ペットショップで売れ残った犬・猫の譲渡を事業に
「家族をみつけてあげたい」
2019年6月16日(日) sippo(朝日新聞)
病気やけがなどの理由で売れなかった子犬などを引き取り、飼い主を探して譲渡する事業をする「ペッツホップ」(根本寿彦氏撮影)
「犬や猫の役に立てている実感が支え」 田中けいしんさん
2004年に、最初はブリーダーを始め、その後ペットショップ経営に転じました。
ペットブームの後押しもあって、仕入れるとすぐ買い手が決まりました。
一方で近年、動物愛護の気運が高まり、ペットショップへの逆風が強まってきました。
SNSの書き込みを見ていると、ペットショップで犬猫を買った人がたたかれることも。
「ペットショップ=悪」という世論が浸透してきたのを感じ、この2、3年は悶々(もんもん)としました。
ペットショップでペットを迎えること自体が悪ではなく、ペットの流通に問題があるのだとしたら――。
その問題を解決していくことに自分の役割を見いだそうと模索しました。
17年12月、販売をやめ、譲渡事業に転換しました。
オークション(競り市)の経営者らから「はじかれる子がけっこういる」という話を聞くなどしていたので、そういう子たちに家族を見つけてあげる事業が必要だと気付いたのです。
オークションで買い手がつかなかった子、ペットショップが仕入れたけど病気やけが、先天的な異常などの「欠点」が見つかって売れない子などを引き取り、一般の飼い主に譲渡しています。
ブリーダーの繁殖引退犬を受け入れることもあります。
生体販売ビジネスでは、たとえば10匹生まれてもすべての子が売れるわけではなく、何匹かは欠点があるなどして、「どこか」へ行ってしまう。
こういう子が出てくることは、生き物を取り扱っている以上避けては通れません。
だから僕が、そういう子たちにも家族を見つけてあげたい。
それがいまの事業の理念です。
この活動が広まって保護犬・保護猫を迎える人が増えれば、繁殖、販売される子犬・子猫を適正な数に収斂(しゅうれん)していけるとも思っています。
ボランティアではないので、寄付金はもらいません。
犬や猫を引き取ってもらう方に、うちから一定程度のペットフードを購入してもらうことで、運営資金を得ています。
始めて1年あまりで、約350匹がもらわれていきました。
驚いたのは、欠点のある子でも、たくさんの人が引き取ろうと手をあげ、喜んでもらっていってくれることです。
収入はがくんと減って厳しいですが、犬や猫、飼い主のために役に立てている実感が支えになっています。