動物保護施設でイベント 下半身不随で車いすの猫や犬も 背景には「虐待」の可能性
2015年10月31日 産経WEST
お気に入りの車いすにご機嫌のイヌのバード=大阪府能勢町の「ハッピーハウス」(岡本義彦撮影)
専用の車いすで歩くネコのみゅー=大阪府能勢町の「ハッピーハウス」(岡本義彦撮影)
さまざまな理由で行き場を失った犬猫約570匹が暮らす能勢町の動物保護施設「ハッピーハウス」が今月、犬猫たちとのふれあいイベントを開催した。
新たな飼い主との出会いを提供するのが狙いだが、会場には下半身不随のため車いすで歩く犬の姿も。この施設によると、近年、老齢のため脚が不自由になった犬や、交通事故や虐待などが原因で下半身不随になる猫が増えているという。
新たな飼い主を探して
施設を運営する公益財団法人「日本アニマルトラスト」(甲斐尚子代表)が今月18日に富田林市内で開いたイベント。
ミニチュアダックスフンドやパピヨンたちが尻尾を振ってじゃれる愛らしい姿に「かわいい!」「離れがたくなる」と、誰もが相好を崩した。
イベントには犬約20匹、猫約10匹が参加。
中には尻尾がなかったり、脚を引きずったり、失明した犬も。
この日、引き取り希望の面談を受けた和泉市の会社員、鈴木慶子さん(54)はマメシバを1年2カ月前に失った。
新たに犬を飼おうと会場へ足を運んだが、「こういう施設があることを知ったからには・・・」と話す。
虐待? 交通事故?
現在、同施設には要介護の犬が23匹、下半身不随の猫が6匹暮らしている。
犬は高齢で歩行困難となった場合がほとんどだが、猫は交通事故か虐待と思われるケースが多いという。
今年8月に保護された「希(きい)ちゃん」(推定4カ月)は、骨に自転車でひかれたか、棒状の物でたたかれたと推測できる痕跡があった。
昨年6月に排水溝で見つかった「みゅーちゃん」(同1歳)、同9月に背骨を骨折した状態で保護された「ペコちゃん」(同4歳)も下半身不随だ。
甲斐代表は「そういう猫はたくさんやってくるが、手の施しようないことが多い」と話す。
過去10年間に同施設で保護した下半身不随の猫の数(施設内動物病院含む)は、平成23年まではほぼゼロだったが、24年は10匹、25年は14匹と急増。
甲斐代表は「2匹ぐらいならまだ交通事故かと思えるが、3匹目ぐらいからおかしいと思うようになった」と、虐待の可能性を指摘する。
犬猫用車いすが光明
そんな猫たちに光を与えたのは専用車いすだ。
「リハビリにも役立つ」(スタッフ)といい、みゅーちゃんは車いすを使い始めてから、後ろ脚を触るとピクピクと動かすようになった。
ペット用車いすを手がける「芦屋バティーズ」(兵庫県芦屋市)によると、猫用車いすの問い合わせは、5年前は3カ月に1回程度だったが、現在は月2、3件あり、竹田佳子(けいこ)社長(55)は「生活の質が向上し筋肉も動かせるようになる可能性が広がる」と話している。
同施設のスタッフ、加賀爪啓子さん(39)は「保護された犬猫の数や施設に来る経緯を知ることでペットを飼う前にいろいろ考えてくれることにつながる」と話している。
(嶋田知加子)