おはなしめぐり:「犬をかうまえに」 赤羽じゅんこさん
2015年03月27日 毎日新聞
◇命を預かる覚悟、考えて 赤羽じゅんこさん(56)
赤羽じゅんこさん
犬好きなのに家庭の事情で飼うことができない少年を主人公に、犬と少年の成長を描いた、「犬をかうまえに」(赤羽じゅんこ・作、つがねちかこ・絵、文研出版)がこのほど出版された。
作者の赤羽さんは、「ペットを飼うのは、命を預かること。ペットと良きパートナーとなれるよう、飼い主になる前に準備をしてほしい」と話す。
自宅近くに、ペットショップができました。
かわいい子犬がいるので、子どもたちがたくさん集まって見ています。
「飼いたい」という子に、お母さんが「うちはだめ」と諭す姿をよく見ました。
犬好きなのに、我慢している子はたくさんいます。
私が知り合った男の子も、そんな一人。
その子は犬が集まる公園で犬と遊んだり、散歩をさせてもらったりしていました。
飼えなくても触れ合うことはできると、教えてくれました。
これらのことが元になって生まれた作品です。
主人公の男の子は、足をけがしたおばあさんの代わりに、犬の散歩をします。
小型のシーズー犬で愛らしいのですが、なかなか思い通りにはいきません。
手をかまれた揚げ句、犬はいなくなってしまいます。
私も、犬を飼っていました。
中学生になるころ死んでしまいましたが、喪失感は相当なものでした。
作品を書く前に、犬の飼い方やしつけの仕方をペットショップの店員に聞いたり、本で調べたりしました。
私が飼っていたころはすごく大ざっぱでしたが、今は細々としたことまで情報があふれています。
それも、「人間に都合がいい犬にする」という視点ばかり。
マニュアルに頼り切って、命を預かっている自覚のない飼い主も多いようです。
子どもたちが命と触れ合うことは、貴重な経験になります。
最期をみとる覚悟で飼い始めてほしいし、高齢になった飼い主とペットの問題もあります。
でも、今でなくても、いつか願いがかなうことはあります。
その時に向け準備をしていると、チャンスがめぐってきたときに一歩を踏み出せます。
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■人物略歴
◇あかはね・じゅんこ
1958年東京生まれ。子育て中に作品を書き始め、38歳でデビュー。「がむしゃら落語」(福音館書店)で、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞。