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原発事故の被災地で猫の保護続ける

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原発事故の被災地で猫の保護続ける 「すべての命救いたい」

2016年1月19日(火) sippo(朝日新聞)


昨年11月に保護された「みーこ」を抱く代田さん

東京電力福島第一原発事故で立ち入りが制限されている、福島県の帰還困難区域をさまよう猫。
あれから5度目の冬を迎え、寒さはこれから厳しくなる。
「救える命はすべて救いたい」。
保護活動に力を入れる人たちがいる。

2015年11月、一般社団法人「動物救護隊 にゃんだーガード」(福島県三春町)のスタッフが、福島第一原発がある大熊町の帰還困難区域に入った。
第一原発の周辺は依然として放射線量が高く、内閣府や町の許可を得た住民の立ち入りに合わせ、猫の保護活動を続けている。
エサを入れた捕獲箱を設置し、翌日に見に行くと、8歳ぐらいの三毛猫が入っていた。
首輪がついており、風雨に打たれてひどく傷んでいた。
スタッフの代田岳美(しろたたけみ)さん(39)が両手を差し出すと、甘い声を出し抵抗なく抱かれた。
「原発事故前には人に飼われていたんだ」
にゃんだーガードは地主や家主の許可を得て、帰還困難区域に複数のカメラを設置している。
映像を調べたところ、「みー子」と名付けたこの猫が、起伏の激しい土地を夏ごろから約2キロ移動していたことがわかった。
2011年3月の震災の直後、飼い主が急な避難指示を受け、家族同様だったペットを自宅に残さざるを得なかった場合が多いようだ。
大熊町に隣接する富岡町で暮らしていた中年女性は、県内の郡山市に避難した際、飼っていた猫(ラグドール)を自宅に残した。
避難所暮らしになるため連れていくことを断念した。
一時帰宅するたびにエサをやっていたが、その後、愛猫は姿を消した。
にゃんだーガードのホームページ(HP)に似ている猫が載っていたため三春町のシェルター(保護施設)を訪れたが違った。
女性は「無理してでも一緒に避難すればよかった」と泣いたという。
にゃんだーガードを運営しているのは、自動車用品製造会社長の本多明さん(52)。
名古屋市で猫の保護活動をしていたが、11年4月に福島県に移住し、同県田村市で動物の保護活動を始め、12月に現在の場所に移り、宿泊所を買い取りシェルターに改装した。
本多さんを含めスタッフは6人。
住民からの依頼を受け、帰還困難区域を中心に猫を保護している。
これまでに約400匹を保護。
HPに写真を載せたり、毎月第4日曜日に里親会をシェルターで開いたりして元の飼い主や新しい飼い主をさがしている。
現在もこうした区域の猫を約60匹保護しており、多くは震災後に生まれたとみられる。
運営費は光熱費やエサ代、建物の維持費、人件費などで月200万円以上かかるという。
団体や個人の寄付のほか、現在は人件費の一部は福島県が「働く人づくり応援事業」の一環で負担しているが、経費すべてはまかなえず、本多さんが補填(ほてん)しているという。
にゃんだーガード以外にも、県内外の団体や個人が私費を投じて被災地で犬猫の保護活動を続けている。
原発事故からまもなく5年を迎えるが、今でも「うちの猫を捜してほしい」という依頼がある。
本多さんは「寒さに弱い猫にとってこれから厳しい季節を迎える。帰還困難区域などに残された命をすべて助けたい」と話す。

福島県のシェルターは閉鎖
福島県は原発事故1カ月後の11年4月から、原発から20キロ圏内の旧警戒区域で、犬猫の保護活動を始めた。
当初、一匹ずつ依頼主の自宅周辺を捜していたが、見つからなかったり、逃げて捕まえられなかったりしたため、捕獲箱を置いた。
保護した犬猫は、殺処分しないという方針のもと、福島県獣医師会などでつくる同県動物救護本部が設置したシェルターで預かっていた。
これまでの4年8カ月間で保護した犬は463匹、猫は545匹にのぼる。
元の飼い主に戻されたのは全体の3割、新しい飼い主に引き取られたのは6割程度、残りは保護中に死んだという。
県はペットから生まれた子は別として、住民が避難前に飼っていたペットが被災地に残されている可能性はほとんどないと判断。
同本部は2015年12月にシェルターを閉鎖した。
県は今後、住民から連絡があった時のみ、捕獲に向かう。
国の防災基本計画は11年12月に修正され、避難所にペット用スペースの確保などが盛り込まれた。
だが関東・東北地方を2015年9月に襲った記録的豪雨でも被災地に取り残されたペットは目立った。
にゃんだーガードのシェルター長を務める代田さんは「飼い主は非常時の対応を普段から考えておいてほしい」と呼び掛けている。


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