クジラ救出、200人見守る 阿南の中林海岸(徳島)
2016年1月21日 朝日新聞
クジラが乾かないようバケツで海水をかける人ら=阿南市中林町
阿南市中林町の中林海岸で20日、身動きできない状態で見つかったマッコウクジラ。
地元の消防団や漁協の人らが懸命に救出にあたり、漁船で沖への誘導に成功した。
見守った200人以上から拍手や歓声が起きた。
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中林海岸で体長10メートル弱のマッコウクジラが見つかったのは午前8時50分ごろ。
散歩していた人が市に知らせ、市や県、県警阿南署、地元の消防団が駆けつけた。
クジラは頭に傷があり、体の半分が海面から出た状態。
午前10時半ごろから、乾かないようバケツで海水をかけ始めた。
正午前には人力で沖に押す作戦をとった。
一度に10人が冷たい海水に入り「せーの」のかけ声で押したが、びくともしない。
市農林水産課の大谷高弘さん(26)は「寒さも忘れて力いっぱい押したけれど、全然動かなかった」。
手詰まり感が出ていた午後1時ごろ、1隻の漁船が現れた。
中林漁協の浜覚身(さとみ)組合長(65)。友人から連絡を受け、船を出した。
クジラの胴にロープを巻いて引っ張り、外れるたびにやり直すうち、うまい具合に尾びれに巻き付いた。
船を一気に前進させるとクジラが動いた。
「感無量だった」と浜さん。
ほかの2隻とともに沖へ誘導した。
海岸では大勢の人が見守り、クジラが沖に導かれると「やったー」と拍手を送った。
市内の自営業、上田宣明さん(28)は「痛々しかったが、早くふるさとに帰ってくれたら」。
現場に駆けつけた県立博物館の佐藤陽一・自然課長によると、マッコウクジラは太平洋の沖合に生息し、生きた状態で海岸に揚がるのは珍しい。
漂着した原因は分からないが病気で弱って流されたことも考えられるという。
クジラは100メートルほど沖を漂った後、周辺を回遊しており、「体がまだ弱く、沖に出られない可能性もある」と佐藤さん。
県漁業調整室によると、県内では、昨年6月に小松島市の港で死んだスナメリが発見された。
2013、14年には海陽町の定置網で死んだミンククジラが見つかった。
マッコウクジラは1997年、阿南市大潟町に死んだ状態で漂着したことがある。
(八角健太)
阿南のクジラ再び救出 ワカメ養殖場に引っかかる(徳島)
2016年1月22日 朝日新聞
ワカメの養殖場から救出され、沖合に誘導されるマッコウクジラ=島優徳さん提供
阿南市中林町の中林海岸に漂着し、救出されたマッコウクジラ。
21日朝、約500メートル沖にあるワカメ養殖場のロープに引っかかっているのが見つかり、再び救出された。
海岸で身動きがとれなくなり、漁船に引っ張られて沖に戻ったクジラは20日夕、畭町亀崎沖のワカメ養殖場付近を泳いでいる姿を漁協関係者らが確認した。
養殖場を所有する佐野信夫さん(72)らが21日午前8時ごろ、心配して漁船で向かったところ、クジラはワカメをぶら下げるロープが口の中に入った状態で、引っかかっていたという。
別の船に乗った漁師とロープ2本を包丁で切り落とし、クジラを救助した。
途中で合流した漁協の組合長はウェットスーツで海中に入り、引っ張るためのロープを尾びれに装着。
計3隻で約2キロ沖に導いた。
佐野さんは「まだ生きていて良かった。これが最後の別れになるといいですね」と話した。
市や県、消防、警察、漁協の関係者は、クジラが漂着した場合の水産庁の対処マニュアルに沿って、対策本部を設置している。
当面は、市職員が双眼鏡などで見守りを続ける方針だ。
(八角健太)