それでも猫が好き 人気の一方で住まい探しは難航
2015年10月26日 朝日新聞
子猫の愛らしい様子を見られるように特注のショーケースを店内中央に配置したペットショップ=大阪府吹田市、滝沢美穂子撮影
猫との暮らしを始めたいと願う人が増え、長く犬が「主役」だったペットショップも様変わりしている。
だが、住まい探しなど思いがけないハードルもある。
西日本で約20店舗を展開する「ひごペットフレンドリー」(大阪府)が今月9日に同府吹田市に新装オープンした店舗は、ショーケース内に猫が上り下りできるキャットタワー3基を配置するなど、猫を前面に出すレイアウトにした。
アビシニアンやスコティッシュフォールドといった人気種に10万円を超す値札がつき、特注の円柱形のショーケースには人だかりができた。
川畑剛副社長(47)は「猫の売り上げは3年連続で20ポイント近く伸びている」と話す。
「ペットフード協会」の「全国犬猫飼育実態調査」によると、飼い犬との出会いの約半数はペットショップだが、猫は「保護した・もらった」人が大半で、店舗での購入は1割程度に過ぎない。
ブームを背景にペットショップ業界も猫の販売に力を入れ始めた格好だ。
しかし、猫と暮らせる物件は少ない。
賃貸仲介会社「エイブル&パートナーズ」(東京都)によると、大阪や東京で「ペット飼育可」を掲げる賃貸住宅物件は約10%だが、多くは「小型犬のみ可」を意味し、猫を飼える物件は2%程度に過ぎないという。部屋が傷むと考えられがちだからだ。
猫と暮らせる物件を集めた賃貸住宅サイト「ネコベヤ」を運営する「きりん不動産」(福岡市)の桐谷幸将(きりたにゆきまさ)代表(37)は、飼い主の工夫次第で爪の傷から内装を守れることや猫は比較的においが少ないことを大家や管理会社に訴え、物件数を3年で2.5倍に増やした。
桐谷さんは「猫にまつわる誤解も多い。飼育への理解を広げたい」と話す。
■殺処分は犬の3・5倍
猫人気の一方で、厳しい現実もある。
環境省によると、保健所に持ち込まれて殺処分される猫は、減少傾向ではあるものの全国で年間約10万匹。
「野良猫が子どもを産んだ」などの理由が多いが、犬の3.5倍に上る。
安易な殺処分を避けようと、各地の行政機関も野良猫の不妊去勢手術費用の助成など工夫をこらす。
大阪府は動物愛護法に基づく収容施設「府動物一時保護センター」(高槻市)で猫の無償譲渡をしている。2001年の開設以降、約800匹が引き取られたが、「まだまだ認知度が低い」と担当者は嘆く。
どの猫も人なつこく、なでてもらおうとしきりに体をすりつける。
世話役の谷川幸康さん(59)が根気強く接して人になれさせている。
だが、どの猫も名前はなく番号で呼ばれる。
「家庭に迎え入れられた時が名前をもらう時。出会いの場の選択肢として、もっと知られてほしい」と谷川さんは話す。
(机美鈴)