野良猫を不妊・去勢し返す「TNR」、県が初実施(秋田)
2015年11月5日 朝日新聞
去勢手術を終え、地域住民に引き取られたオス猫=秋田市浜田
野良猫の数を抑制し、殺処分される猫を少しでも減らそうと県は今年度、野良猫の不妊・去勢手術に取り組み始めた。
10月下旬、秋田市の県動物管理センターで1匹目の手術があり、去勢されたオス猫が同23日、地域の住民に返却された。
この日、引き取りに来た秋田市の女性(68)を見つけると、カゴの中でオス猫が「ミャー」と甘く鳴いた。
センターの職員は「センターに来てから威嚇するばかりだったのに、こんな声を出すんだ」と驚いていた。
オス猫の右耳は手術の証しとして、V字にカットされ、首にはマイクロチップが埋め込まれた。
女性は15年ほど、野良猫に自費で不妊・去勢手術をする保護活動を続けており、多くの猫に手術を施すことで野良猫の数は少しずつ減ってきたという。
「行政が支援に乗り出してくれたのは、大きな一歩。多くの人に関心を持ってもらえる」と話した。
県生活衛生課によると、野良猫の抑制に効果的なのが、「TNR」と呼ばれる活動だ。
「TRAP(捕獲)」、「NEUTER(不妊・去勢手術)」、「RETURN(戻す)」の頭文字を取った略語で、野良猫に手術を施し、地域のルールで管理する「地域猫」として戻すことを指す。
地域でこれ以上、猫を増やさないようにしながら、命をまっとうさせることが目標だ。
県内の犬猫の殺処分数は徐々に減っているものの、昨年度、犬が150匹だったのに対し、猫は770匹を数えた。
県は猫の殺処分数を減らすため、従来は住民有志が自費で実施していたTNRなどの活動に、今年度初めて予算をつけた。
年度内に、さらに3匹の手術を計画する。
事業初年度の今年度は、以前からボランティア活動が活発だった秋田市内の2地区をモデル地区に選んだが、同課担当者は「来年度は事業規模を拡大し、県内8地区ほどで実施したい」と話している。
(曽田幹東)