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犬や猫に「五つの自由」を

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犬や猫に「五つの自由」を 飼い主が知るべき心構え

2016年8月15日(月) sippo(朝日新聞)


動物病院などが開く「犬の幼稚園(保育園)」

自動車を運転するには、自動車教習所で知識と技術を身につけ、運転免許証を取得しないといけない。
もちろん、犬や猫を飼うのに免許は必要ない。
でも一緒に幸せに暮らすには、自動車を運転するよりももっとたくさんの知識が必要なのだ――。
もみの木動物病院(神戸市)副院長の村田香織獣医師は、来院する飼い主さんたちから「そんなこと知らなかった」といった言葉を聞くたびに、そう思う。そして、心の中でつぶやく。
「子犬、子猫のときから、飼うための心構えや知識を持っていてくれたら・・・」

犬や猫の健康寿命を延ばし、ともに幸せな生活を送っていくために、飼い主は何をしておくべきなのか。
長く動物行動学の観点から臨床に携わってきた、獣医行動診療科認定医でもある村田さんに聞いた。
子犬や子猫を飼い始めた飼い主に求められていることとは何なのか。
村田さんの答えはシンプルだ。
「犬も猫も、『五つの自由』を満たすことを考えてください」
五つの自由とは、次の5原則を指す。
(1)飢えと渇きからの自由
(2)不快な環境からの自由
(3)痛み、ケガ、病気からの自由
(4)恐怖、不安からの自由
(5)動物本来の行動を実現できる自由
1960年代に英国で定められたもので、いまでは動物福祉向上のための国際的な基準となっている。
これを子犬、子猫にあてはめると、飼い主に求められていることが具体的に見えてくると、村田さんは言う。
順番に、ポイントを押さえていこう。
まず(1)については、総合栄養食であるペットフードを適量あげ、きれいな水を絶やさないこと。
当たり前のようだが、そのためには、迎える前にそれぞれにあったフードを見つけ、食器をそろえ、置くのに適した場所を準備しておく必要がある。
留守番をさせる可能性があるのなら、いつ、誰がどうやってあげるのか、家族のなかで決めておくことが大切だ。
こうした基本的な内容に加えて、村田さんは、1日の適量のフードのうち1割程度を「ごほうび用」に使うことをすすめている。
動物病院に行くとき、誰かが家を訪ねてきたとき、散歩でほかの犬に出会ったとき――適切なタイミングでごほうびとしてフードをあげることで、自然と怖いものが減り、ストレスなく人間社会で暮らしていくことが可能になるという。
次に(2)については、犬や猫が快適に過ごせる室温を維持し、室内を清潔に保つという、これも当たり前のことを心がければいい。
犬では特に夏場は熱中症に気をつけるようにし、寒さに弱い犬種や猫では冬場に体調を崩さないように配慮が必要だ。
また、犬と違って散歩をしない室内飼いの猫にとっては特に、快適な環境を作ってあげる重要度は高い。村田さんは言う。
「ずっと屋内で過ごすことになる猫は、日当たりが確保できるよう、気をつけてください。また、トイレをこまめにきれいにすることも大切です」


ずっと室内で過ごす猫

(3)では、動物病院といかに連携していくかがカギになる。
(1)で、動物病院に行くときにごほうびとしてフードをあげるようすすめたのは、このためだ。
そうすることで、動物病院に行くことを嫌がらなくなる。
犬なら狂犬病予防注射、ワクチン接種、フィラリア予防ーーと動物病院には年に数回、必ず通うことになる。その際、獣医師に健康チェックもしてもらおう。
ケガや病気を隠しがちな猫も、できれば定期的に健康診断を受けせることを多くの獣医師がすすめている。
犬も猫も歯磨きなど基本的なことを含めた健康管理を、獣医師と連携しながら行っていくことが、健康寿命を保つことにつながっていくのだ。
動物病院に行くのが苦痛になるような間違ったしつけや対応は、絶対に避けるようにしたい。
(4)は、日本で飼われている犬にとって深刻な課題といえる。
村田さんはこう指摘する。
「早期に親兄弟から離されてペットショップなどで売られている子犬は、犬との社会化ができておらず、ほかの犬とうまくコミュニケーションが取れないという問題があります。さらに精神的にも不安定で、問題行動を起こしやすい傾向があります」
ドイツや英国、米国などでは、子犬を適切に社会化するために8週齢(生後56~62日)になるまで、生まれた環境から販売目的で引き離してはいけないなどとするいわゆる「8週齢規制」がある。
それよりも前に引き離せば、子犬が精神的外傷を負う可能性が高く、そのことは恐怖心から発する無駄吠えやかみ癖などの問題行動につながってしまう。
ところが日本には、8週齢規制がまだない。
そのために幼すぎる子犬がペットショップの店頭で売られており、多くの飼い主が、問題行動を起こすリスクの高い子犬を飼い始めることになる。
結果、ほかの犬や知らない人を怖がる傾向が強く、問題行動を起こしがちなケースが散見されるのだ。
現在の法制度のもとでは、ペットショップから子犬を購入する限り、こうした問題を防ぐことは難しい。
そのため村田さんは、飼い始めたら、ほかの犬や家族以外の人とふれあう機会を、なるべくたくさん設けてあげてほしいという。
普段から友人、知人を自宅に招いたり、散歩の途中で出会う犬とあいさつをさせてあげたり、といったことから始めればいいそうだ。
また、そうした機会は、動物病院などが主催する「犬の幼稚園(保育園)」や「パピークラス」などでも集中的に得られるという。
パピークラスは、飼い主が正しいしつけの方法を学ぶ場にもなるし、子犬が飼い主以外の人と出会う場にもなる。
最後に、(5)の動物本来の行動だが、犬も猫ももともと捕食動物であるということを押さえておくべきだという。基本的に、何かを追いかけたり、捕まえたりすることを好む。
まずはそういった遊びを、飼い主としては根気強くしてあげよう。
そのうえで犬なら散歩での、猫なら屋内での運動が大切になる。
特に猫は上下運動をする動物なので、キャットタワーを置いたり、家具の配置を変えたりして、上り下りしやすい環境を整えてあげる必要もある。
爪研ぎも猫ならではの行動で、そのための素材も用意しておこう。
また、人目につきにくい自分だけのスペースを設けてあげることも重要だ。
猫はそうした場所でこそ、安心して休めるのだ。
一方で留守番をさせるとき、サークルに犬を長時間入れっぱなしにするのはNGだという。
「サークルは、犬を閉じ込めておくためのものではありません。トイレとして使う程度にとどめましょう。もし部屋の中で自由にしてあげられない理由があるのなら、その理由を取り除くことを検討すべきです」
最初から「五つの自由」を意識しながら飼うことで、飼い主と子犬、子猫との絆は深まっていく。
その先に、長く幸せな一緒の暮らしが待っているのだ。


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