「ボロボロ」「妖怪のよう」悲しい末路たどる猫たち、
地域猫活動の裏に“救えない”ジレンマ
2020年12月5日(土) ORICON NEWS
猫を完全室内飼いにする人も増え、今では野良猫もずいぶん減った。
とはいえ、周囲の人々からエサをもらうなど、ある程度の管理を受けて生きる地域猫もいる。
地域猫活動は決して悪いことではないが、猫が危険にさらされたり、迷惑と感じる住民との軋轢も生まれているのは確か。
NPO法人『ねこけん』には様々な保護の依頼が来るが、地域猫に関するものも多い。
『ねこけん』ブログに綴られたレポートをもとに、代表理事・溝上奈緒子氏に取材。地域猫にまつわる問題を探る。
(左から)毛玉がこぶのようになった『にどみちゃん』、薬品をかけられボロボロになった猫(写真:ねこけんブログより)
■薬品をかけられたボロボロの猫、まぶたの皮膚は溶けかかっていた
ある日、『ねこけん』に寄せられた、「助けてあげてください」というメール。
「目が見えていないようだ」「具合が悪そうでフラフラしている」「ガリガリ」「数日前は普通だった」…そんな、猫に関する情報が寄せられた。
早速、『ねこけん』メンバーが現地に赴くと、見つかったのは全身真っ白な粉まみれで、皮膚がただれたボロボロの猫。
情報提供者によると、その猫は地域猫だったが、2~3日姿を見せない日があり、再び現れたときにはこの姿になっていたという。
地域猫とは、特定の飼い主がいなく、地域住民によって共同管理されている猫のこと。
飼い主のいない猫を増やさないため、TNR(捕獲し、不妊・去勢手術を行い、元に戻す)を施されていることが多い。
「何かの薬品をかけられ、ボロボロでかわいそうな状態。猫を連れて帰る車の中は、薬品の匂いでこちらも具合が悪くなりそうなほどでした」と溝上氏は当時の様子を振り返る。
猫の身体中の毛はゴツゴツと固まり、まぶたの皮膚は溶けかかっていた。
『ねこけん』に到着後、すぐに猫をお風呂に入れて洗浄。
だが、その後の血液検査で、かけられた薬品が原因で、急性腎不全と急性肺不全になっていたことが発覚した。
共同管理されているとはいえ、自由に歩き回る地域猫の暮らしぶりは、野良猫とさほど変わらない。
エサはもらえるものの、自由だからこそ誰かに連れ去られたり、危害を加えられたりする可能性がある。
そして、地域住人がそれに気付いたとしても、探したり、手当をするまでに至らないことも多い。
薬品をかけられてボロボロになった猫の容態は安定したが、「一度不幸になった子を、再び不幸にはできません。だから地域猫だったこの子も、もう一度外に戻すつもりはありません」と溝上氏は語っている。
■こぶだらけでまるで妖怪…あまりの惨状に“二度見”された地域猫
保護され、見違えるように可愛らしくなった『にどみちゃん』(写真:ねこけんブログより)
また別の地域猫の保護の様子も、『ねこけん』ブログで報告されている。
その猫はまるで、こぶがいくつもぶら下がった、妖怪のような姿をしていたという。
ボランティアメンバーが、あまりの姿に思わず“二度見”をしてしまったことから、この猫は『にどみちゃん』と名付けられた。
保護後によく見てみると、猫にぶら下がっていたこぶの正体は大きな毛玉。
身体中の毛が玉状になって身動きが取れず、四肢の筋肉も落ち、神経にも異常が出てしまっていた。
「動くたびに毛が引きつって痛かったでしょうね」と溝上氏は語る。
にどみちゃんはバリカンで慎重に毛を剃られ、ようやく毛玉の鎧から脱出できた。
耳に入っていたVカットの跡(不妊・去勢手術済みの証)から、ある程度は管理された地域猫であることも明らかになった。
ケガしていた後ろ足にも治療が施され、ブログでは「もう外には出ていかなくていいんだよ」と語りかけられている。
その後、猫本来の可愛らしい姿を取り戻したにどみちゃんは、『千代ちゃん』と改名。
あとは幸せな家族との出会いを待つだけ…と思われたが、検査で極度の貧血、心臓に病があることが発覚。
今後、回復することは見込めないという。
過酷な外の世界から保護されたものの、この猫の末路には悲しい現実が待っていた。
■「地域猫の最後はこうなる」、利点と弊害
地域猫の活動をいち早く取り入れたのは、東京都の千代田区と言われているが、同様の活動はほかの地域でも数多く行われている。
猫を愛する人たちによって行われる活動であり、殺処分の減少にも一役買ってきた。
だが一方で、糞尿被害など住民間でのトラブルが生まれることもある。
それらが発展して、動物虐待にまでつながってしまう場合もあるのだろう。
だからこそこの活動では、地域住民の理解、不妊・去勢手術、エサの管理、トイレの設置などを掲げていることが多い。
活動で救われる命があることは確かだが、虐待の被害、病気や事故などで保護されてくる地域猫も後を絶たない。
溝上氏は地域猫活動を理解したうえで、外にいる猫にはやはり危険が伴うことを心配している。
『にどみちゃん』を保護した際、溝上氏と猫にエサをあげていた人との会話がブログに残されている。
「『こういう状態になってしまっていたのに、どうにかしてあげようとは思わなかったんですか? たとえ地域猫であっても、ご飯をあげているんだったら、きちんとケアをしてあげるべきじゃないんですか?』と、聞きました。するとその人は、『それがこの子の運命ですから』とおっしゃっていました」
「運命」と言ってしまえば冷たいように感じるが、とはいえ誰もが家の中で猫を飼えるわけではないし、すべての猫を保護することは難しい。
地域猫は自由を謳歌しているように見えて、実は生命の危険にさらされていることも確か。
これらの矛盾を、保護ボランティアがなんとか是正しようとしているのが現状だ。
溝上氏も、「運命を変えたい」、「地域猫の最後はこうなってしまう、それを知ってほしい」と語る。
以前より動物愛護の精神が根付いてきた昨今だが、今こそ現状を受け止め、真剣に向き合うべきときなのかもしれない。
【写真】あまりの悲惨さに「思わず二度見」、誰にも助けてもらえなかった地域猫の実態
「地域猫」というのがあたかも最良の方法だと錯覚している動物愛護関係者がいることも確か。
この記事に述べられているように、「地域猫」は絶えず危険と隣り合わせになっている。
交通事故・虐待、更には「地域猫」として地域の方々が世話していたがいつのまにか誰も世話する者がいなくなり野良猫同然になってしまうような悲惨な猫たち、こういった現実の姿を目の当たりにしています。
「野良猫」が無くなるため、つまり無責任な捨てる人間を無くすために、入り口の部分に焦点を当て徹底して施策を講じていくことが動物愛護関係者としての使命です。
(byぬくもり)