犬猫「同行避難」にバルーンシェルター、テント村を提供 熊本地震
2016年5月6日(金) sippo(朝日新聞)
テントでペットと暮らす避難者
熊本で最初の地震があった4月14日の夜、私はピースウィンズ・ジャパンが育成した災害救助犬の夢之丞、ハルクやレスキューチームのメンバーとともに、広島県神石高原町を車で出発。翌朝到着した熊本県益城町で倒壊家屋の捜索をした。
終わって帰ろうとしたところで本震が起き、今度は大規模な土砂崩れに襲われた南阿蘇村へ。
山腹の崩落により孤立した現場で、犬も人も日没まで懸命に行方不明者の捜索を続けたが、土砂がまだ少しずつ動いていたうえに天候の悪化も予想され、それ以上の捜索は危険と判断せざるを得なかった。
続いて避難所を回った。
気になったのはペットとその飼い主のことだ。
避難所では予想していた通り、ペット連れの人たちが肩身の狭い思いをしていた。
避難者があふれ、体育館の通路にも段ボールや毛布が敷き詰められるなか、ミニチュアダックスを連れた女性は「この子が吠えたらどうしようかと心配で寝付けない」と話していた。
そんな心労を味わいたくないと、避難所に入るのをあきらめ、駐車場に止めた車でペットと過ごす人も大勢いた。
東日本大震災でペットと飼い主の離散が多かったことから、環境省は2013年、災害時のペットの「同行避難」を推奨するガイドラインを示し、自治体に態勢づくりを促した。
しかし、現場では「鳴き声がうるさい」「臭いがする」などの意見に配慮し、避難所内への同行を制限するケースも多いようだ。
認められたとしても、何かにつけてトラブルが起きやすい。
バルーンシェルター
そこで私たちは、ペット連れの人が周囲に気兼ねなく過ごせるように避難場所を提供することにした。
まず4月17日、空気でふくらませる大型テント「バルーンシェルター」を益城町総合体育館のわきの芝生広場に設置。
20日からは、よりプライバシーを保つため、家族で入れる畳10枚分ほどのテントに順次切り替えた。
ペットフードやシーツを配ったり、ボランティアの方と協力してトリミングなどのサービスを提供したりもした。
36張のテントは、40頭のペットと140人の家族で満杯に。
さらに入居希望が相次いだため、益城町に本社を置く再春館製薬所に協力を仰ぎ、同社の敷地内の芝生広場に新しいテントを張らせていただくことになった。
新テント村の入居は5月1日に始まり、仮設トイレ、シャワーブース、入居者が集えるユニットハウスなども設置した。
ペット連れの避難者向けに開設したテント村
入居した方々には喜んでいただいているが、問題はこれからの暑さだ。
日差し除けのタープ(布)を張るなどの対策をとってはいるものの、テントで夏を乗り切るのは厳しい。
まずは、これから建設される仮設住宅でペットと同居できるようにすることが肝心だ。
東日本大震災では、「ペット可」の仮設住宅でも、実際には犬や猫たちは別室のケージに入れられ、一緒に過ごせないところも多かったと聞く。
これではペットも飼い主も真の安らぎを得ることはできない。
「同行避難」の原則が守られるよう、様々な取り組みを続けつつ、国や自治体にも働きかけるつもりだ。
(ピースウインズ・ジャパン代表理事・大西健丞)
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犬猫「同行避難」にバルーンシェルター(熊本地震)
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