小池都知事にお願い!本当の意味での「殺処分ゼロ」へ
2016/9/5 わんちゃんホンポ
小池新都知事の公約「ペットの殺処分ゼロ」は実現可能なのか
去る7月31日の東京都知事選挙で、歴代4位の291万票を獲得して圧勝した小池百合子氏。
選挙戦での公約のひとつに、「殺処分ゼロ」を挙げていました。
ペットと暮らす都民にとっては大歓迎の公約ですが、果たして実現できるのでしょうか?
2014年度の処分数はおよそ1,000頭
東京都の発表によると、2014年度に保健所に収容された動物は、持ち込みや迷子などを含め、およそ1,800頭にのぼります。
852頭は、無事飼い主に引き取られたり、譲渡されたりしていますが、981頭は悲しいことに殺処分となってしまいました。
収容、処分ともに猫が圧倒的に多く、収容数では全頭数の70%以上、殺処分ではなんと90%を超えています。
犬については、収容数が全体の26%、殺処分数は5%です。
頭数で見ると、成犬・子犬合わせて475頭が収容され、52頭が殺処分となりました。
先日のリオ・オリンピック閉会式で、クール・ジャパンを印象づけた東京都ですが、動物たちにとって幸せな都市とは言えない現状があります。
都道府県では初の処分ゼロ広島県
そんな東京都に、希望を与えてくれるのが、広島県です。
今年度の犬の殺処分数ゼロを達成する見通しとなっています。
広島県は、2011年度の犬・猫殺処分数が全国ワースト1でした。
まさにどん底からの大逆転です。
そんな広島県がどうやって、犬の処分をゼロにできたのでしょうか?
それは官民がタッグを組み、「ふるさと納税」を活用した資金集めが成功したからです。
県内で犬の保護や災害犬育成に取り組むNPO法人「ピースウインズ・ジャパン(PWJ)」をふるさと納税の対象にしたところ、なんと4億円もの資金が集まりました。
それにより、犬舎が新設でき、殺処分の対象となる犬をPWJが全頭引き受けることが可能になったのです。
PWJに保護された犬たちは、新たな飼い主に譲渡されるなど、生存が約束されます。
今年度だけでなく、継続的に全頭引き取りが可能となるほか、広島県では猫の殺処分0も目指していく方針です。
殺処分ゼロは実現できる!
県レベルでは広島が初ですが、市レベルでは、すでに川崎市で犬・猫ともに殺処分ゼロ、札幌市で犬のみゼロが実現しています。
そして、成功している自治体に共通するのが、民間の保護団体との協力体制。
東京都や首都圏を対象にした保護団体は、ネットで検索しただけでも、いくつも存在することがわかります。
また、NPO等の法人化した組織だけでなく、小規模で活動している保護施設もあります。
保健所等のお役所だけで活動せず、民間団体と積極的に協力しあうことで、殺処分ゼロは実現可能なのです。
民間団体が苦労しているのは、資金面はもちろんの事、活動を多くの人に知ってもらうという広報活動です。
都が譲渡の告知を手伝うだけでも、民間で保護している犬や猫の引き取り手が見つかりやすくなるはずです。
そうすれば、施設に空きができ、殺処分の対象となっている犬・猫を保護することができます。
猫は数が多いので少し苦労しそうですが、2014年度に殺処分された52頭の犬は救えるのではないでしょうか。
数字上の「ゼロ」ではない本当の意味での「殺処分ゼロ」を目指して
最初に挙げた東京都発表の殺処分数ですが、この数字をゼロにするだけでいいのでしょうか?
データ上でのゼロだけに注目することに、タレントで、公益財団法人動物環境・福祉協会Evaの理事長を務めている杉本彩さんが警鐘を鳴らしています。
殺処分の原因を元から断つ
杉本彩さんは都知事選の前日、7月30日に、自身の「杉本彩のBeautyブログ」で、「殺処分ゼロの盲点」と題した記事を掲載しました。
杉本さんは、「殺処分ゼロ」は反対する人がいないので、政治家が公約として掲げやすいと指摘しています。
私たちはそれを踏まえて、本質的な取り組みがなされるのか、注意する必要があるということです。
本当の「ゼロ」を実現するためには、以下のことが不可欠だと、杉本さんはおっしゃっています。
無責任な飼育放棄をさせてはいけない。
飼育放棄の要因は、無責任な販売、動物の「大量生産」にある安易で無責任なペット購入をうながすペットビジネスへの規制はマスト。
つまり、ペットの迎え方に、抜本的な変革が必要だということです。
それを成し遂げてこそ、殺処分が行われる悪循環を断ち切ることができるのです。
目指すのは「飼育放棄ゼロ」
さらに、「殺処分ゼロ」を数字だけで評価することはできないとしています。
なぜなら、以下のようなことがデータの裏に潜んでいるかもしれないからです。
行政が引き取りを拒否すれば殺処分はゼロ積極的な殺処分をせず、どんな不適切な環境であろうと生かしておけば殺処分はゼロ動物愛護団体が受け皿になって引き取れば殺処分はゼロ。
最初の2つは論外ですが、行政の成果として「殺処分ゼロ」を発表したいがために、このような措置がとられる可能性もあります。
動物愛護団体が引き取るというのは、先に紹介した広島の例にあたりますが、引き取ったあとは、新しい飼い主を探さねばなりません。
誰にでも簡単に譲渡するわけにいきませんから、審査などの負担は引き取った民間団体が負うことになります。
これでは、行政はただ処分対象の犬や猫を手放したにすぎません。
愛犬家である私たちが想像する「動物が殺されることなく、幸せに暮らす」という殺処分ゼロは、行政が発表する数字だけでは判断できないのです。
小池都知事に期待すること
このように、本当の意味での「殺処分ゼロ」を達成するには、担当部局に指示するだけでは足りません。
動物愛護、動物福祉を向上させるという目線が欠かせないのです。
とにかく早急に殺処分をなくすため、民間団体への引き渡しと保健所での積極的な譲渡は欠かせないとしても、さらにこのような対処が必要ではないでしょうか。
民間団体のメンバーを「動物愛護リーダー」として育成。
譲渡ポリシーや、保護動物の住環境、必要な医療措置を徹底する安易な販売をストップするために、ペット販売のハードルを上げる飼育放棄をさせないよう、ペットを迎える心構えをセミナーや学校教育を通じて浸透させる。
また、鑑札や迷子札を常に装着することも義務化すれば、迷子の犬や猫が飼い主のもとに戻る確率も上がるでしょう。
まとめ
他の自治体で達成した例を参考にすれば、東京都での「殺処分ゼロ」も実現することができます。
でも、データだけに注目せず、殺処分を免れた犬や猫たちの「その後」まで考え、見届ける必要があります。
ただ生存しているだけでなく、劣悪な環境に置かれていないか、必要な医療措置がなされているか、そして家族として、または救助など働く犬として1頭1頭に合った暮らしをしているかが大切です。
何より大切なのは、不幸な動物を生み出さないためのシステムづくり。
小池知事には、ペット販売の実態把握と改正を含めた「殺処分ゼロ」政策をお願いしたいと思います。