【犬のために何ができるだろうか】
「みやざき動物愛護センター」の取り組み
2018年8月31日(金) いぬのきもち
殺処分ゼロの先にある「収容ゼロ」を目指して
県と市が一丸となって運営する「みやざき動物愛護センター」の取り組みを紹介します。
出典/『いぬのきもち』2018年2月号
取材・撮影・文/尾﨑たまき
※保護犬の情報は2017年12月8日現在の情報です。
職員一同、顔を突き合わせることで、県と市が見事に連携
南国・宮崎に、2017年4月、待望の「みやざき動物愛護センター」(以後センター)が開所しました。
県と市が同じ施設で運営する画期的なセンターです。
これまで県の施設「宮崎県中央動物保護管理所」(以後管理所)は犬を収容するだけのもので、治療もしつけも譲渡も充分にできませんでした。
一方、市では動物の収容施設はもたず「宮崎市保健所」があるのみ。
県も市も保護から譲渡まで一貫してできる場所を望んでいたため、ともにセンターを作り運営する道筋をたどることとなりました。
まわりは豊かな緑に囲まれたみやざき動物愛護センター。譲渡会は多くの人でにぎわう
譲渡対象犬が入る犬舎は、外からも犬が見られるようにできている。
右が県で左が市の犬舎「県と市が同じ職場で働くことで、足並みをそろえられるようになりました。
以前はなかなか話し合いの時間をもてませんでしたが、今はとてもスムーズです」と県の主任、下村高司さんは話します。
施設内の診療室、中庭、ドッグラン広場などは共有で使用していますが、病気の蔓延を防ぐため、犬舎はそれぞれ分けて管理を行っています。
2017年4月に開所した「みやざき動物愛護センター」は、県と市が運営する画期的な施設として注目を集めている。
動物の管理は分けているが、譲渡会やイベントなどは共同で開催し、お互い協力のもと進めている。
写真左から宮崎県主査 岐本博紀さん、宮崎県主任 下村高司さん、宮崎市所長 永田美保さん、宮崎県所長 木添和博さん
命と向き合う上野さんと母犬ひまわりとの出会い
このセンターの前身、管理所が舞台になった映画『ひまわりと子犬の7日間』で、主人公の職員役を俳優の堺雅人さんが演じました。
そのモデルとなった上野久治さんは、現在もセンターの職員として動物と向き合っています。
上野さんのことを、まわりの職員は口をそろえてこう言います。
「上野さんの手にかかればみんな譲渡対象犬になる」と。
それほどまでに上野さんは、人からも犬からも厚い信頼を寄せられています。
この日も犬を犬舎から出してトレーニング。
犬は「大好きな上野さんに夢中」という感じでしっぽを振り、懐に顔をうずめていました。
一頭ずつ時間をかけて、マッテやオスワリなどを教えるベテラン職員の上野さん。
上野さんが来るとどの犬もうれしそうに甘えてくる姿が印象的。
「以前、訓練士の方にしつけの方法を教えてもらったことがあります。『チェーンカラー』という、引くと首が締まるもので行っていましたが、力ずくで覚えさせることに途中から違和感を覚えて。『おいで』と呼びながら手招きするようにしたんです。時間はかかりますが、覚えれば新しい飼い主さんのもとでもすぐできますから」と上野さんは話します。
おいでと呼ばれたら自発的に来るよう、声に出しながら手招きを繰り返し教える上野さんまた、母犬ひまわりについても語ってくれました。
「ひまわりは子犬を守るため、激しく威嚇していました。放浪時代に恐ろしい目にあったのでしょう。このままだとひまわりは、譲渡は厳しい状況でした。私は毎日母犬がいる犬舎の前に座って『大丈夫、怖がらなくてもいいんだよ』と話しかけました。すると母犬が目で語りかけてくるようになったんです。私もそれに応えたくて、母犬と話を続けました」
心を開いたひまわりは、上野さん一家に迎えられました。
犬の気持ちに寄り添う上野さんの姿勢は、今も変わりません。
いぬのきもちWeb編集室