「子犬工場」虐待か否か 法律曖昧、分かれる見解
2018年3月13日(火) 福井新聞
コンクリートブロックのマスに入れられた犬=2017年12月、福井県坂井市内(県内動物愛護グループ提供)
福井県坂井市内の動物飼育施設で一時約400匹の犬猫が過密状態で飼育、繁殖されていた問題で、飼育方法を巡り虐待かどうか見解が分かれている。
動物愛護団体側が「狭いケージや、コンクリートブロックマスに過密に入れるなどの虐待を行った」とする一方で、業者を指導監督する県側は「明らかな虐待はなかった」と話す。
平行線をたどる背景には法律の曖昧さが浮かび上がる。
コンクリートブロックで囲まれ、金属製の網が敷かれたマスで泣き叫ぶ犬や、ケージの中でくるくると回る犬。給餌時に首根っこをつかまれてケージに押し込められる犬―。
公益社団法人日本動物福祉協会(JAWS、本部東京都)が公開した複数の動画には「虐待問題をしっかりと把握してほしい」(同協会)とする現場の様子が収められている。
これに対して、県は「虐待と認定するのは難しい」との認識で一貫している。
12日の県議会予算決算特別委員会でも問題は取り上げられた。
田村康夫県議(県会自民党)が「(問題の施設の)立ち入り検査ではどのような状況だったのか」と質問。
池田禎孝県健康福祉部長は「このまま続くと不適正飼育に陥る状況だった」と、撮影された昨年12月時点では「適正」だったととれる答弁をした。
田村県議は、県の立ち入りがずさんだった可能性があることを指摘した上で「立ち入りし、正すのは行政しかできない。条例を作って二度とないようにすることも考えてほしい」と訴えた。
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県は昨年11月末から計10回の立ち入り指導を実施。
狂犬病予防法違反について「注射は県外の獣医師がしたことを確認した」「登録義務を業者が認識していなかった。4月中に全頭の登録手続きを終える予定」とする。
動画という「証拠」を元に、同協会が指摘する動物愛護管理法違反(虐待)について県は「問題がないことはないが、1人当たり何匹まで、という基準はない」とする。
「既に100匹を県外業者に譲渡した。繁殖をやめ、250匹からさらに50匹減らすと聞いている」ことから「是正に向かっているのであれば、見守っていく」との考えだ。
県内の動物愛護グループは「最も問題なのは、命ある動物と思えない飼育をしていること。虐待する業者をなんとかしてほしい」と主張する。
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これまで業者による動物虐待疑いの問題について、全国的には、注射や登録の有無で立件できる狂犬病予防法違反による「“別件逮捕”が多かった」と指摘するのは、岡山市の「ペットを売らないペットショップ・シュシュ」マネジャー澤木崇さん。
反愛護的行為そのもので摘発が困難なことを「虐待の定義が定まっていない現行の動愛法が、骨抜きであることの裏返し」と話す。
「公益財団法人動物環境・福祉協会Eva」理事長の女優杉本彩さんは「飼育頭数に対して何人が必要か、母体の出産回数などの制限、飼育スペースなど基準の定義明確化で行政や警察も動きやすくなる。実効性を上げる法改正が必要」と訴える。
県内の動物愛護グループメンバーに対し、立ち入りした県坂井健康福祉センターの獣医師は「『あれ』を虐待と判断できる行政マンはいない」と明言したという。
今年は5年に1度の動愛法改正がある。
今春から本格化する予定の国会議論が注目される。
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