沖縄から徳島、そして大阪へ
7年かかって幸せをつかんだ犬
2018年11月12日(月) sippo(朝日新聞)
チャンドラ
同じ保護犬でも、もらわれやすい子と、もらわれにくい子がいる。
譲渡会や保護施設の中で、元気で人懐っこい子には譲渡希望が多く、臆病でおとなしい子は残るケースが多い。
さらに年齢が上がると、もらわれにくくなる。
7歳まで保護施設で過ごし、ようやく引き取られ幸せになった犬に会いに行った。
その犬はボーダーコリーのような可愛らしいオスの雑種。
沖縄で保護され、保健所にいたところを引き出されて、徳島の保護施設に移った。
だが3年半の間、譲渡先が決まらず、2017年末に大阪の保護団体「ARK」に移動してきたという。
シェルターにいた頃は、怖がりで、ケージの隅に引っこんでしまうような一面もあったが、スタッフやほかの犬とコミュニケーションすることはできた。
人を噛んだり吠えたりすることもなく、おとなしい犬だったが、当時すでに7歳。
その年齢のため、なかなか譲渡先が決まらなかった。
シェルターでは5歳以上になると、なかなか譲渡が決まらないという。
ボランティアで出会った犬
大阪に住む山畑さんは犬好きで、テレビで保護団体ARKの存在を知り、保護犬たちの散歩や遊び相手をする「お散歩ボランティア」になった。
ボランティアとして、その犬に出会い、何度か触れ合ううちに「この子だ!」と感じたという。
犬を引き取るなら7歳以上の成犬で、抱っこができる大きさの中型のミックス犬がいいと思っていたそうだ。
「成犬の場合、年齢が高くなればなるほど、もらわれにくいので、私はあえて成犬を選んでいます。成犬のほうが、ある程度性格が完成されているので、相性もよく分かります。子犬に比べて、落ち着いていて飼いやすいとも思うんです。子犬の場合、育てる楽しさもありますが、難しい面もありますよね。それに、ミックス犬は世界でたった1匹の『オンリーワン』なので、ミックス犬がいいんです」
ママに抱きしめられて
ゆっくりゆっくり日進月歩
山畑さんは2018年5月にその犬を引き取り、「チャンドラ」と名付けた。
手のかからない犬だったが、家にやって来た時、トイレに行かず、丸1日ご飯を食べずに過ごしたという。
沖縄、徳島、大阪と保護施設の移動を重ねたからなのか、都会にある山畑さん宅に来てから、環境の変化に適応するのはなかなか難しいようだった。
車や自転車、人の往来が少ない夜になって、やっと外に連れ出したが、それでもおっかなびっくりで、キョロキョロしていた。
それでもあせらず、毎日少しずつ散歩の距離を伸ばしていった。
家でもケージの中にこもっていたが、半年たった今、やっと少しおちゃめな一面も見えてきたそうだ。
「環境にだんだん適応して、少しずつだけど心を開いていってくれる。そんな日々の成長が嬉しいんです。食べて、寝て、水を飲むことができたら、とりあえず大丈夫なんじゃないかなと思っています。まだまだ時間がかかるでしょうけど、毎日を楽しみたいと思います」
山畑さんはチャンドラを愛おしそうに見つめて、そう語った。
【写真特集】7年かかって幸せをつかんだ犬