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“死んだら買い足せばいい”、猫カフェモカ

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“死んだら買い足せばいい”
――猫カフェ最大手「モカ」で虐待発覚 ウイルス感染で次々と・・・

2018年10月8日(月) ディリー新潮

ウイルス蔓延で50匹死亡! 猫カフェ最大手「モカ」の子猫虐待
ブームに便乗商法はつきものだ。
猫ブームに猫カフェが流行るのは不思議でないし、猫に客が癒されるならそれもいい。
しかし、癒し手たる猫たちが、その実、虐待に苦しめられ、次々に死んでいるとしたら・・・。
癒しの光景が一転、おぞましく見えてくるのである。
 ***

猫カフェがブーム

最近、猫が強い。
猫が進んで競争に参加しているわけではないけれど、もはや犬は敵ではないらしい。
ペットフード協会によれば昨年、猫の飼育数は、犬の892万匹に対して952万匹強。
1994年に調査が始まって以来、初めて犬のそれを上回ったという。
室内で飼いやすい、散歩が要らない、鳴き声が小さいなど、ニッポンの“ウサギ小屋”にはうってつけである。
その前に、もちろんカワイイ。
だが、人気が出すぎると酷使されて、身体にも精神にも変調を来たしうるのは、人間のアイドルも、猫も、事情が変わらない――という話はおいおいするとしよう。
さて、昨今の猫好きは恵まれていて、自分で飼わなくても猫と触れ合える。
たとえば、いわゆる「ドッグカフェ」は飼い犬を同伴できるカフェだが、「猫カフェ」はふらっと訪れて、そこにいる猫たちと存分に戯れることができる。
その最大手が「モカ」である。
2015年2月に開店した池袋西口店を皮切りに、渋谷や原宿などに次々とオープンさせ、いまでは名古屋や京都、大阪をふくむ13店を展開。
「王様のブランチ」をはじめテレビ番組でも頻繁に取り上げられ、AKB48のメンバーも、訪れては、その様子をSNSにアップしている。

〈猫パルボウイルスがまん延〉
試みに「モカ」原宿竹下通り店を訪れた。
強い色彩の部屋と、白で統一された部屋に分かれ、合わせて学校の教室より少し狭い程度だろうか。
“接客”する20匹ほどの猫のかわいさは掲載の写真の通り。
客が続々と訪れ、すぐに30人ほどがあふれ返った。
猫の“ホステス”や“ホスト”はマイペースで、客が500円のおやつを買うと、接客を放棄して一斉に集まってくる。
場所柄か、客の3人に1人は外国人観光客。
料金は10分200円で、ドリンクバー代が別途350円。
記者は2人で2時間滞在し、5千円ほど支払った。
ところで、「モカ」といえば、運営会社のケイアイコーポレーションが8月2日、翌日から関東の全店を臨時休業すると発表し、話題になったのが記憶に新しい。
きっかけは、SNSに、内部の人のやりとりと思しき、〈猫パルボウイルスがまん延していて、4日間で4匹死んだ〉〈他の猫も感染している疑いがあるのに、社長が営業を中止してくれず〉といった書き込みや画像が投稿されたことだ。
同社の説明では、猫パルボウイルス(以下、パルボ)の感染症が、立川店で最初に確認されたのは7月26日深夜。
感染を公表せずに営業を続けていたわけで、そのことが批判され、猫好きたちの心を痛めたのだ。
ところで、パルボとはどんな病気なのか。
れいこスペイクリニック院長の竹中玲子獣医師によると、「糞便や吐瀉物を介して感染し、感染力は非常に強く、致死率は約95%。白血球が減少し、多くは3、4日で死んでしまう。菌が非常に強く、次亜塩素酸で消毒する必要があります。人には感染しませんが、猫の糞便が人の手に付着し、その手でほかの猫に触るとうつる。猫は自分の肛門を舐めた口で毛づくろいするので、体をなでたときに糞便が手に付着する可能性も考えられます。ですから、パルボが出たのに休業しなかったのは、非常に危険です」
この病気の恐ろしさがよく伝わる。
モカを訪れたばかりに、飼い猫にパルボをうつしてしまった人がいた可能性も否定できない。
だが、一方で、竹中獣医師はこうも言うのである。
「ワクチンさえ打っていれば、 基本的には防げるので、“昔の病気”というイメージです。ワクチンを打っていない、極めて劣悪な環境、多頭飼育、などの条件が重なった場合にのみ感染するという認識です」
それなのに、「モカ」立川店の猫は、なぜパルボにかかったのだろうか。

「昔の病気」が続々発症
それを検証する前に、捨て置けない記述を紹介しておく。
本誌(「週刊新潮」)が入手した、「モカ」各店の社内チャットによる業務日誌からの引用である。
たとえば、17年11月29日付には、〈現在、竹下店と新宿店でパルボが出てしまっています。感染を広めないために、パルボ店舗へ用事がある際は最後にまわる。どうしてもパルボ店舗から他店舗へ行く際は、着替えをするなどご協力よろしくお願いいたします〉等々書かれている。
遡って16年7月12日付にも、〈茶スコがパルボウイルスというものに感染しました。致死率とても高いです〉、立川店で感染が発覚する直前の今年6月4日にも、〈先日渋谷店でパルボが出てしまいました。店舗全体清掃はしましたがもしもの事がありますのでしばらくは行かないようにした方が良いかと思われます〉と記されている。
「昔の病気」であるなら、こうも頻繁に感染するのは、異常事態というほかない。

元社員が証言
最近まで「モカ」に勤めていた元社員が、重い口を開いた。
「今回は内部告発があって話題になったので、いやいや公表しましたが、実はモカではこれまでに、6店舗でパルボの感染症が見つかっていました。渋谷店、原宿竹下通り店、新宿店のほかに、池袋西口店、同東口店、いまは運営主体が変わっている『僕と猫。』秋葉原店です。今回、立川店で7匹が死んだので、全部で20匹近くがパルボで死んだことになります。ところが、以前の6店舗のときは、社内チャットで情報は共有しても、店を閉めたり公表したりはしませんでした。新宿店でパルボが出たときは、責任者が社長に営業休止を訴えましたが、社長は“猫が死んだら買い足せばいい”と言うだけでした」
ちなみに、ある猫カフェ経営者に尋ねると、「野良猫を扱う“保護猫カフェ”では時々、感染する猫がいるけど、ワクチン接種でほぼ100%防げるので、普通の猫カフェで感染したケースは、これまでほかにないはずです」とのこと。
なのにモカでは頻繁に感染しているのだ。再び元社員が打ち明ける。
「このワクチンは生後2カ月で1回目、その2、3週間後に2回目を打ち、その後は体に馴染ませるために最低1週間休ませます。ところが、モカでは1回目のすぐあとに2回目を打ったり、2回目を打った翌日に店舗に出してしまったりするので、ワクチンが効果を発揮しない。実際、立川店で死んだ7匹は生後数カ月の子が中心。ワクチンが効いていなかったことが原因だと思われるんです」
竹中獣医師も補足する。
「ワクチンを打った翌日に店に出したら、打った意味がまったくありません」
加えて、元社員が強調するのは、猫たちの“労働環境”についてである。


ウイルス蔓延で50匹が死亡した猫カフェ「モカ」
 店でライブ開催、過酷な“労働環境”指摘も

2018年10月9日(火) ディリー新潮


猫カフェ「モカ」

猫パルボウイルス(以下、パルボ)は、致死率が約95%、糞便や吐瀉物を介しての感染力が非常に強い病気である。
が、ワクチンさえ打っていれば基本的に防げる“昔の病気”でもある。
にもかかわらず、猫カフェ最大手「モカ」では各店舗で感染が相次いだ。
8月には運営会社のケイアイコーポレーションが関東の全店での臨時休業を発表したが、実は以前にも感染症が見つかっていたと元社員は明かす。
「責任者が社長に営業休止を訴えましたが、社長は“猫が死んだら買い足せばいい”と言うだけでした」
「モカ」での感染拡大の背景にワクチン接種の不備があるとこの社員は指摘するが、加えて、猫たちの“労働環境”についてもこう強調する。
 ***
ある猫カフェ経営者は、「うちは生後数カ月の子猫は、30分から1時間フロアに出すごとに、3時間ほどバックヤードで休ませています。猫は自分の体力を顧みず遊びすぎてしまうので、成猫であっても、こちらから時間を制限してあげないとダメなんです」と話すが、先の元社員によれば、モカでは違う。
「10時に開店して20時に閉店するまで、猫は免疫力が低い子猫をふくめ、10時間ぶっ通しでフロアに出され、休憩できません。モカは立地のよいところに出店しているので、来店数は1日に100人を超える。ひっきりなしに客が入れ替わる環境は、ただでさえストレス要因です」
これに対して、「ワクチンが効いているかどうかの指標を抗体価といいますが、これが上がっていない子猫が1日10時間も店に出れば、パルボに感染するのは当たり前です」と、見解を挟むのはれいこスペイクリニック院長の竹中玲子獣医師だが、元社員の話をさらに続ける。
「運営会社がスタジオ事業も行っているため、モカでアイドルやバンドのライブをやることも。大音量の音楽は、人間の何倍も耳がいい猫には大変なストレスで、みな脅えきって、翌日は何匹かが軟便になります。また、猫の欠員が出ると、他店からの補充で賄いますが、猫は縄張り意識が強く、急な環境の変化も多大なストレスになります」

猫の12%が死亡
ところで、不幸にもパルボに感染してしまったら、「感染力が非常に強いので、ケージに敷く板や布類など、ウイルスが染み込む可能性があるものは、完全に処分しなければいけません」と竹中獣医師は言うが、元社員によれば、「発症した猫のケージも捨てなければ、下に敷くボードも交換せず、消毒だけで済ませていました」
続いて、ほかの元従業員もこう告白する。
「パルボ以外の病気も頻発し、子猫の致死率ほぼ100%のFIP(猫伝染性腹膜炎)で死ぬ猫も多い。毛が抜けて発疹が出る真菌という病気も見られ、これは人間にも感染しますが、モカではそういう猫もフロアに出します。モカは社長の方針で3歳以下の猫しか扱いませんが、大勢の若い猫がこういう病気で死んでいる事実上の見殺しで、従業員も苦しんでいます」
本誌(「週刊新潮」)は、ほかにも内部資料を入手した。
そこには猫の死亡日、店舗、名前、性別、誕生日、猫種などが書かれており、死んだ猫の数は合計49におよぶ。
「リストの作成後に死んだ猫を加えると50。これら資料によると、3年半ほどの間にモカに在籍した猫は420匹前後。その12%が死んでしまったのです」(同)
前出とは別の猫カフェ経営者が言うには、「われわれが知る猫カフェで、3歳以下の猫が死んだのは1社だけ。その会社でも80匹中2匹、つまり2.5%にすぎません」
モカの運営会社は・・・再び内部資料である。
従業員向けのマニュアルには、〈お客様にもし聞かれた時の言い方です〉などと書かれた下に、こう細かい指示が記されている。
〈・猫が亡くなった→ブリーダーさんの元に帰りました〉〈・隔離治療中→裏で休憩中です、おやすみしています〉〈・病院へ行く姿を見られて聞かれた時→定期的な健康診断です〉
さて、モカに取材を申し込むと、顧問弁護士の名で返答があった。
以前にもパルボに感染した事例があったことは認めながらも、「一般的に行われているパルボウイルス対策はすべて実施しておりました。それでも今回のことが起きてしまい、感染力の強さを痛感しております」と、モカでだけ「昔の病気」が発症しているのに他人事のようだ。
そして猫の死亡率が高いことも、マニュアルの存在も否定した。
だが、あたかも収容所での苦役のような虐待は、数百万の飼い主、その何倍もの愛猫家を敵に回すことだと知るべきだろう。

「週刊新潮」2018年10月4日号 掲載


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