車いすにまたがると、4本の足を動かしてとことこと歩き回りました。
主治医すらも驚かせたその様子がツイッターに投稿されると大反響に。
10万件以上の“いいね”を集めています。
またリプライ(返信)欄には、「力強さに心震えます!」「頑張れ! 頑張れ!」「私もこの子に負けないように生きていきます」など、感動の声が殺到。
さらに「うちの子も老犬で自分で立ち上がれないことがしばしばの介護初期。大変参考になります」といった声や車いすについて質問する人なども。
ルーさんの生き生きとした奇跡的な姿は、多くの人に勇気を与えています。
残念ながらルーさんはこの投稿の少し前、天寿を全うし天国に還りました。
けれど、今でもルーさんは飼い主さんやたくさんの人の心の中で生き続け、たくさんのことを教えてくれています。
その一つは、飼い主さんがそばにいるとつらくても笑顔を浮かべ、見つめてくれた姿が教えてくれたことです。
「寝たきりでも歩けなくてもね、笑顔でいると良いことがいっぱいあるんだよ」
たくさんの傷を負い、病と闘ってきたルーさん。
一緒に過ごす上で飼い主さんが気を付けてきた3か条を、最後に教えていただきました。
「たくさん声をかける、いつも笑顔で接する、『その時』を大切にすること。食べることや眠ることを忘れ、これ以上無理と思うくらい限界まで頑張ったつもりだけど、やり残した感が出てしまうのが介護なのかな……と。やっぱりその時を全力で楽しむことが大切なんだとつくづく思います」
ルーさんとの幸せいっぱいの生活や老犬介護のヒントは、今でもツイッターやインスタグラム(ru_dog_rudy)で見ることができます。
老犬の飼い主さんはもちろん、ペットがいない人にも何らかの学びがある貴重な記録です。

【動画】10万人が感動したルーさんのお散歩風景 主治医も驚いた車いすを乗りこなす姿

声帯をつぶされて保護されたシニア犬が里親に向けた笑顔、旅立つ直前に「もう行くよ」想い伝えてくれたオリコン11/7(日)9:30

○取材協力:ルーさんと猫先輩から貰う幸せ(@twenderafik)さん

Hint-Pot編集部

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