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3Dプリンターで障害もつ動物に人工装具

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3Dプリンターで障害もつ動物に人工装具、低コストで新たな生活を

2016年8月24日(水) ナショナル ジオグラフィック日本版


3Dプリンター製の義足で走る、生まれつき前脚が不自由なイヌのダービー

3Dプリンターで作った人工装具によって、新たに自由な生活を取り戻す動物たちが増えている。
ハイイロガンのほか、ウマやネコ、イヌの例を紹介しよう。

2015年12月、ハイイロガンの「ヴィトリア」がブラジル、サンパウロ近郊の動物救護センターに連れてこられたとき、くちばしの大部分が失われていた。
ボランティアがベビーフードを与えたものの、このままだとヴィトリアは毎日の食事に時間がかかるばかりか、面倒を見てくれる人間がいなければ生きていけない。
そこで、救護センターは、地元の歯科医で3Dによる顔面と歯の再建の専門家、パウロ・ミアモト氏に相談。彼の協力で、ヴィトリアのために3Dプリンターを使って人工のくちばしを作ることにした。
ミアモト氏は、獣医師や3Dコンピューターデザイナーらから成るボランティアチーム「アニマル・アベンジャーズ」の一員で、3Dプリンターを使って野生動物やペットのためにカスタムメイドの人工装具を製作していた。

第2のチャンス
最初に装着した人工くちばしは、大きすぎて落ちてしまったため、アベンジャーズはコンピューター上で設計から見直した。
その上で、トウモロコシやサトウキビが原料の生分解性ポリマーの1種を材料に、3Dプリンターで2つ目の人工くちばしを作成した。
手術で取り付けた新たな人工くちばしはヴィトリアにぴったりフィットしたので、この鳥はすでに故郷の砂浜に戻って暮らしている。

最初の人工くちばし(左)の失敗後、3Dデザイナーと獣医師たちは設計から見直し、よりフィットするデザインのものを開発した。

「私たちは動物たちに第2のチャンスを与えています。こうした人工装具がなければ、ほとんどは安楽死させられていたでしょう。だれも世話をしてやれないのですから」と、ミアモト氏は言う。
高度な技術と費用を要する手法に思えるが、どの装具も手作業で作るよりずっと安上がりだ、とミアモト氏は付け加えている。
必要なのは、携帯で撮った写真とオープンソースのコンピューターソフト、それに3Dプリンターだけだ。
人工装具は、動物の行動や生息環境に合わせておくことも大事と、彼は言う。
「もしオオハシに白いくちばしを付けたら、他のオオハシから拒絶されるかもしれません。だから、オレンジ色にしておく必要があります」

ウマのホリー
オーストラリアで暮らすホリーは足の疾病、蹄葉炎にかかっていた。
痛みがあるほか、蹄と足の骨をつなぐ組織が炎症を起こすと歩行障害が出る恐れもあった。
ホリーの獣医師は、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)で金属技術のディレクター、ジョン・バーンズ氏に連絡を取り、3Dプリンターでチタン製の蹄鉄を製作した。
「うまく機能するか、まったくわかりませんでした。乗馬も一度しか経験がありませんでしたし」とバーンズ氏。だが、彼の蹄鉄はうまく炎症部位にかかる体重を分散し、ホリーはふたたび歩けるようになった。

ネコのシラノ
米バージニア州で暮らす10歳のネコ、シラノは、骨のがんを克服していた。
だが、がんのせいで膝関節がもろくなり、痛みが出ていた。
ノースカロライナ州立大学の獣医師たちは3Dプリンターを使い、人工膝関節インプラントを作ることにした。獣医師チームが、頸骨と腓骨をつなぐ新しい膝関節を埋め込むと、シラノの膝の可動域は完全に元どおりになった。

イヌのダービー
イヌのダービーは、生まれつき前脚に障害があり、走ることはおろか、歩くこともできなかった。
そこで米バージニア州を拠点とするアニマル・オーソケア社はダービーの里親の支援を受けて、3Dプリンターを使いダービー用の義足を製作。
今ではふつうのイヌと同じように家の近所を走り回っている。

文=Carrie Arnold/訳=倉田真木


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