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道路の真ん中に子猫!

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道路の真ん中に子猫!
 奇跡の救出・・・ そして“家族”になった

2017年9月23日(土) sippo(朝日新聞)


ジャッキー

2015年8月17日夜、僕の携帯電話が鳴った。
妻からだった。
「あのさ-、今日道路で子猫を拾ったんだけど・・・、しばらくうちで預かってもいい?」
妻の悲痛な声に、僕は思わず「うん、いいよ。かわいがってあげてね」と答えていた。
妻は、安心した声で「うん。ありがとう」と言って電話を切った。
そのとき、わが家には既に15歳のオス猫「ソマ」がいた。
でも、独身時代からずっと猫を絶やしたことがなかった妻。
猫への愛情は並々ならぬものがあった。
当時、僕は横浜勤務のため単身赴任していた。
週末、さいたま市の自宅に帰り、子猫と対面した。
片手にスッポリ入る大きさ。
体は黒っぽい、しましま模様。
オスの雑種で、種類は「キジトラ白」。
正直「不細工な猫だなあ」というのが第一印象だった。
これが「ジャッキー」との出会いだった。
では、どんな救出劇があったのだろう?
妻に「取材」してみると、いくつかの偶然が重なっていた。
妻の話を元に、そのときの状況を再現すると――。

◆渋滞覚悟で、子猫を救出
その日の午前、受験生だった長女を妻が車で塾に送りに行くときのこと。
ほぼ毎日送迎していたが、その日はたまたま授業が1時間遅れだった。
自宅を出てまもなく、すごい渋滞でなかなか前に進まない。
「何の渋滞だろう?」。
前をよく見ると、みんなセンターラインを越えて「何か」を避けている。
自分の番が来て前を見ると、小さい赤ちゃん猫が・・・。
「あ、ひかれてる?」
いや、よく見ると、動いている!
妻は渋滞になるのを覚悟して子猫の前に停車した。
その動きに気づいた後続車も、妻の車の後ろに停車してハザードランプを点灯させた。
そして交通整理を始めてくれた。
妻はとっさに車から降りて、猫を拾い上げようとした。
すると子猫はびっくりして、車の下に走って逃げてしまった。
反対車線の車は、何ごともなかったかのようにビュンビュン走っている。
猫が飛び出してひかれはしないか、気が気でならない。
その道路は「産業道路」と呼ばれるほど交通量が多く、トラックや商業車も多い。
確かに妻の車の下に逃げ込んだのだが、どこを探しても見当たらない。
そのうち騒ぎに気づいた歩行者の女性や、学生らしき男性も参加して、「子猫の大捜索」が始まった。
車の下を中心に探したが、見つからない。
まるで神隠しにあったようだった。
後続車の男性が「もしかしたらエンジンルームに入ったのかもしれませんよ。エンジンに巻き込まれてしまうかもしれないので、あまり車を走らせない方がいい」と助言してくれた。
幸いにも目の前には、いつも利用するガソリンスタンドがある。
協力してくださったみなさんにお礼を伝え、ガソリンスタンドに車を移動させた。
スタンドの従業員がバンパーを開けてのぞき込む。
すると、エンジンルームの下の方にある棒に、子猫がちょこんと乗っかっていた。
キョトンとした顔でこちらを見ている。
従業員やスタンドにいたお客さんが、手を突っ込んだり、棒でつついたりしてみたが、全く動く気配はない。
ついに従業員がジャッキで車体を持ち上げ、車の下に入り込んだ。
「ギャーー」。
抵抗をしていたが、あえなく「捕獲」。
抱き上げようとしても、恐怖や興奮で「フー、フー」と威嚇してくる。
さて、どうしよう・・・。
道端に置いてきたら、また道路の真ん中に出るかも知れない。
結局、家に連れて帰ってきた。
以上が、「救出劇」の一部始終だ。
妻1人の力だけではなく、たまたまその場に居合わせた多くの方々の「善意」が、ジャッキーの命を救ったのだった。
この日は、たまたま出発が1時間遅かったが、通常の時間だったらジャッキーと出会えていなかったかもしれない。

◆怖いもの知らずで「先住猫」に近づく
さて、自宅に連れて帰ってきたはいいが、先住猫「ソマ」がいた。
僕も妻も2匹を飼うことは全く考えていなかった。
そもそも、急に子猫を連れてきたらソマがかみ殺してしまわないか、心配だった。
飼い主が見つかるまで、とりあえず保護しようということになった。
妻は以前読んだ本に、「先住猫と新しい猫の相性を見るために、別々の場所に隔離し、お互いに『違う猫がいるぞ』と存在を意識させるところから始めた方がよい」と書いてあったのを思い出し、その通りにした。
「見た目にかわいい子猫をかわいがりがちだが、先住猫を意識してどんなことも優先的に接するように」とも書いてあり、それも実践した。
自宅はマンションで4LDK。
先住猫はリビングやダイニングに放し飼いにして、子猫は長女の部屋のケージに入れることにした。
でも子猫は小さすぎて、ケージの柵をくぐり抜けてしまう。
そして怖いもの知らずで、ソマに何度でも近づいていった。
そのたび僕たちが連れ戻し、2匹の距離を置くようにした。
数日後から、お互いに短時間ずつ「対面」させ、臭いをかがせた。
最初は、2匹とも「シャー」と言って、威嚇し合った。
徐々に慣れてきたように見えた。
長女も次女も「かわいい。うちで飼おうよ」と言い出した。
娘たちがそう言うなら、親は逆らえない。
結局、わが家で飼うことになった。

 
 現在のジャッキー(左)、右は弟猫きなこ

【写真特集】我が家にやって来たジャッキー


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