犬の世話、若者の支えに 土浦のNPO、昨年(2013年)から活動 心通わせ、ともに成長/茨城県
2015/08/06 朝日新聞・朝日新聞デジタル|更新|
犬にエサをあげるキドックス代表の上山琴美さん=茨城県土浦市
引きこもりや不登校に悩む若者たちの自立を、保護された犬のトレーニングを通して支援するNPOが茨城県土浦市にある。
ドッグトレーナーなどが集まり、昨年から活動を始めた。
ここで犬たちと心を通わせ、新たな道を歩き出した若者も出始めた。
「ここは犬と人の学校です」
土浦市のNPO法人「キドックス」代表理事の上山琴美さん(28:掲載時の年齢)はそう語る。
会の名は「KID(子ども)」と「DOG(犬)」をあわせた造語だ。
動物愛護団体「CAPIN」(土浦市)から保護犬を受け入れ、自立を目指す若者が犬1匹を担当。
毎週火曜から金曜、日常の世話のほか、犬が里親のもとで幸せに暮らせるように人間の指示が分かるようにするトレーニングをする。
参加する若者たちのほとんどは心が繊細で、捨てられたり虐待されたりした犬の気持ちを理解してくれているという。
だからといって、考えなしに犬の世話をさせればいいわけではない。
「命を預かっているプログラム。どの犬との組み合わせがよいか、彼ら若者の課題は何かを、普段の様子や面談などから考える」と上山さん。
学生時代のことだ。
友人が非行に走り、上山さんは教育に関心を持ち始めた。
そのころ飼い犬が病死。
飼い方も悪かったと知り、犬のために何かやりたいと思った。
そんなとき、捨て犬の世話が中心の更生プログラムが米国の少年院で実践されていることを知った。
「人のため」と「犬のため」が結びついた。
上山さんは昨春、米国に渡って念願の更生プログラムの研修を受けた。
土浦市の知人の空き家を借りて活動を始めた。
これまでの参加者は、現在通っている4人の若者を含め約20人になった。
トレーニングだけでなく、里親探しやイベント企画などに取り組み、復学や就職などを目指している。
「毎日正解がなくて大変です。でも、犬と人が成長している姿を見たときの喜びが大きい」。
参加者とともに上山さんも充実の日々を送っている。
「周りに関心向ける契機に」 参加者
訓練生の男性にブラッシングしてもらう犬=茨城県土浦市のキドックス
「自分以外の周りに関心を向けるきっかけになった」と、昨年9月~今年1月、キドックスの活動に参加した県南部の男性(27)。
働く意味を見いだせず、21歳で仕事を辞めた。
その後、6年間を自宅で過ごした。
不安の方が大きかったが、「何か変わるきっかけが欲しい」と参加を決意した。
男性はオス犬を担当。
最初は犬に集中できなかった。
気持ちが見透かされていた。
トレーニングや散歩で指示を出しても従ってくれなかった。
逆に犬のことを真剣に考えると、犬の動きもよくなった。
担当した犬には里親がまだ見つかっていない。
男性は時々キドックスに顔を出す。
犬は目が合うと、すぐに駆け寄ってくる。
「信頼してくれているんだと分かると、本当にうれしいですね」
男性は1月末にキドックスを「卒業」。
3~4月、まず工場の短期アルバイトをした。
毎週月~金曜、朝から夕方まで、契約期間の仕事をやり遂げた。
「人と関わって、体を動かして、自分らしい生活を実感したい」。
男性は新たなステージに向かうことを決め、職探しに精を出している。
(福地慶太郎)
(朝日新聞2014年8月3日掲載)
※「キドックス」代表理事の上山琴美(かみやまことみ)さんはすごい方ですね。
まだ30歳になっていない若い女性がこのような活動をやっているのが非常にすばらしいことです。
日本の活動団体ではあまり見られない欧米先進国のやり方。
キドックスについては、今後詳細をブログに掲載してまいります。
(Fujita)
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