猫のおもてなし、温泉宿救う 廃業危機から復活 大分
2015年9月12日 朝日新聞
宿の前の路上でのんびりと過ごす猫たち=由布市湯布院町
猫たちが出迎えてくれるという大分県由布市の小さな温泉宿が、人気を集めている。
猫たちの「サービス」がネット上に広がり、宿は大手旅行サイトの全国ランキングの上位に食い込む。
一時は赤字で廃業を覚悟していた宿は、予約が相次ぐほどに息を吹き返した。
宿は「オーベルゼ・レ・ボー」。
午後3時のチェックインが近づくと、日中は近くの路上などで過ごす猫たちが宿に集まってきた。
出迎えてくれるような姿に女性が「かわいい!」と歓声を上げた。
計6匹いる猫たちの「接客術」は出迎えにとどまらない。
部屋に出入りして宿泊客と遊んだり、朝の散歩のお供をしたり。夕食時は食卓の周りをうろうろして、就寝時にはベッドに上がって「添い寝」する。
オーナーの中島久美子さん(67)によると、すべて訓練なし。
なぜ、こんなに猫たちは客をもてなすのか。
「宿泊客はほぼ全員が猫が好きな人たち。可愛がられているうちに、どんどん人懐っこくなってしまった」と話す。
猫好きにはたまらない「サービス」がフェイスブックなどで評判を呼んだ。
「楽天トラベル」が2月に発表した全国の旅館・ホテルの「看板猫ランキング」では全国1位に。
同サイトの「クチコミ」には、「着いたら、さっそく4匹がお出迎えでした。にゃーと鳴きながら寄ってきてくれて」「添い寝もしてくれて、幸せな時間を過ごせました」などの感想が並ぶ。
香港から夫婦できた胡兆偉さん(35)は、動画サイトのYoutubeで見つけて予約。
自身も2匹の猫を飼うが、「こんな宿があるなんて驚いた。旅先で猫と一緒に寝られて幸せ」とうれしそうに話した。
宿は2007年に開業。
中島さんが約100万円かけて自宅を改装し、ペンションを始めた。
当初から猫は飼っていたが客が入らず、赤字が続いたという。
予約が埋まらず宿代を割り引きしたところ、売り上げも下がる悪循環に。
廃業も覚悟した。
転機は猫嫌いの客からの苦情だった。
翌08年に居着いていた野良猫を引き取ったのをきっかけに、猫が好きな人しか泊まれないようホームページ(HP)で猫を前面に打ち出した。
その結果、リピーターになる宿泊客が続出し、予約が殺到するようになった。
中島さんは「猫たちも猫好きのお客に囲まれて幸せそう。この子たちは『招き猫』です」と笑った。
予約は宿の電話では受け付けていない。
楽天トラベルの予約用HP(http://travel.rakuten.co.jp/HOTEL/68658/68658.html )から。
(平塚学)