捨て犬7匹、警察犬めざし訓練中 雑種10歳、人間不信を乗り越え
2016年10月21日(金) sippo(朝日新聞)
訓練を続けている元捨て犬たち
かつて飼い主に捨てられた過去を持つ犬たちが、人助けができる警察犬や災害救助犬になることを目指している。
青森市浪岡にあるNPO法人「北東北捜索犬チーム」では、動物愛護センターから引き取られるなどした7匹が挑戦中。
人間の指示にきちんと服従したり、がれきから嗅覚(きゅうかく)を頼りに人を探し出したりする訓練に励んでいる。
雑種のメスのピコ(10)は4年前、飼い主の平田奈奈子さん(58)に引き取られた。
それまでは捨て犬として動物愛護センターで6年間保護されてきたが、なかなか職員になつかず、かみ付くこともあった。
センターでボランティアをしていた平田さんは「ピコが殺処分されるかもしれない」とのうわさを耳にし、引き取ることに決めた。
ピコの人間不信は根深かった。
散歩に出ると車に体当たりし、ジョギングしている人に飛びかかろうとする。
その一方で、食器の音に過敏に反応し、うずくまる。
一緒に寝ようと近づいてきたかと思えば、寝返りに驚いてほえる。
ピコが家族に慣れてくれるまで、1年はかかったという。
「北東北捜索犬チーム」は、2008年に理事長の岩本良二さん(66)が警察犬や災害救助犬の育成を目指して設立。
自宅敷地内に階段やジャンプ台、倒壊家屋を模した施設を備え、約20匹が訓練を積んでいる。
警察犬や災害救助犬になるには、都道府県警などが実施する試験に合格しなければならず、1~数年ごとに更新も必要だ。
ピコが災害救助犬になるための訓練を始めたのは3年半前。
「救助は人を助けたいという気持ちがないとできない。人を好きになって信じられるようになってほしかった」と平田さんは話す。
災害救助犬の活動を支援するNPO法人「災害救助犬ネットワーク」によると、試験を受けた犬の中で、災害救助犬として活躍できる犬は数%ほど。
人間でいえば50代後半にあたるピコは、広報活動などを担う災害救助犬の候補犬を目指している。
ピコは今も頭上でリードや手が揺れると驚き、前を歩こうとしないこともあるが、平田さんは「少しずつできることが増えてきた。表情も最初は怒っているような顔だったけど、やわらかくなった」と話す。
捜索犬チームの岩本さんが4年前に引き取った雑種のメス、ひらり(7)は、今年6月、警察犬の審査に合格した。
「ひらりも最初は無理だと言われていたが、高いところを歩けるなど他の犬にできないことができた。やってみないとわからない。もっと譲渡犬を受ける人が増えて欲しい」と話す。
県動物愛護センターによると、昨年度、県内でセンターに捕獲されたり引き取られたりした犬は574匹。
飼い主のもとに戻る犬もいる一方、272匹が殺処分された。
元捨て犬で、昨年と今年、警察犬の審査に合格した雑種のメス、シュウ(7)の飼い主、長持義之さん(56)は「この子たちは、灰になるために生まれてきたわけではない。捨て犬でも社会に貢献できる」と訴えている。
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捨て犬7匹、警察犬めざし訓練中
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