忠犬、名犬とは言うが忠猫、名猫とは聞かない・・・
2013年2月23日 福井新聞
忠犬、名犬とは言うが忠猫、名猫とは聞かない。
犬は3日飼えば3年恩を忘れず、猫は3年飼っても3日も覚えていないと気まぐれさを例えられる。
犬は人につき、猫は家につくとも。
猫ファンには反論大いにあろう。
イタリアのフィレンツェ近郊の村で忠犬ハチ公ならぬ“忠猫”トルドの話題。
白と灰色の3歳猫は生後3カ月に引き取られたが優しい飼い主は死亡。
寂しげにひつぎを追う姿が目撃された。
その後も墓石にはアカシアの葉や小枝、コップ、ティッシュペーパーなど「お供え」が届く。
とても愛されたトルドのきっと恩返しだと涙を誘った。
猫は犬ほどに心理状況を計り切れない。
「猫の比較文学」の著者、堀江珠喜さんは謎めく猫にとりつかれた作家・詩人を論じた。
猫の高貴な冷酷さが好きな三島由紀夫は美と残酷を体現する存在が猫であり、それが三島のサド・マゾヒズムの現れとした。
海外でもゾラやマゾッホの小説は美しき雌猫を魔性の女と被(かぶ)せていると。
そんな猫も民話「長靴をはいた猫」では福招きを演じたり、怪談「鍋島の化け猫」では斬殺された主人の仇(あだ)討ちもする。
作家次第で猫も変幻自在だ。
一緒に暮らせば犬も猫もかわいがってくれた家族に生涯感謝する。
昨日はニャンニャンを掛けた愛くるしき「猫の日」。
その陰で人との触れ合いも知らぬまま命を閉じる猫たちを忘れぬ日でもある。