保護犬の最後の日々を安らかに。『フォスピス』という制度
2018年2月25日(日) わんちゃんホンポ
フォスター+ホスピスで『フォスピス』
保護犬に新しい家族が見つかるまで一般の家庭で世話をする預かりボランティアは日本でも知られるようになってきました。
その預かりボランティアの中のひとつでアメリカで根付きつつある『フォスピス』と呼ばれるものがあります。
フォスピスはフォスター(預かりボランティア)とホスピス(死を目前にした患者さんの緩和ケアと心のサポートを目的とした医療施設)という言葉をくっつけて名付けられました。
保護犬の中でも高齢で体が弱っていたり、重い病気にかかっていて通常の里親募集が難しい犬たちの最後の日々を少しでも快適で安らかなものにするための預かりボランティアのことを指します。
アメリカでのフォスピスの現状
アメリカでも日本と同じように、年老いたり病気になってしまった犬を「もうこれ以上世話できない」と保健所や愛護センターに持ち込む例がたくさんあります。
そんな老犬や病気の犬が新しい家族に引き取られることはとても難しく、他の犬よりも先に殺処分の対象になったり、保護施設のコンクリートの犬舎で最期を迎えてしまうことも少なくありません。
アメリカ動物虐待防止協会は「里親募集の対象にならない犬でも、残された時間を快適で安らかに過ごす権利がある。せめて最後の日々はあたたかい家庭の空気の中で過ごしてほしい。」として、2010年代前半にこのフォスピスの制度をスタートさせました。
一般の預かりボランティアとは別に「フォスピス参加希望者」としてボランティアを募集し、対象となる犬の最期を看取るまで家庭で預かってもらいます。
看取りの時は数週間後かもしれないし、数年後かもしれませんが、それがいつであれ犬に残された時間をおだやかで快適なものにしてあげるのがフォスピスボランティアの役目です。
アメリカ動物虐待防止協会はアメリカでも屈指の大規模団体なので資金も豊富にあり、フォスピスボランティアにはフードやトイレシートなどの消耗品や医療費のサポートが提供されます。
カウンセリングや相談なども常時受け付けており、ボランティアへの負担が考慮されています。
他の大規模保護団体でも、ほぼ同じ制度が同じようなサポート体制で実施されています。
小規模な保護団体にもフォスピス制度をスタートするところも出てきています。
そういうところでは地元のペット用品店などとタイアップ契約を結んで、ボランティアの方へ提供する消耗品を確保するなど工夫をしているそうです。
日本の老いたり病気になった保護犬たちの場合は?
日本の場合、動物保護団体のほとんどは資金繰りにも人手にも苦労していらっしゃいます。
通常の預かりボランティアでもフードや消耗品はボランティアの自己負担の場合が多く、アメリカのようなサポート体制を設けるのは難しい状況です。
心ある人々が里親募集が難しそうな犬を善意で引き取り、実質のフォスピスのような状態になっている例も多く見られます。
しかし日本でも、老保護犬の最期を看取る活動をしている団体や個人の方は少しずつ増えているようです。
動物を保護して活動してくださっている方々の経済的な負担を少しでも小さくすることが、日本の課題のひとつです。
まとめ
年老いたり病気になったりして保健所や愛護センターに連れてこられた犬たちに、せめて穏やかであたたかい最後の日々を過ごしてもらうためにと作られたフォスピスという制度は、看取りと旅立ちのための預かりボランティアとも言えます。
世界中のどこでも、長年一緒に暮らした動物を病気や高齢を理由に手放すような人がいなくなるのが理想ですが、それはすぐに解決できる問題ではないので、このような受け皿が増えて行くことは必要です。
アメリカではフォスピスボランティアには経済的な負担はかからないのが一般的なのですが、日本ではまだまだそんなことは望めない状況です。
もし「大好きな犬たちのために何かしてあげたい」と思われたら、ぜひ近くで保護活動をしている方を探して、できる範囲で物資や資金の援助を考えてみてください。
保護団体のサイトやブログでは、アマゾンなどに必要な物のリストをアップしているところもたくさんあります。
これならリストの中から自分で選んでクリックしてお買い物するだけで物資の援助ができます。
「気負わず少しずつ」の人の数をたくさん増やしていくことが保護活動を支え、動物を取り巻く環境に興味や理解を示す人が増えることにもつながっていきます。
寂しく悲しい最期を迎える犬が一匹でも少なくなりますように。