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「珍獣ペット放棄」で生じる大問題

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イグアナ、フェレット、烏骨鶏……「珍獣ペット放棄」で生じる大問題 

2019年12月19日(木) 現代」ビジネス

◆「エキゾチックアニマル」のペットが増えている


写真:現代ビジネス 

2020年は子年。
きっと年始には、ネズミ系の小動物たちのかわいい映像がメディアでも数多く配信されることだろう。
カピバラやプレーリードッグなどもネズミと同じ仲間で、最近では、ペットとして飼育しているケースもあるという。
こういったちょっと変わった伴侶動物は“エキゾチックアニマル”と呼ばれている。
ネズミやリスなどの齧歯目だけでなく、サル(霊長類)や爬虫類、両生類などもこう呼ばれている。
届け出がないため正確な数値はわからないが、動物病院の診療依頼は増えていて、飼育数はかなり増加していると推測されている。
また、ペットとして人気を集めていた「コツメカワウソ」と「ビロードカワウソ」は、絶滅の危機にあるとして、8月にワシントン条約の締約国会議で、商業目的での国際取り引きが原則禁止され、11月26日からは、国への登録がないと売買や譲渡が禁止されることとなった。
動物番組やアニマル系の漫画などで、変わった動物がクローズアップされることが増え、かわいい姿に飼いたいと思う人も増えているが、それと比例するように、飼育放棄も後を絶たない。
犬猫以外の保護がここ数年増えていると実感する特定非営利活動法人ランコントレ・ミグノンの友森玲子さんの経験とともに、変わった動物を飼う難しさをいっしょに考えてみたいと思う。

 
ウサギやモルモットはこんな感じだが……。photo/iStock 

◆今度は何!? 警察からの電話
「お世話になっております、○○警察です」
渋谷区・千駄ヶ谷にあるミグノンのシェルターには、定期的に警察署の落とし物係から電話がかかってくる。
電話を取り次いだスタッフの不審げな顔を横目に、黙って受話器を受け取る。
「今回は何ですか?」
警察からの電話は、ほぼ100%動物の受け入れの話だ。
しかも、動物は犬猫ではない。
動物愛護相談センターでは受け入れていない“エキゾチックアニマル”が捨てられ、警察へ届けられると、うちに相談の連絡が来るのだ。
受け入れるには限界があるため、アドバイスだけして断ることも多いが、それもできずに預かることもある。
「今回は何ですか? どんな生き物ですか?」と私が尋ねると、「それがですね、正体不明の生き物なんです」と言う。
一体どんな動物が警察に届いたのか?
しかし、うちのシェルターも満員状態だ。
必要以上に動物を預かると正しいケアができなくなり、動物たちに悪影響が出てしまうこともある。
だから、むやみに預かることはできないのだ。
「そちらで何とかしてください」と断ると、「でも、餌も何を与えたらいいか分からなので見に来ていただけませんか?」と電話口の警察官もかなり困っている様子だ。
動物の種類が特定できなければ、与える餌も判明しない。
今は仕事中で伺えないので、特徴を教えて欲しいと伝えた。
すると――。
「ウサギよりも小さくて、ハムスターより大きいです」という。
「チンチラかモルモットでは?」と私が言うと、「いいえ、その2種類の動物は知っていますが、ここにいる動物はまったく違います」と。
その生き物は何?
これは連想ゲーム?
まるでクイズでも解いているようだ。
次に身体の具体的な特徴を聞くと、「見た目はカツラが落ちているみたいで全身の毛が長く、とても速く動きます」というではないか。
なんだかさっぱりわからない。
電話の説明では埓が明かないことがわかり、途中だった仕事をしばし中断して、警察署に向かった。

 
正体不明動物とされていたモルモットの「守本わけめ」ちゃん。個性的なルックス。写真提供/ミグノン

◆警察署にいた動物は果たして――!?
警察署につくと、ケージの中にいたのは、被毛が長く、地面に着くほどになる、おそらく“ぺルビアン”という品種のモルモットだった。
通常、モルモットといえば、ハムスターをずんぐり丸くさせたような短毛の印象がある。
ここまで毛が長いと、モルモット好きではければ、なかなか認識できないだろう。
ケージの中に餌が置いてある。
何を与えたのか聞くと「わからなかったので、とりあえずドッグフードをあげてみました」と担当の警察官は言う。
しかし、モルモットは草食動物だ。
ラビットフードか野菜を与えるように、と指導したものが、結局は扱いに困った警察署員に泣きつかれてしまい、シェルターに引き取って帰ることになった。
モルモットは、「守本わけめ」と命名した(ミグノンでは友森さん自身が、保護された動物たちに個性的な名前を付けることも有名だ)。
わけめは、個性的な風貌からシェルターでも人気者になった。 

 
ズラヘアで人気者だったわけめちゃん。闘病の末、今夏亡くなった。写真提供/ミグノン

◆犬猫以上に医療費やケアには手間がかかる
それにしてもここ数年、あまりに多様な動物が捨てられたり、飼い主の不注意で逃げたりし、保護されている。
私のシェルターにも、うずら、鶏、烏骨鶏、イグアナ、亀、フェレット、ウサギなど、犬猫でない動物、いわゆるエキゾチックアニマルの相談も増えている。
もちろん、犬猫以外のエキゾチックアニマルも安易に殺処分すべきではないと私は思う。
が、現実として警察でも保護団体でも珍しい動物の受け入れに備えているところは少なく、その余裕はない。
保護をした後に治療が必要な場合も、犬や猫の場合にはボランティアの一環として保護団体割引をしてくれる動物病院はあるが、エキゾチックアニマルの場合、診られる病院も少ない。
ボランティア協力の対応不可な動物を受け入れた場合は莫大な医療費の負担もかかってしまうのだ。
先ほど紹介したモルモットのわけめは、保護してから数年間、我が家でお世話をしていた。
去年の12月に甲高い悲鳴をあげて突然倒れ、痙攣発作を繰り返した。
すぐにエキゾチックアニマルに詳しい先生に指示を仰いだところ、胃腸に“うっ滞”の症状が出ていた。
うっ滞とは草食動物に多い病気で、消化器官の動きが悪くなる症状だ。
「モルモットのうっ滞はウサギよりも激しい痛みを伴いショックで死ぬこともある、第一にそれを疑うべきだ」と獣医師に言われ、すぐに検査をして、鎮痛剤などを使用しながら治療を開始した。
毎日の点滴や注射に合わせて、数時間おきの流動食の強制給餌を行う。
それまでモルモットは、与えられたものは何でも喜んで食べ、人に甘えたり他の動物に対しても寛容で適度な社会性もあり、大きさも手頃でとても飼いやすい生き物だと思っていた。
しかし、病気になれば犬猫以上に、強制給餌に時間を割かれる日々が始まった。
仕事にも連れて行き、ケアを続けて、一時は食欲が出て元気な様子をみせてくれた。
が、保護したときにすでに高齢であったようで、体重は想像以上には増えず、7ヵ月闘病の末今年の夏に亡くなった。
保護した動物の中で、最も飼いやすいと思っていたモルモットだったが、治療にかかった時間や手間、医療費を考えても、簡単に飼える生き物は存在しないのだと痛感した。
以前、そのモルモットを譲渡してほしいと、学生さんから申し込みがあった。
しかし、「病気になったときに学生では責任が取れないから」と結局譲渡をお断りした。
もしもあのとき、彼女にわけめを譲渡していたら、多額の治療費を両親に借り、通院のために学校を早退し、強制給餌のために寝不足になり……と苦労しただろう。
これはエキゾチックアニマルだけではないが、可愛いから、簡単そうだから、と安易に動物を飼うことで、飼い主の家族も飼われる動物も苦労を強いられることもあるのだ。 

◆学生時代に経験したフェレットとの思い出
学生には飼育は難しい、と言う私自身も、実は学生時代にフェレットを飼っていた。
叔母が犬の散歩中に、ゴミ捨て場でフェレットを見つけ、犬が放さなくなってしまい連れ帰ってきた。
飼い主を探したが現れず、叔母の家には犬がいるので飼えず、動物好きの私のところにやってきたのだ。
最初に必要なケージなどの飼育用品は母が買い求め、それ以外のフードやトイレ用品、おもちゃなどは私が購うことになった。
フェレット用のフードは高かったが、食べる量も限られているので、他の出費を削り質の良いものを調べ買って与えていた。
飼い始めてから数年が経過した頃、フェレットが何度もトイレへ行くのに気づいた。
急いで、当時アルバイトしていた動物病院へ連れて行った。
検査で下腹部に腫瘍ができて尿道を圧迫していることがわかり、手術も困難であろうと点滴などの対症療法をすることになった。
点滴や血液検査や処置などで治療費はかさんでいった。
バイトの優遇で治療費はかなり安くしてもらえていたが、それでも学生バイトの時給では厳しく、毎月1万円だけ給与から天引きしてもらうことにした。
最後は小さすぎて尿道に入るカテーテルが存在しないため、膀胱にお腹から注射針を刺して尿を抜いてあげることになった。
自宅で嫌がるフェレットを母親に保定させ、膀胱を片手で把握しながら針を刺して素早くシリンジで抜き取る作業を尿が溜まりすぎる前に、朝晩と休まず続けなければならなかった。
当然、友達と夜遊びにも行けなくなった。
そんな経験もあり、学生への譲渡には慎重になってしまうのだ。 


イグアナの保護依頼も増えている。7月に警察経由できた「モリアナ」。写真提供/ミグノン

◆エゴになってない!?その環境、生き物にとって快適ですか!?
確かに、エキゾチックアニマルは、犬や猫とは違う珍しさがあったり、おもしろさも可愛らしさもある。
また、エキゾチックアニマルの普及には住宅事情も大きく関係している。
日本ではほとんどの集合住宅が犬猫不可だ。
「犬や猫を飼えないなら」とエキゾチックアニマルに興味を持つ人も多い。
ペットショップでは、多くの動物を効率よく展示販売するために非常に狭小なケージに押し込んで飼育している。
それをみて、「このスペースで飼えて、散歩もいらないなら」と購入してしまう人も多いと聞く。
犬や猫のように、鳴かないからと選ばれる品種も多い。
飼う側に知識なく、そういった視点だけで選ばれてしまったエキゾチックアニマルは、狭いケージに生涯閉じ込められて、その生を終えてしまうこともあるのだ。
さらに、エキゾチックアニマルで考えなければいけないのは、適正な飼育環境であるか、ということだ。
もともと日本が原産でない動物にとって、日本の気候、住宅の中という環境は過酷だ。
現在、我が家では、下町の警察署から受け入れたイグアナとコザクラインコを預かっている。
彼らがいるリビングのエアコンは、24時間32℃に設定され、それでも寒がるためにそれぞれにヒーターやライトなどの保温器具を入れている。
人は真冬なのにノースリーブで、それでも蒸し暑くて、リビングで寛ぐことが減ってしまった。
人の適正温度で設定してしまうと、イグアナもインコもケージのヒーターのところから微動だにできない状態になってしまう。
それは、あまりにかわいそうなので、好きなところに移動できる人間が我慢をするという生活でどうにか暮らしている感じだ。
彼らに環境を合わせてやるしかないのだ。
彼らからしてみれば、いきなり誘拐されて南極にでも住んでいる感じなのだろう。


写真:現代ビジネス

◆万が一のとき、生き物を不幸にしてしまう可能性も
日々の適正な環境の整備はもちろん、治療や看取りといった問題もあるが、非常時の備えも考えておかねばならない。
犬猫だけでも避難が大変なのに、温度管理や取り扱いの難しい動物を飼う場合には、停電したらどうするかは深刻な問題だ。
また、地震や水害で家にいられなくなる場合はどうするか考えておかなくてはいけない。
犬猫でも苦手な方はいる中で、変わった生き物はその確率は高くなり、避難先が確保できないこともあるだろう。
さらに、逃してしまって近隣へ被害があった場合の賠償問題が生じる可能性もある。
災害時に責任を取れるのか、病気になったら医療費を払えるのか、そして、もっとも大事なのは、その生き物を幸せにできるのか、ということだ。
次第に増えているエキゾテックアニマルの放棄に直面するたび、可愛い、珍しい、一度飼ってみたかったからだけでなく、その生き物にとって、自分と暮らすことが最良であるのか、飼う前に一度立ち止まって考えてみてほしいと思う。
クリスマスやお正月は、ペットを購入しやすいシーズンでもあるからこそ、願ってやまないのだ。
友森 玲子

◆友森さんが主宰する保護団体のイベントが開催されます。
「写真だけでは伝えきれない保護動物たちのパーソナリティをより立体的に表現するため、写真だけでなく音も展示物としたい」という想いから保護動物1頭1頭をイメージして、カクバリズム代表の角張氏がセレクトしたレコードをかけて、聴くことができる「聴く写真展」が初めて開催されます。
【写真】可愛いけど、どうやって飼う? 友森さんの前に現れた珍獣たち

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