犬の寿命が10年延びたのはノーベル賞大村教授のおかげだった
フィラリア症予防というもうひとつの偉業
2015年10月7日 J-CASTニュース
大村教授のおかげで多くの犬も救われた
ノーベル医学生理学賞を受賞した大村智北里大特別栄誉教授(80)に愛犬家たちから感謝の声があがっている。
大村教授は1979年に寄生虫に効果のある「エバーメクチン」を発見したことが授賞理由となったわけだが、この「エバーメクチン」、現在は寄生虫駆除役「イベルメクチン」の名前で犬の死亡の原因である「フィラリア症」から犬たちを現在も救い続けているからだ。
寄生虫が心臓に住み着く病気
「いつもお世話になっているフィラリア予防薬の元。イベルメクチンを発見したのが日本の先生だとは恥ずかしながら知らなかった。先生いつも感謝しています」
「犬飼ってると、この人の業績のすごさがわかりやすいよね。うちのわんこもこの先生の研究のおかげを蒙っていたんだなぁと、感慨しきり」
「本当に頭の下がる教授だわ。ありがたや、ありがたや」
大村教授のノーベル賞受賞が発表され、その功績が報じられると愛犬家たちからこうした感謝の言葉がネット上に出ることになった。
大村教授は微生物が作り出す有用な化学物質を480種類以上発見し、そこから熱帯地方の感染症の特効薬や、家畜やペットの寄生虫治療薬などが作られた。
「アフリカを中心に2億人を失明から救った」とも言われ、受賞に世界中が沸き立ったと報道されたが、もう一つ感謝の言葉が溢れたのは愛犬家たちからだった。
寄生虫に効果のある「エバーメクチン」はアメリカの製薬会社大手のメルク社と共同研究し、構造を一部変更した「イベルメクチン」として世界で最も使われる動物薬の一つになった。
さまざまな家畜の感染症や犬のフィラリアの予防・治療に絶大な効果を示している。
フィラリア症は蚊の吸血を媒介とし体内に入り込んだ寄生虫のフィラリアによって引き起こされる症状全般を指すもので、フィラリアは犬の心臓と肺動脈を最終的な住みかとする。
感染すれば咳や息切れ、肝臓や腎臓の障害が起こり死んでしまう。
予防・治療薬が無い時代はダントツの病死の原因だった。
世界中の犬への恩恵は計り知れない
メルク社とフランスの製薬・農薬メーカーだったローヌ・プーラン社が設立した日本法人メリアル・ジャパン広報によれば、日本で「イベルメクチン」が発売され、獣医師が使うようになったのが1987年から。
当時は馬や牛、豚などの家畜用だったが、1993年4月から犬用のフィラリア予防・治療薬「カルドメックチュアブル」が発売された。
予防には100%の効果があるという。
同社の永田正社長は15年10月6日のNHKニュースで、「ペットの犬の寿命も以前は5年ほどで死ぬことが多かったが、薬によって10年ほど延びたと言われている。人の病気の治療だけでなく、動物用の薬としても世界中の人たちに与えた恩恵は 計り知れないと思います」などと話している。
犬の平均寿命は今、15年といわれている。エサの質の向上や室内飼いといった様々な要因もあるが、大村教授の「エバーメクチン」の発見が大きく寄与しているというのは間違いないようだ。