“小さな命”安らかに 保護の犬や猫、自宅で25体安置 元原発作業員
2019年1月25日(金) 毎日新聞
棚に並ぶ小さな骨つぼ。
福島第1原発事故による避難で飼い主と引き離されるなどして死んだ犬や猫25体が、福島県浪江町の赤間徹さん(56)宅に安置されている。
「早く飼い主が見つかり、安らかに埋葬されてほしい」
赤間徹さん(右)の自宅に安置される犬や猫の骨つぼ=福島県浪江町で、宮武祐希撮影
赤間さんは元原発作業員。
高校卒業後、地元の建設会社に就職し、保守点検や溶接などに従事した。
「生活を支えてくれる原発で働くことは自然な流れ」だったが、その暮らしを一変させる事故が起きた。
2次避難の際、飼い主が避難所に向かうバスに乗せられず放した犬や猫たちが雪の降る中、道いっぱいに広がり消えゆく光景が目に焼き付いた。
「自分が造ってきた原発の事故が、動物たちの生活まで大きく変えてしまった」。
事故後も第1原発で廃炉作業に携わる傍ら、「せめてもの償い」と町内で野生化した犬や猫80匹以上を自宅の敷地で保護。
写真を自身のホームページに掲載し、飼い主を捜している。
しかし、見つかることはほとんどなく、見つかっても引き取ってもらえず死んだ犬猫も。
「人の暮らしを豊かにしてくれた動物が切り捨てられていくことに耐えられない。命あるものを最後まで責任を持って世話していきたい」
【宮武祐希】
「原発支えた」自責、犬猫1000匹の命救う 福島・浪江の建設会社経営者
2018年5月30日 東京新聞夕刊
東京電力福島第一原発事故で全町避難を強いられた福島県浪江町で、建設業を営む赤間徹さん(55)はこの7年、飼い主とはぐれたり事故後に生まれた犬や猫を保護し、新たな飼い主らに引き渡してきた。
その数、約1000匹。
事故がなければ飼われ続けていたはずの動物を見捨てられなかった。
根底には「自分は原発で食ってきたから」という自責の念がある。
(内田淳二)
自宅で保護している犬をなでる赤間徹さん=福島県浪江町で
常磐自動車道浪江インターに近い人けのない集落に、犬や猫の鳴き声でにぎやかな自宅がある。
犬小屋で寝ていた雑種の大型犬「マック」が赤間さんの声を聞き、大きなあくびをした。
6年前の秋、福島第一原発がある双葉町で、民家の庭先に迷い込んでいた。
当初はけがや皮膚病で毛が抜け、やせこけていた。
元の飼い主は避難先の事情で引き取れないといい、ここで暮らしている。
赤間さんは18歳で福島第一原発の配管などの溶接を始めた。
47歳で建設会社を起こし、原発の維持管理に関わってきた。
子どものころから犬が好きで、事故前には浪江町の自宅に14匹を保護。
事故後は廃炉作業に携わりながら、避難先の郡山市からの車での行き帰りの途中、犬や猫を見つけると保護し、愛護団体やインターネットを通じて飼い主を探した。
現在は犬22匹、猫60匹と暮らす。
一昨年11月に夜も自宅に滞在できる準備宿泊が始まるまで、毎日通って世話をした。
えさ代に加え、車の燃料代がかさんだ。
東電からの賠償金では間に合わず、貯金を取り崩した。
知り合いから「何で他人の犬猫のためにお金使ってんだ」と不思議がられても、やめなかった。
「自分はずっと原発で食ってきた。その原発の事故さえなければ、動物たちは人と一緒に暮らせていたのに…」という思いがある。
廃炉に携わるのも、同じ自責の念から。
「除染の方が危険も少ないし割もいいんだけど」。
原子炉近くで、放射線を防ぐ鉛のベストを着ても5分しか作業できない現場も経験した。
ただ、会社は開店休業中。
事故前に20人いた従業員は各地に避難し、残った6人も除染をする会社などに移った。
自宅は帰還困難区域に近く、放射能への不安から妻(59)や3人の子は今も避難先にいるため、一人暮らしが続いている。
「一緒にやっぺ」と言ってくれた獣医師ら仲間たちが支えだった。
「あなたが倒れたら大変。何でも送るから」と、何度も食料を送ってくれた支援者もいる。
「この7年、悪いことばかりではなかった。事故前には出会えなかった人たちと出会えた。これからもできることをやっていきたい」。
顔をほころばせ、犬と猫をそっとなでた。
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