津波で消えた愛犬・家族の絆、絵本に
東金の画家・うささん、実話もとに創作
2015/05/20 朝日新聞・朝日新聞デジタル更新
東日本大震災で犠牲になったペットの絵画展を全国各地で開いている東金市の画家で絵本作家うさ(本名・田中麻紀)さん(46)が、津波にさらわれた愛犬と家族の絆の物語を絵本にした。「ぼくは海になった」(くもん出版)。
実話をもとに「人も動物も大切な命」と訴えている。
うささんは、大震災から半年後に宮城県沿岸部を訪れ、愛するペットを失い悲しみに暮れる多くの被災者に出会った。
「飼い主と動物の心を絵でつなごう」。
被災者49人から応募があり、作家仲間に呼びかけペットが元気な時の姿を絵にしてもらった。
2012年春「震災で消えた小さな命展」と題し、被災地を含め10カ所で巡回展を開いた。
同年8月から13年にかけた第2弾には113人の飼い主が応募。
会場も柏市を皮切りに東京や名古屋など23カ所に広がった。
昨秋からは、飼い主に贈った絵の複製約60点を飾る巡回展を全国で開催している。
今回の絵本は第2弾に応募があった、岩手県宮古市の仮設住宅に住む女性の話をもとに創作。
アクリルで36点を描いた。
主人公はミニチュアダックスフントの「チョビ」。
大震災の津波で飼い主の「たえちゃん」の目の前でたえちゃんの「お母さん」とともに流される。
母親とチョビを捜すたえちゃんは、見えない存在の愛犬に導かれるように母親との悲しい対面を果たす――。
絵本にはこんな場面がある。
「お母さんといっしょに、犬もいませんでしたか?」。
遺体安置所でたえちゃんから聞かれた警察官がこう答える。
「どうぶつは、海で見つけてもそのままで・・・。つれてくることはしないんです」
うささんは「命に順番のない世の中になることを願って絵本を描いた。命についてもう一度考える機会になれば」と話す。
(佐藤清孝)
40ページ。1300円(税別)。県内の主な書店にある。問い合わせはくもん出版(0120・494・615)。