「一歩出たらネコの森」 西表島の交通事故対策がすごい
2016年1月11日(月) sippo(朝日新聞)
イリオモテヤマネコ=環境省
島内に約100匹生息
さて年末年始、どのように過ごしましたか?
私は冬休みを利用して年末に石垣島を中心に沖縄の離島を旅行しました。
今回は滞在中に訪れた西表島のお話をしたいと思います。
滞在中に聞いた話、西表野生生物保護センターのウェブサイトを参考にしています。
西表島は沖縄県では沖縄本島、石垣島に次いで3番目に大きな島で、そのほとんどが熱帯雨林に覆われています。
バスのドライバーさんによると、車が3台走っていれば渋滞といわれるほど交通量が少なく、信号が必要ない島だそうです。
そんな島には信号が二つあるのですが、これは「子どもが信号というものを覚えるため」だとか。
大自然に恵まれた西表島は、その名前の通り、イリオモテヤマネコが生息する島です。
イリオモテヤマネコに会えるかな・・・と期待していったのですが、残念ながら見ることができませんでした。
それもそのはず、夜行性の上、14年間観光バスのドライバーをやっている方でさえ、観光バスの運転中にイリオモテヤマネコを見たのはたったの4回。
島民は1年に1回くらい見ることができるそうです。
現在、島には約100頭のイリオモテヤマネコが生息していると言われています。
西表島の中では生態ピラミッドの頂点に立つイリオモテヤマネコには天敵はいないのですが、交通事故による死亡が深刻な問題になっています。
最近では、2015年12月14日に死亡事故が発生しました。
2015年では3件目の交通事故です。
このような事故を防ぎ、イリオモテヤマネコを守るためさまざまな工夫がされています。
例えば、西表野生生物保護センターのウェブサイトにはこんなことが書いてあります。
注意を呼びかける道路脇の看板
――集落を一歩出たら、そこはもうヤマネコの森です。どうか、生きものたちの「おうち」の中を横切っているのだ、と感じてあげて下さい。そして、生きものたちが飛び出してきても止まれるスピードで走ってあげて下さい――
タイヤ音で警告
西表島では幹線道路の制限速度は40キロです。
また、特にスピードが出そうな直線道路などには「ゼブラゾーン」と呼ばれるでこぼこが施された道路があります。
私たちが通常見かけるゼブラゾーンは「スピードの出しすぎに注意!」や「居眠り注意!」の意味で使われますが、西表島では違います。
このでこぼこの道路を車が走ると、「ドドドドド」と音がするのです。
遠くにいるイリオモテヤマネコがその音に気付き、道路から離れ、事故を予防しているそうです。
注意を喚起するものも多く見かけました。
2種類あり、一つは固定式の「飛び出し注意の道路標識」、もう一つは移動式の看板です。
目撃情報をもとに、「○月○日に目撃されました」と書かれた看板を置くことで交通事故が起きないように注意喚起しています。
目撃者の協力が必要で、みんなで守ろうという意識が伝わってきます。
また、道路を渡っているときに車にひかれないようにするため、イリオモテヤマネコが道路を通らなくてもいいように、アンダーパスという動物専用の道路が作られています。
実際に使っているのかアンダーパス内にカメラを置いたところ、イリオモテヤマネコが歩いている様子が映し出されたそうです。
しっかり通っているのですね。
その他、西表島の道路の側溝は浅いV字形になっていたり、片勾配になっていたりします。
小さな動物が落ちてもはいあがれるように、ひっくり返った動物が起き上がれるように、そして、小さな動物が道路に出ないように・・・。
動物のことを考えて作られた優しさを見ることができました。
アンダーパスの設置費用といった問題もありますが、生き物が主役で、それを支える思いやりの気持ちを感じる島でした。
(横浜商科大准教授・岩倉由貴)
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