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元エリート弁護士が、家もカネも投げうって捨て犬ら70匹と暮らす理由

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元エリート弁護士が、家もカネも投げうって捨て犬ら70匹と暮らす理由

2021年6月3日(木) Newsweek

<弁護士を辞めて犬を引き取ったあの日から生活が一変。資金は苦しいが、90頭の動物と一緒に生きる幸せな日々>


マーク・スターマー(愛犬家、作家) MARK STARMER

子供の頃、犬が嫌いだった。
母が相当な犬嫌いで、わが家では汚くて臭い動物と見なされていた。
私にとって犬は縁のない存在だった。

やがて私は弁護士になり、大手国際銀行の仕事に携わった。
世界を飛び回り、家で待つ幼い子供たちにいつも土産を買って帰った。
クアラルンプールのデパートで見つけたおかしな顔つきの縫いぐるみも、その1つだった。
数年後、ガーデニングのイベントに行ったら、その縫いぐるみにそっくりの奇妙な姿の犬を見つけた。
私は驚いて、飼い主に犬の品種を訪ねた。
シャーペイだった。
2週間後、私たちはシャーペイの子犬を飼い、カイティと名付けた。
その後、カイティの遊び仲間にイングリッシュ・ポインターを飼った。
しばらくすると今度は、フランス生まれの猟犬2匹の引き取りを頼まれた。
そして、私たちの生活は一変することになる。
この頃、私は独立してビジネス書を出版し、世界58カ国を旅した。
そんな生活を送るうちに母国イギリスが嫌になり、妻を説得して2006年にカナダのアルバータ州に移住した。
当時わが家には犬6匹と猫2匹がいたが、みんな新居に連れて行った。

◆どんな犬も引き取って面倒を見た
引っ越して数カ月後、家の前に偶然、1匹のシベリアン・ハスキーが捨てられていた。
捨て犬を引き取ったことを友人に伝えたところ、その話が広まり、いろんな人が「この犬も救ってくれ」と言ってくるようになった。
依頼は次々と舞い込んだ。
多くの犬が心理的、身体的に傷を負っていた。
高齢の犬、目や耳が不自由な犬、事故で足を失った犬、病気で死を前にした犬......みんな引き取って、面倒を見た。
アルバータ州の家には4年住んだが、近隣住民の理解を得られなくなり、引っ越すことにした。
心おきなく犬を飼える場所を見つけるのに3年かかった。
いま住んでいるブリティッシュコロンビア州に移った13年には、26匹の犬を飼っていた。
ここはかなり田舎なので土地が安く、敷地の広さは前の家の10倍以上だ。
これまで引き取った犬は70匹になる。
しかし他の飼い主に斡旋した分を含めると、100匹以上を助けた。
やがて私たちは、犬以外の動物も引き取ることにした。

◆豚だってアルパカだって
今では犬のほかに、豚や鶏、羊、アルパカ、牛、馬などが90頭以上いる。
そこで家の一部を開放し、動物との暮らしを体験できる場にする計画も進めている。
以前の生活に戻りたくないかと聞かれることがある。
確かに動物に有り金を全て注ぎ込む前は、かなり裕福だった。
でも振り返ると、あまり賢くないお金の使い方をしていた。
私は今年、60歳になる。
サリドマイド薬害のせいで、右腕が左腕より約15センチ短く、体は普通の人よりもはるかに老化が速い。
今の願いは、私の仕事を引き継いでくれる人が現れることだ。
わが家の犬も高齢化している。
19年には7匹、20年には4匹が死んだ。
動物は人生を共にできる素晴らしい仲間だ。
私たちは本当に恵まれている。
今まで約120人の知り合いに影響を与え、肉食をやめるきっかけをつくれたことも誇りに思う。
私たちの目的は動物愛護だ。
簡単なことではないし、資金も苦しい。
でも何とかやっている。とても充実していて、とても幸せだ。

マーク・スターマー(愛犬家、作家)

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