殺処分から救え! 保護猫カフェ
「飼いたい人」と橋渡し 広がる輪
2016年5月16日(月) 中日新聞
愛知県江南市の保護猫カフェで猫と遊ぶ来店客
世は猫ブーム。
その陰で何万匹もの猫が殺処分されている現実を変えようと、全国で保護活動が広がっている。
野良だった猫を保護して、飼い主を探す保護猫カフェが各地でオープン。
猫を飼いたい人とつなげる運動が広がり、殺処分ゼロを達成した自治体もある。
「かわいい」「こっち来て」。
白、黒、茶色の猫たちが動くたび、女性客が目を細めた。
4月にオープンした保護猫カフェ「ネコリパブリック愛知江南店」(愛知県江南市)。
約百平方メートルの広い店内を、20匹が気ままに歩いたり、寝ころんだり。
いずれも飼い主がおらず、動物保護団体が保護した猫だ。
店内は猫スペースとカフェスペースに分けられ、紅茶やベーグルを味わいながら猫とじゃれ合ったり、ガラス越しに遠くから見守ったりすることができる。
主な運営費は、30分1100円(飲み物代込み)の入場料やカフェの売り上げ。
客は気に入った猫がいれば引き取れる。
東京や大阪などに4店舗あるネコリパブリックチェーンを始めた河瀬麻花(あさか)さん(41)は「猫と遊ぶも良し、店内でお茶するだけでも猫助けにつながります」と話す。
猫好きの河瀬さんが保護活動を始めたきっかけは2011年の東日本大震災。
東京電力福島第一原発近くに取り残された猫を助けるレスキュー隊を支援しようと、地元の岐阜県大垣市で経営していたベーグル通販店の商品に、寄付金を上乗せして販売した。
次第に動物保護団体の活動を手伝うようになり、成長した猫の引き取り手が少ない現状を知って、飼いたい人と猫をつなぐカフェを始めた。
同チェーンは、新たな野良猫を出さないため、引き取り希望者に対し▽離婚した場合は誰が引き取るか▽子どもが猫アレルギーだったらどうするか-など、一生飼い続けられるかを面談で確認してから譲渡する。これまでに飼い主が見つかった猫は約220匹になった。
猫カフェ協会(東京)によると、保護猫カフェは年々増えており、全国に約80店。
08年に保護猫カフェを全国で先駆けて始めたNPO法人「東京キャットガーディアン」は毎月、保護猫カフェ運営セミナーを開催しており、多いときには出店希望者が約50人集まるという。
もともと猫を引き取っていた人や団体が始めることが多いが、山本葉子代表は「開店の初期費用はそれほどかからず、参入はしやすいが、経営を続けるのは難しい」と指摘。
河瀬さんも「ボランティアも無償では続かない」と話す。
同チェーンの場合は、引き取り手から避妊去勢手術代やワクチンの費用として2万円を支払ってもらい、うち5千円を動物保護団体に寄付する。
「ビジネスと猫助けを並行させるモデルになれば」
河瀬さんの目標は、全国で14年度に8万匹だった猫の殺処分数を、二(にゃん)がそろう2022年2月22日までにゼロにすること。
「小さな命を大事にする輪を広げたい」と話す。
◆「ゼロ」 神奈川で達成
神奈川県は2014年度に、猫の殺処分がゼロになった(横浜、川崎など5市を除く)。
避妊去勢手術の奨励で、飼い主が分からない猫が減少。
室内飼いが増えたこともあり、14年度に県動物保護センターに保護された猫は、30年前の20分の1の595匹に減った。
その猫を、40以上のボランティア団体や個人が積極的に引き取ったほか、県などが譲渡会を開催。
センター担当者は「収容数と引き取り手とのバランスが取れた結果」と話す。
(寺西雅広)
河瀬麻花さん