飼育放棄されたトイプードル、警察犬に挑戦
2015年11月02日 読売新聞
「足跡追及の部」で見事な嗅覚を披露したアンズと鈴木さん(10月30日、水戸市中河内町で)
茨城県警の嘱託警察犬審査会が10月30日、水戸市の那珂川河川敷で行われた。
今年から3年間、全ての犬種の参加が認められ、トイプードルの「アンズ」(メス、2歳)など小型犬3頭が初めて参加した。
アンズは生後間もない頃に飼い主から飼育放棄され、殺処分されそうになったが、寸前のところで引き取られた後はシェパードと一緒に訓練を積み重ね、この日、見事な嗅覚を披露した。
来年の嘱託警察犬を選ぶ審査会には、現役の25頭と、嘱託犬を目指す24頭の計49頭が参加。
においを基に犯人の逃走経路を追跡し、遺留品を発見する「足跡追及の部」と、最初ににおいをかぎ、並べられた五つの布から同じにおいのものを選ぶ「臭気選別の部」で行われた。
これまではシェパードやドーベルマンなど大型7犬種が指定されていた。
アンズの飼い主の鈴木博房さん(65)は犬の保護活動に取り組んでいる。
2013年夏、県動物指導センター(笠間市)から、生後間もないトイプードルが預けられたと連絡があった。処分されないように引き取り手を探そうとしたが、人を怖がる様子がみられたので、しばらく預かることにした。
鈴木さんは30年以上嘱託警察犬を育てており、自宅には3頭のシェパードがいた。
「一緒に暮らせるだろうか」と不安もあったが、アンズはすぐに慣れ、シェパードの訓練にも楽しそうに加わってきた。
アンズを飼うことにし、「狭い場所の捜索など、この子だからこそ出来ることがある」と、本格的に訓練し、警察犬を目指すことを決めた。
シェパードは体重が40キロ・グラムほどあるのに対し、アンズは2・5キロ・グラム。
シェパードと遊んでいる最中にぶつかって飛ばされたり、屋外での訓練中に大きな鳥に襲われそうになったりと苦労も多かったという。
それでも審査会では、急勾配の坂を物ともせず駆け上がり、草をかき分けて、迷わず犯人の逃走経路を追跡。
途中、枯れ草が尻などに絡まり、困った様子も見せたが、課題の遺留品を全て発見した。
「一生懸命やった。シェパードにも劣らない能力だ」と鈴木さん。
「ダメな犬なんていません。愛情を持って育てれば、落ち着きのない犬だってしっかりする。そのことを今日、証明してくれました」と目を細めた。
◆盗品発見や逮捕に貢献
嘱託警察犬は、民間で飼育、訓練された犬で、県警の要請を受けて、犯罪捜査や行方不明者捜索で活躍している。
県警では直接飼育している直轄警察犬はおらず、審査会で優秀な結果を残した候補犬を嘱託警察犬に選んでいる。
県警鑑識課によると、昨年、県警の嘱託警察犬が出動したのは58回。
今年は9月末現在ですでに64回出動している。
今年6月には、窃盗事件の被害品を見つけ出し、容疑者の逮捕に協力したとして竜ヶ崎署から嘱託警察犬が表彰された。
谷津成久鑑識課長は「『においの捜査官』として事件捜査はもちろん、小型犬は広報イベントでの活躍もできると期待している」と話した。
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