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保護犬猫譲渡の条件

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 東京都にある一般社団法人ランコントレ・ミグノンの代表理事の友森玲子さん。
この方の記事は幾度かブログに載せました。
長い記事ですが非常に重要かつ有意義な内容が書かれています。
私は、常々この方の記事内容に注目し記事が出ていると意識して目を通しています。
勿論、ホームページもたびたび拝見しています。
私たちが行っている動物愛護活動においてとても勉強になる内容であり、内容に奥深みがありますので、皆さん是非とも最後まで読んでくださいね。
(byぬくもり)


保護犬猫「独身男性、60歳以上には譲渡できません」の真相

2018年11月3日(土) 現代ビジネス



週末を中心に各地で開催されることが増えた保護犬や保護猫の譲渡会。
夏には、新宿の大手百貨店の京王百貨店が『みんなイヌ みんなネコ』というイベントで譲渡会を行った。
数年前に比べると驚くほど、開催数、開催する動物愛護団体が増加し、小さな規模で行っているものも含めると、その数は把握できないほどだ。
そのおかげが「ペットショップではなく保護犬や保護猫を」という選択も増えているが、前回の記事でご紹介したように、ペットショップで購入する人のほうが圧倒的に多い。
その理由のひとつとして「保護犬・保護猫の譲渡条件の厳しさ」をあげる人は少なくない。
今夏、人気YouTuberのHIKAKIN氏がペットショップで猫を購入したことが炎上した際にも、「影響力ある人は保護猫を飼うべき」、「独身男性は保護猫を譲渡することができない」、「厳しすぎる譲渡条件がゆえにペットショップしか選択肢がない」といった意見がtwitterでも多かった。
確かに、各団体が掲げている譲渡条件は厳しいものもある。
独身や賃貸にはクリアできない条件も多い。
なぜこういった譲渡条件が存在するのか。
10年以上、多くの動物たちの譲渡を行っている、一般社団法人ランコントレ・ミグノンの友森玲子さんに、動物譲渡の現状を教えてもらった。


ミグノンでも月に2回譲渡会を開催。預かりボランティアにケアされている保護犬・猫が一同に集まる。撮影/山内信也

保護動物と譲渡条件の関係とは!?
ここ1~2年、動物譲渡の環境は大きく変わってきた。
私が活動している保護団体でも、毎月第2日曜日と第4土曜日に譲渡会を開催しているが、以前よりも問い合わせや来場される方の数は倍近く増加している。
また、メディアの取材も以前は、犬猫系などの動物雑誌や番組が多かったが、最近では、一般雑誌で「保護動物の記事を作りたい」、「譲渡会って何? という取材をしたい」という依頼も続いている。
また、譲渡会を絡めたイベント開催のお話をいただくことも増えている。
しかし、過去に比べれば譲渡数は増加しているが、増え続けるペットショップに迫る勢い、というわけではない。
なぜ、譲渡数が飛躍的に伸びないのか。
動物愛護団体からの譲渡をためらう理由として、もっともよく聞くのが「譲渡条件の厳しさ」だ。
最初に、譲渡条件について考えさせられる私が出会った事例をいくつか紹介しよう。

◆「仔犬じゃなきゃ嫌」という老夫婦
犬を看取ったばかりの老夫婦が「かわいそうな犬を助けたい」と譲渡会にやってきた。
譲渡条件で60歳以上は難しいと話したところ、独立した娘さんが保証人になる、ということで譲渡することになった。
とはいえ、犬にとって飼い主がコロコロ変わることは望ましくない。
また、娘さんの人生もあるだろう。
娘頼みだけでなく、自分たちで最後まで看取れるよう中高年の穏やかな犬の中から譲渡を勧めた。
ところが、「最後に飼う犬になるので若くないと嫌だ、仔犬がいい」と折り合いがつかず、結局譲渡に至らず帰っていった。
後日、その老夫婦から連絡が来た。
あの後、ペットショップで柴犬の仔犬を購入したという。
ところが、四六時中鳴いてうるさい。
寝不足で自分たちの体調が悪くなったのですぐに引き取ってほしいというのだ。
こちらでは、動物愛護センターからの受け入れで手一杯なのと、そもそも若い犬は年齢的に譲渡できない、と説明したはずなので引き取らない、と拒否をした。
そんな無責任な理由では私たちは受け入れられないので、娘さんに預けるべきだと伝えたところ、吠える、噛む、物を齧る、トイレを覚えないで、仕事の忙しい娘にはとても頼めない、とのこと。
仔犬には罪はないがこういった条件で引き取ることはできないので、ドッグトレーナーを紹介するので娘さんが飼うしかないと話をした。

◆譲渡条件をクリアしても出戻ってきた犬
40代の女性にチワワを譲渡したケースを紹介しよう。
女性は独身だったため、犬を飼える実家を保証人に立ててもらい、小型犬1頭ならいつでも預けられるので大丈夫、ということで譲渡に進むことになった。
日中は仕事で留守番時間も長いので、比較的マイペースな7歳の成犬に決まった。
ところが譲渡して数年経過し彼女から連絡があった。
「失業して経済的に厳しいので、譲り受けた犬を手放したい」という。
飼えなくなったら実家に託す約束だったが、その後実家環境が変わり、親から兄弟に世帯主は変わっていた。
どうも話から兄弟は犬を飼育を望んでない様子だ。
このまま犬が行った場合に幸せになれる保証がないため、再度譲渡先を探すことに。
でも、最初の譲渡の頃よりも犬の年齢が上がっていたため、次の譲渡先を探すのにはとても時間がかかってしまった。
彼女は非常に慎重に、譲渡条件も理解をして犬を引き取ってくれていた。
でも、これが動物と暮らす現実でもあるのだ。

今、犬を飼いたい、猫を飼いたいと思っているときは、仕事もあり、家族もいて、健康であっても、それが続く保証はない。
「そんなことを言ったら、犬と猫と暮らすことなんて誰もできないじゃないか」と言われるかもしれないが、突き詰めると究極はそうなのかもしれない。
「自分の今の状況が続くとは限らない」ということを理解して、動物を飼うことを決める、というプロセスが今の日本では不足していると感じている。


譲渡会の開催団体ごとに規約は異なるが、譲渡規約設け、きちんと飼育できるか書面でやり取りするところも多い。

飼育放棄した原因が「譲渡条件」
ペットフード協会の2017年の調査によると、動物愛護団体など保護犬の存在を知りながらもそこから入手しなかった理由は、「審査手続きがわかりにくく面倒になったため」が24.0%もいることがわかった。
他に、「高齢のため」13.7%が多かった。
動物愛護団体の譲渡の条件の一例を挙げると下記の部分が必須な団体は少なくない。
私が運営する団体でも活用している条件でもある。
 ・60歳以上のみの世帯へは譲渡しない
 ・継続した収入源のない家庭へは譲渡しない
 ・単身者の場合は血縁者の後見人が必要
 他にも細かな条件を出しているところもあるが、基本は上記の3点が重要と言われている。
はたして、この3つの条件は、厳しすぎるのであろうか?
もちろん、上記の条件の方でも動物を大事にし、生涯責任を持って育ててくれる方はいるのはわかっている。
こういった条件をつけることを差別的だと思われる方がいるのもわかる。
が、これらの条件は漠然と決まったのではなく、動物を飼育放棄する人から放棄した理由を聞き取り、その理由で上位にあがったものが選ばれているのだ。
年齢制限があるのは、動物も長生きをするからだ。
20年以上長生きする犬猫も増えていて、60歳で仔犬や仔猫を迎えれば、80歳のときに犬猫も老後を迎える。
同じときに人間も動物も病気が増え、介護が必要になる。
そういった状況を考え、私の団体では60歳を制限としている。
また、収入源に関しては説明するまでもないだろう。
動物を飼育するには想像以上にお金もかかる。
病気になったときに病院に連れていくことができるだけの収入は必須なのだ。
単身者は、ネットなどでも話題になる部分だが、万が一のセフティーネット(後見人)は必要だと思っている。
飼い主に万が一何かあったときに彼らは生きてはいかれないからだ。
ネットでは、「独身男性が譲渡できない」と話題になるが、うちでは、性別は制限していない。
ただ、独身男性の譲渡後の動物虐待事件などが続くことから警戒している団体もいるのだ。
私たちは、殺処分を減らすため動物を一時的に保護し、それぞれの個体に必要な治療を行い、人と上手に暮らせるように躾も行っている。
二度と不幸な目に合わないように、幸せに暮らすために人も動物も努力をしている。
それなのに、再び放棄されたり、十分な世話を受けられない環境に送り出すのは、言い方が悪いが、穴の空いた袋にゴミを拾っているのと同じになってしまう。
動物保護は、保護して譲渡して終わりなのではなく、譲渡した先で安全に暮らせることまで考えなくてはいけないからだ。


慎重な譲渡が結局は殺処分を減らすことになる。写真/山内信也譲渡条件がクリアできても、動物との相性などをみるためにトライアル期間も設けている。

譲渡条件は「責任」を考えるきっかけ
ここまで読んでくださった方の中には、「結局、譲渡条件は厳しく、保護動物はあきらめろということなのか・・・」と思われた人もいるかもしれない。
でも、譲渡会でこんな方もいた。
数年前に、譲渡会に来てくれた男性で、独身だった男性は仕事で留守がちだった。
日々の世話や病気になったときなど、譲渡にあたり話し合ったところ、「今は迎えるべきではないのかもしれませんね」と残念ながら譲渡条件が合わず、お断りした。
ところが、数年後に「結婚をして落ち着いたので、あたらめて猫を迎えたいと思う」と夫婦揃って譲渡会に来てくれた。
保護活動を長く続けてきてよかったとしみじみ感じる瞬間だ。
譲渡条件が合わず断ってしまうと、お互いに少し気まずい雰囲気になるここともある。
でも、最近は理解してくれる方も増え、「条件が整ったら、ぜひ来ます」と笑顔で帰られる方も増えている。
「独身だと譲渡できないからペットショップ」という話ではなく、保護動物かペットショップの論争よりも先に、今自分は動物を飼うのに適したタイミングなのか慎重に考えるべきだと思う。
これは保護動物だけでなく、ペットショップで購入した動物であっても同じだ。
犬も猫もご長寿が増えた。
動物たちが年を取れば、人間と同じように医療費もかかり、介護に時間も使うことになる。
犬や猫は自分で歩いて病院にはいかない。
生涯人間がケアしていかねばならないのだ。
譲渡条件はそういったことを“考えるきっかけ”と思ってほしい。
逆を言えば、譲渡条件が少し揃ってなくても、このあたりの問題を真剣に考え、何かあったときのフォロー体制が出来ている人であれば、譲渡されることも意外と多くある。
譲渡条件だけ見て「めんどくさい」と切り捨てず、その先にあるものを知ってほしいと思うのだ。

しつけも健康面もメリットが大きい保護動物
もうひとつ、動物譲渡を阻む誤解がある。
それは、「保護犬や保護猫は飼いにくい、不健康である」という噂だ。
確かに、劣悪な環境で飼育放棄された犬や猫の中には心に大きな傷を受けるものもいる。
また、しつけができないことを理由に放棄され、保護したときにはトイレトレーニングすら出来てないケースもある。
でも、保護された犬猫は、団体施設やボランティア家族の中で、トイレトレーニングや散歩(犬の場合)、歯磨きなどの練習もする。
多くの愛護団体は、二度と放棄されないように、人との関係性が築ける状態になってから譲渡している。
ペットショップはしつけされてない状態なので、保護動物のほうが圧倒的に飼育はしやすい。
また、ペットショップでは通常行われない血液検査や各種健康診断、不妊去勢手術、マイクロチップ挿入などの医療行為、ワクチン接種なども行われてから譲渡される。
保護動物は弱い、不健康である、飼いにくいという先入観は捨てて、自分のライフスタイルに合う動物を探してほしいと思う。
動物との暮らしは、他では得られない笑顔や喜びも大きい。
動物と暮らしたいと思う気持ちに罪はない。
だた、自力で生きて行くことのできないペットとして飼われている動物は、飼われた家庭や飼い主が生涯のすべてだ。
自分と20年間生活をして幸せだろうか、と私自身も常に問いかけたいと思っている。
友森 玲子


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