<被災犬>3時間の帰郷、飼い主と再会 岐阜から飯舘へ
2013年 3月11日(月) 毎日新聞
約1年半ぶりに再会したライを囲む小泉さん家族
=福島県飯舘村臼石で2013年3月10日午前11時0分、加藤沙波撮影
「ライ、おかえり!!」。福島第1原発事故で飼い主と別れ、岐阜県富加町の施設で暮らす犬20匹が10日、古里の福島県飯舘村に戻ってきた。
現在は福島市内に住む小泉裕隆さん(49)一家もオスの柴(しば)犬「ライ」(10歳)と久々の再会。
つかの間の“家族だんらん”を楽しんだ。
被災犬を預かる岐阜市のNPO法人「日本動物介護センター」(山口常夫理事長)が、震災2年に合わせ日帰りの里帰りを実現させた。
10日午前9時半ごろ、飯舘村役場にキャンピングカーで到着した犬たちは飼い主のもとへ。
ライもケージが開くと力強く飛び出し、小泉さんと次女貴子さん(20)、三女薫さん(18)になでられると、しっぽを大きく振った。
「めんげえ(可愛い)から置いてけ」と父正二さん(72)が、知人の車に乗った子犬に一目ぼれして家に来たライだった。
しかし原発事故で小泉さん方は計画的避難区域に指定され、一家は11年6月上旬に福島市内の借り上げ住宅に。
犬は飼えず、ライは岐阜へ。
「すべて分かっていたのか、暴れることなくケージに入ってこっちを見たときには泣けたよ」と裕隆さんは言う。
再会後、一家が営んでいた自動車解体工場に一緒に一時帰宅したライは、慣れ親しんだ場所で周囲のにおいをかいだり、エサをもらったり。
「よく枝でブラッシングしたよね」「散歩の途中で逃げちゃっても家に帰ってきたな」。
家族は思い出話で盛り上がった。
3時間の再会が終わり、おとなしく車に乗せられるライを姉妹は少し離れた場所で見送った。
「元気でね。また会えるから」
【加藤沙波】