保護の犬猫、譲渡へ拠点 宮崎に来春愛護センター
2016年7月5日 朝日新聞
老犬に寄り添う山下由美さん=国富町
犬や猫の引き取りから治療、譲渡を一貫して行う「動物愛護センター」が宮崎市に計画されている。
県内初となる施設が設置される背景には、動物愛護団体の長年の努力があった。
宮崎市清武町木原の木原地区ふれあい広場で1日、みやざき動物愛護センター(仮称)の地鎮祭があった。
戸敷正市長は「センターがようやく実現する。動物に愛を与える施設になれば」と期待を込めた。
市によると、動物愛護センターは市政90周年事業の一つとして企画された。
鉄骨平屋(床面積約1184平方メートル)で保護室や検疫室、譲渡室に加え、診察室や手術室なども用意。市議会6月定例会に提案された工事費用案は約3億円で、2017年4月の開設をめざしている。
県内の動物保護管理所との違いは「生かして譲渡する」のを目的に病気やけがの治療を行うことだ。
動物愛護教室を開き、被災動物の受け入れなども行う。
県の乳肉衛生担当の下村高司副主幹は「譲渡の呼びかけや、一時預かりなど行政では出来ないところは動物保護団体の努力のおかげで成り立っている。センターの運営に関しても知恵を借りたい」と話す。
■実情発信10年 手応え
国富町の古びた一軒家。
高い木の柵で囲われた庭では、犬たちが元気に走り回っていた。
「いのちのはうす保護家」では、殺処分対象の犬や猫を引き取って世話をし、譲渡先を探す。
病気の老犬などを介護しながら看取(みと)る「ホスピス」もある。
山下由美代表(46)は「動物愛護について宮崎は遅れていると言われてきたが、だんだん意識が変わってきた」と話す。
山下さんが保護活動に関わるきっかけは、10年ほど前に見た動物愛護を訴える写真展。
ガス室で殺処分された犬の目が忘れられなかった。
「現実を知ることがつらかったんです。でも、逃げてはだめだと思いました」
県の中央保護管理所にも足を運んだ。
刑務所のような高いブロック塀には、動物が投げ込まれないように有刺鉄線が張り巡らされていた。
所内は薄暗く、コンクリ―トの冷たさと、じめじめと湿度を感じた。
檻(おり)の中の犬たちの目からは敵意やおびえが見てとれた。
引き取り手が見つからない場合は、殺処分される。
実情を伝えようと、06年からブログで収容された犬の紹介を始めた。
ある母犬の話が注目を集めた。
3匹の子犬を抱えた母犬は、人が近寄る度に威嚇。
だが日が経つにつれて自らの運命を悟り、職員に歩み寄るようになった。
のちに「奇跡の母子犬」として出版され、堺雅人さん主演で映画「ひまわりと子犬の7日間」として公開された。
自分でも保護活動をしようと、09年から現在の活動を始めた。
生目の杜運動公園近くの土地を借り、コンテナを置いて柵を作った。
水も電気もなく、ポリタンクの水を運んで世話した。
その後、国富町の一軒家を借り、24時間態勢での世話が可能になった。
今、犬30匹、猫27匹を保護する。
動物は急には死なない。
食べなくなり、歩かなくなり、だんだんと息が荒くなり、倒れていく。
そばに付き添い、名前を呼びかけながら最後を看取っている。
山下さんは「宮崎で制度や施設の改善を訴え続けてきた。宮崎が変わり始めたのは、やっぱり『ひまわり』の存在が大きかった」と話した。
(土舘聡一)
動物たちの未来のために http://plaza.rakuten.co.jp/xinunekox/
いのちのはうす保護家 http://hogoya.miyachan.cc/