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イラク難民家族と猫、北欧の再会描く

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イラク難民家族と猫、北欧の再会描く 日本でも出版

2018年8月27日(月) 毎日新聞

戦乱のイラクから逃れた難民の家族が、途中ではぐれた白い愛猫と5000キロ離れた北欧で再会--。
そんな実話を基に米国で出版された絵本の日本語版が今月、発売された。
奇跡の再会は、世界の人々の優しさが重なり合って実現した。
絵本の翻訳家らは「日本の子供が世界を知り、自分ができることを考えるきっかけにしてほしい」と願う。


「難民になったねこ クンクーシュ」の翻訳を担当した中井はるのさん(右)とかもがわ出版の三輪ほう子さん=東京都内で、千脇康平撮影

絵本は「難民になったねこ クンクーシュ」(税抜き1700円)。
イラク軍と過激派組織「イスラム国」(IS)の戦闘が続いていた都市・モスルで、母子6人の一家に飼われていたクンクーシュを主人公として描く。
一家は2015年10月、密航業者が手配したゴムボートでギリシャのレスボス島にたどり着いた後、クンクーシュとはぐれる。
島内でクンクーシュを保護した難民支援ボランティアの米国人女性がフェイスブックなどで飼い主を捜し始めると、里親などの協力に手を挙げる人が相次いだ。
このエピソードを海外メディアが次々と報道。
ノルウェーに逃れた一家の母親が、インターネットニュースで偶然知り、「飼い主」と名乗り出た。
写真家のドイツ人ボランティアがクンクーシュを一家の元まで運ぶことを引き受け、4カ月ぶりの再会につながった。
邦訳を担当した翻訳家の中井はるのさんは昨年11月、米国の出版社が発売した絵本の存在を知った。
難民の現状を案じた人々の行動が生んだ奇跡に心を揺さぶられた。
海外の児童書のほか、海外ニュースの翻訳も手がける中井さん。
シリアやロヒンギャの難民の窮状を伝える報道に多く接する中、数年前から「世界の現実を日本の子供にどう届けられるか」と考えていた。
絵本の紹介を受けた海外著作物の版権代理店に「翻訳したい」と伝えたところ、京都市の「かもがわ出版」が出版を検討していることを知った。
翻訳家を探しており、企画が動き出した。
かもがわ出版東京オフィス編集部の三輪ほう子さんは「身近な猫を切り口にした物語で、難民の立場や思いが子供にも伝わりやすいと思った」と語る。
子供の理解を助けるため、「密航業者」「難民キャンプ」などの用語解説を各ページに載せる工夫もこらした。
賛同した国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のダーク・へベカー駐日代表から日本の子供たちに宛てたメッセージも加えた。
絵本はクンクーシュが再会後に病死する場面で終わるが、この物語は今も続く。
クンクーシュを救った米国人女性は、トルコに逃れたシリア難民にクンクーシュのぬいぐるみを作ってもらい、インターネット販売で得た収益を難民に還元する生活支援を始めている。
中井さんは「一匹の猫がつないだ出会いの輪は今も広がる。絵本は少しの勇気や思いやりが持つ意味を教えてくれる」と話す。
【千脇康平】


絵本「難民になったねこ クンクーシュ」

 

著 者:マイン ヴェンチューラ[文]・ベディ グオ[絵]ヤズミン サイキア[監修]・中井 はるの[訳]
出版社:かもがわ出版
ページ数:32頁(オールカラー)
発行年:2018年8月
価 格:1,700円+税
ジャンル:児童文学・子どもの本


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