奇跡の子牛、救出から17年 人気再燃、絶えぬ「参拝」
2016年1月4日 朝日新聞
「元気くん」と飼育員の土居大介さん。柵に願い事を書いた絵馬が結びつけられている=岡山県勝央町岡
「小学生になったら、友だちがたくさんできますように」――。
牛が描かれた絵馬に、かわいい文字が書き込まれている。
「サッカーがじょうずに」「テスト100点」。
夢や目標の願い事も。
岡山県勝央町の農業公園「おかやまファーマーズマーケット・ノースヴィレッジ」。
その一角にある牛舎の柵に、来場者たちが絵馬を結び付けていく。
牛舎の主は、黒毛の雄牛「元気くん」。
かつて「奇跡の子牛」と呼ばれ、話題を呼んだ強運の牛だ。
1998年10月。
台風10号で吉井川がはんらんし、津山市内の牧場で飼われていた生後約6カ月の子牛が濁流にのみ込まれた。
数日後、約90キロ離れた瀬戸内海の黄島(瀬戸内市牛窓町)に漂着し、生き延びているところを発見され、無事に救助された。
奇跡の生還は被災者を勇気づけ、歌や絵本、紙芝居の題材にもなった。
牧場から農業公園に寄贈され、元気くんと名付けられた。
あれから17年余り。
牛舎の隣に「元気くん神社」が設けられ、九死に一生を得た強運にあやかろうと、「参拝」する人たちの姿が絶えない。
来場者は2012年からの3年間で年平均約49万7千人。
昨年5月には、テレビ朝日系列のバラエティー番組「ナニコレ珍百景」で紹介され、人気が再燃した。
子どもの歓声に、元気くんはやさしいまなざしを向ける。
飼育員の土居大介さん(39)は「自分に会いに来てくれたことを知っているようで、牛舎の表に出てくれます」。
人間なら70代のおじいさん。
体長約2メートル、体重約850キロのがっしりした体格で、目は見えにくくなっているものの、足取りはしっかりしている。
元気をもらったお礼にと、子どもたちから元気くんの姿を描いた絵が送られている。
(松尾俊二)
きせきの子牛「元気君」
http://digioka.libnet.pref.okayama.jp/mmhp/kyodo/kenmin/genkikun/genkikun-index.htm
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奇跡の子牛、救出から17年
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