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動物愛護法の『数値規制』とは

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動物愛護法の『数値規制』とは
 何が変わるの?私たちにできることは?

2020年7月18日(土) わんちゃんホンポ

◆「数値規制」ってなに?
日本では犬や猫をはじめとして様々な生き物がペットとして飼育されています。
これら生き物の繁殖や販売、飼育などについて管理方法などを定めた法律が「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)」。
動物愛護法は国会で定められる法律で、2019年6月に改正が行われました。
国会で定められる法律では規定しきれない詳細な事項は、内閣が定める「政令」や各省の大臣が定める「省令」によって決められていきます。
2019年6月の動物愛護法改正を受けて、細かい部分を定める省令も改正され2021年6月から施行されることになっています。
現在各方面で話題になっている「数値規制」とは、この省令で犬猫の繁殖業や販売業におけるケージのサイズ、メスの動物の出産回数などに対して具体的な数値を定めて規制していこうというものです。

◆環境省の案、議員連盟が提出した数値規制案

・「省令」改正の素案に改善要望多数
繁殖業者やペットショップなどでの動物の扱いを人道的で適切なものに強化していくために『動物愛護法』が改正されました。
それに合わせて環境省が『省令』を改正するため、2019年12月に詳細な数値などを含めた「改正動愛法施行規則」の素案が発表されました。
しかしこれは動物愛護法改正の意図を十分反映したものとは言えず、動物保護団体や国民からのパブリックコメントで改善の要望が多数寄せられました。

◆衆院議員の「議員連盟」による『数値規制案』
また繁殖業者やペットショップの劣悪環境への対応を求められていた衆院議員が、党派を超えてプロジェクトチーム「殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」を結成しました。
議員連盟は外国の事例なども調べて議論を重ねて作った数値規制案を今年(2020年)4月に環境省に提出しました。
・議員連盟の数値規制案
✔ケージの広さは小型犬で最低2平方メートル
✔ケージの中のベッドは動物の体長の1.5倍以上×体高の1.3倍以上
✔犬が起きている時間の50%以上は自由に運動スペースに出入りできる構造にする
✔動物の飼育数の上限は、繁殖業者では従業員1人当たり犬15匹、猫は25匹。ペットショップでは犬20匹、猫25匹とする。
✔犬猫共に出産は生涯に6回まで
※体長=立った時の胸から尻までの長さ、体高=立った時の足から肩までの高さ

◆ペット業界から出された『数値規制案』
環境省に対して要望を出したのは議員連盟だけではなく、ペットショップや繁殖業、ペットフード業界などが関連する『犬猫適正飼養推進協議会』も数値規制案を提出しました。
規制を受ける側の業界ですから、当然のように強い規制は避けようとします。
つまり動物に厳しい数値となっています。
・犬猫適正飼養推進協議会の数値規制案(主な部分)
✔ケージのサイズは、高さ=体高の1.3倍、幅=体長の1.1倍
✔動物の飼育数は従業員一人当たり50匹
✔動物を繁殖に使用するのは8歳まで

◆参考:海外の数値
ドイツ
ドイツでは体高50cm未満の小型犬で6平方メートル、管理者一人当たり犬10匹という議員連盟の案よりもさらに余裕のある数値です。
アメリカ
アメリカではケージの底面積は「犬の鼻先〜尻尾の付け根までの長さ+6インチ(15センチ)の2乗」を下限としています。
ビーグルくらいの犬なら0.45平方メートル。子犬が産まれた場合1匹あたり下限の面積の5%が必要となります。
ケージの高さは犬の頭の上に最低6インチ(15センチ)の空間が必要です。
これは寝るためのスペースで、運動するエリアは別に設けられます。

◆7月10日に環境省が示した新しい素案

こうして議員連盟や業界関連団体からの要望を受けて、環境省は7月10日に新しい素案を発表しました。
注目すべき主なポイントは以下のようなものです。

◆環境省による新しい素案(7/10発表)
✔ケージの広さは体長30センチの小型犬2匹の場合1.62平方メートル以上
✔ケージに入れっぱなしの場合、床面積体長の2倍×1.5倍、高さは体高の2倍以上を下限とし運動エリアに1日3時間以上出すことを義務づける
✔ケージの床に金網を使用することを禁止する
✔犬猫共に繁殖のため交配出来るのは6歳までとする
✔従業員一人当たりの飼育数は、繁殖業者では犬15匹、猫25匹。ペットショップでは犬20匹猫30匹を上限とする
業界団体の案よりも議員連盟の案の方にかなり近いもので、動物保護団体や動物を気にかける人々からは少し安心したという声が聞かれました。
数値規制がないため悪質な環境で繁殖や販売されていても取り締まりができずにいた以前の状態に比べると大きく前進したと言えます。

◆環境省の素案のままでは動物を守れない

環境省の素案は、多くの人が不安を抱いて予想していたよりは良い結果でした。
これは議員連盟や議員に働きかけた人々、環境省に直接メールやハガキで訴えかけた人々の努力の結果とも言えます。
しかしこの数値のままでは、まだまだ悪質な業者のぬけ道となる部分があります。
例えば繁殖のための交配は6歳までとされていますが、出産回数については規制がありません。
これでは犬は年に2回、猫では年に3回の出産をさせられることになります。
アメリカやヨーロッパの繁殖業者やホビーブリーダーへの規制では、母体への負担を考慮して出産は年1回というのが一般的です。
また犬のケージの広さでは、環境省案では「1つのケージに2匹」と書かれています。
これではケージの広さは実質半分ということになってしまいます。
環境省は今後もう一度検討会を開いて議論した上で、『中央環境審議会動物愛護部会』に最終的な案を報告するのだそうです。
つまりこの素案はまだ決定事項ではないということです。
引き続き、いろいろな場面で動物愛護法の数値規制の話題を見かけられると思います。
そのような時にはぜひ目を通して、犬や猫のためにできることがあれば協力してくださいね。

◆まとめ

動物愛護法改正に伴って環境省の省令も改正されること、改正には数値規制が含まれることについてご紹介しました。
環境省の素案は動物福祉を考慮した議員連盟の案に沿ったものでしたが、まだ決定ではないので気は抜けません。
悪質な繁殖業者やペットショップの実態を目にしたことがある人なら、具体的に数値を決めることや違反者を厳しく取り締まることの必要性に頷かれると思います。
ビジネスに使われる犬や猫も動物福祉に配慮した衛生的な環境で暮らし、引退後は家庭の幸せなペットとして生きられる、そんな社会にして行きたいですね。


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