引退競走馬:「セラピー」転用、豊かな生を・・・名調教師尽力
2015年09月02日 毎日新聞
厩舎で競走馬と触れ合う角居さん=滋賀県栗東市御園のJRA栗東トレーニング・センターで2015年7月1日午前11時58分、田中将隆撮影
牝馬として64年ぶりに2007年の日本ダービーを制した「ウオッカ」などの名馬を育成した調教師、角居(すみい)勝彦さん(51)が、引退した競走馬を人間の心を癒やす「ホースセラピー」などの馬に転用するプロジェクトに取り組み始めた。
レースを引退した競走馬の多くは殺処分されているのが現状。
年内にも元競走馬を外部に供給したいと考えている。
「馬たちに新しい道を歩ませてやりたい」と意気込む。
日本中央競馬会(JRA)によると、日本で年間に生まれる競走馬は約7000頭だが、このうち勝利を収める馬は1割以下。
競走馬を引退した馬は乗馬用や繁殖用となるが、馬は維持するのにも多額の餌代がかかるため、数は多くない。
また、馬肉用としても高い値段はつかないという。
角居さんは01年に調教師として独立。
04年にG1レースを初制覇し、その後も年間最多勝利調教師となるなど輝かしい実績を残している。
一方で、自分や他の調教師が手塩にかけた馬が勝てずにどこかへ連れて行かれる姿に、以前から心を痛めていたという。
だが数年前、引退した馬でも、馬の手入れや乗馬などを通じて障害者らが社会復帰を図ったり、リハビリしたりする「ホースセラピー」などにも利用できることを知った。
馬主からも「処分するくらいなら転用してやってほしい」という声を聞き、馬の「第二の人生」として着目。障害者の乗馬の普及を進める団体の設立に協力したほか、幅広い人に馬と触れ合ってもらうイベント「サンクスホースデイズ」にも携わる。
13年12月には栗東トレーニング・センター(滋賀県栗東市)内に、転用プロジェクトなどを推進する一般財団法人「ホースコミュニティ」を発足させ、代表理事に就任した。
今年5月に取り組みについて説明する講習会を初めて市内で開いたところ、約60人が参加する好評ぶりだったという。
角居さんは「仕事をするにつれ、馬が処分されていくことを悲しむ感情が薄れていくのが怖かった。厩舎(きゅうしゃ)の垣根を越え、業界全体で競走馬の未来を考えていきたい」と話している。
↧
引退競走馬 「セラピー」転用
↧